Tsuji Hayato

辻 勇人 教授

所属
理学部
理学科
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専門分野

有機化学

キーワード

Profile

出身地/神戸市
趣味/筋トレ、ゴルフ、ギター、ベース
好きな音楽/ジャズ、ロック
好きなTV番組/ゆるい番組
好きな食べ物/餃子
好きな国/最近はスペイン

自分で問題を探し、それを解いていく。研究とはそういうことで、だからこそ面白い。

有機反応の基本原理は「エネルギー的に安定」な方向を探すこと

本学ではボルハルト・ショアーの『現代有機化学』という上下巻の分厚いテキストを使い、1年生後期から3年生前期までの4学期にわたって有機化学を学びます。私が担当しているのは、そのなかの「有機化学II」で、扱う内容は炭素同士が2本以上の手で結合した「不飽和有機化合物」の反応です。授業では、進度を把握できるよう、習う項目ごとの難易度を★の数で表した「チェックシート」を毎回作成して配っています。
受験勉強のイメージでは,有機化学は暗記科目のように思われがちですが、一定のルールをもとに「考える」分野です。分子は、反応によって自然な状態=エネルギーが低い状態になろうとします。一見すると物質ごとに違うように見える反応も、実は基本原理は同じということが多く見られます。たとえばアルケンは付加反応が、ベンゼンは置換反応が起こりやすい。結果だけ見ると違う反応が起こっているように思えますが、段階に分けて見ると、実は第一段階では同じ反応が起こっています。そして安定性の違いによって二段階目が異なる結果、そのような違いになるのです。このように全ての化学反応の基本原理は、分子が「どうなればエネルギー的に安定化するのか」ということです。授業では、受講生がそのことに気づき、分子が「どうなりたい」のかを考えてもらえるように気を配っています。結果だけを頭に入れようとするから「化学は暗記だ」と勘違いされてしまうのですが、基本原理にのっとって「これはどうなのか?」と考えていけば、覚えることは最低限で足ります。また、最新の反応でも、各段階では既に知っている原理に基づいた反応が起こっていることがわかります。

「新しい道具」があれば、まだ世の中にない「新しい物」が作れる

私自身の研究テーマは「新しい有機反応の開発」と「エネルギー変換材料の開発」で、研究室では有機合成を起点とした新物質開発に取り組んでいます。写真で紹介している虹色に光る蛍光試料は、COPVという独自開発の基本骨格にいろいろな置換基を結合させて、色の違いを出したものです。紫や青の発光が出る基本骨格から出発して、緑、黄色から橙、赤色まで、学生たちと協力して虹の全色を制覇しました。発光色数を増やすことで、照明やフルカラーのディスプレイなどを綺麗に見せるために役立ちます。2016年から17年の年末年始にかけて、多くのメーカーから大型有機ELテレビの発売が発表されたように、発光光と電気を流す機能をもつ有機物が今後ますます重要になってきます。
このような「新しい物質を作る」ためには、「新しい反応を作る」ことも重要です。言いかえれば「物づくりの道具から作る」ということですね。もちろん既に世の中にある反応を利用して新しい物質ができればそれに越したことはないのですが、それだけでは限界があります。「新しい道具」があれば、世の中にない「新しい物」を作ることができるわけです。
反対に、実験をしていて偶然、新しい反応が見つかることもあります。そのときは、その「新しい道具」を使って、新しい物を作ってみよう、という方向で研究を進めていきます。どちらにしても頭で考えているだけではなく、手を動かし、その結果をきっちり解析していくことが大切です。

時間=可能性(ポテンシャル)、後悔しない学生生活を

研究というのは、いわば「自分で問題を探して、自分で解いていく」ことだといえるでしょう。その問題がどれだけサイエンスとして大切なのか、世の中の人たちが必要としているのか。それを見極めて、自分で解決していく。そのためには専門分野の最先端と、専門外の分野を知ることが必要です。つまり、深く・広く知ることが重要です。正直なところ、大学のカリキュラムだけですと、最先端の研究とはかなりの開きが出てしまいます。そこで私の研究室では4年生から最先端の分野の研究に触れられるよう、最新の論文のチェックを課すとともに、国内外のさまざまな分野の研究者たちとの共同研究にも積極的に参加しています。早いうちに最先端に触れることで、自分が今やっていることや、他の研究者たちがやっていることがどれだけ凄くて面白いことなのかがわかります。ちょうど、江戸時代の丁稚さんが奉公を始めてすぐに、良いものを見極める教育を受けるように。さらに最先端の研究内容と自分の知識とのギャップを埋めていくことにより、現状で何がわかっていて何がわかっていないのかを知ることができます。すると、次に自分は何をしていけばいいのか、という課題が自ずと見えてくるのです。
とはいえ研究室にこもって実験だけしていたり、勉強だけしていてはダメです。たとえば、近所の研究室の学生や、学会に参加して他の研究者たちと意見交換や情報交換をすることから新しいものが生まれたりします。英語で化学のことを「Chemistry(ケミストリー)」といいますが、辞書を引くともうひとつ「人と人との関係」という意味もあります。両方の「Chemistry」を大事にして、有意義な大学生活を送ってほしいと思います。
学部4年生の学生がよく「1~3年の時にもっと勉強して、この単位を落とさなければよかった」などと言っているのを聞くことがあります。過ぎた時間は戻らないので、いまのうちに何をすべきかをよく考えて、行動に移してほしい。もちろん、早いうちに気づいた人ほど伸びしろは大きいですが、3、4年生でもまだ間に合います。大学にいる間に学びましょう。成長を後押しする環境と先生たちが神大にはそろっています。

有機化学(合成化学、機能性物質科学)研究室

新物質で世界を変える

私たちの研究室では、有機合成を起点とした新物質開発を主なテーマにしています。巧みな分子設計によって、炭素・酸素・窒素などの「ありふれた」元素のポテンシャルを引き出し、優れた光・電子機能を示す新物質を開発しています。基礎物性評価から応用まで物質科学を深く広く追究するために、国内外のさまざまな分野の研究者との共同研究も推進し、新しい物質が示す面白い性質を次々に発見しています。

Photos

  • 実験室に飾ってある、学生たちと協力して作った蛍光試料。ひとつの基本骨格で、ここまでたくさんの色が出たのは珍しい

  • 自身が開発して製品化された有機EL用材料「CZBDF」とその分子模型、左はそれを使用した製品。「CZBDF」は、蛍光試料などを効率よく光らせるために「プラスとマイナス両方の電荷を良く流す」という特徴を持っている

SDGsの取組み

地域課題

SDGs・地域課題について

光および電子機能性材料を用いた環境・生体センサーの開発や、熱電変換材料の開発、
新規機能性物質の創製と合成プロセスの開発研究、天然資源を用いた有機半導体材料の開発を行っています。

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