Ohta Yasutaka
太田 安隆 特任教授
Profile
出身地/東京都
尊敬する人/トーマス・ストッセル先生(米国の恩師)
愛読書/マイケル・クライトンの作品
趣味/水泳
休日の過ごし方/散歩、料理
好きな音楽/フィリップ・グラスの作品
好きな映画/『ブレードランナー 2049』
好きな食べ物/コーヒー
細胞が「がん化」する仕組みを分子生物学や遺伝子工学の手法で解明する!
「細胞骨格」や「シグナル分子」が細胞運動に与える影響を調べる
細胞の運動は、動物の発生や免疫反応などの生物の基本的な機能に関わっています。細胞運動は、がん細胞の浸潤・転移などの病気にも深く関与しています。私たちは培養細胞を用いてこの細胞運動について研究をしています。具体例としては、分子生物学や遺伝子工学の手法を用いて、がん細胞の浸潤・転移の仕組みを調べています。実験では、培養した乳がん細胞が運動する様子を顕微鏡ステージの上で撮影し、画像解析ソフトで解析します。細胞運動にはさまざまな分子が関わっていますが、なかでも「細胞骨格」や「シグナル分子」が細胞運動を調節している仕組みを明らかにすることを目指しています。
授業としては、理学部で「基礎生物化学」、「細胞生物学B」などを担当しています。「基礎生物化学」では、細胞がどのような物質からできているのか、体内でどういう働きをしているのかといった生物学、生化学の基本を教えます。「細胞生物学B」では、生命の基本単位である細胞に焦点を当て、細胞がどのように組織という協同的な集団を構成しているかを分子レベルで説明していきます。また、多細胞生物におけるシグナル伝達機構と細胞応答について理解し、生物学の基礎となる細胞生物学の知識と研究技法を教えます。授業では、大学向けに開発されたラーニング・マネジメント・システムとして知られるWebClassを積極的に利用しています。学生がどれだけ講義内容を理解したかについても、そのテスト機能を用いた小テストで確認しています。
アメリカ・ハーバード大学での研究生活で得たもの
生物学の授業を通して学生の皆さんに学んでほしいのは、生き物のもつ「多様性」と「一様性」を理解することです。地球上には、さまざまな動物や植物が生きており、非常に多様性に富んでいます。一方、すべての生き物は「細胞」でできており、「細胞」を作っている分子は、化学的に非常に似ています。生物学の学習をきっかけに、人間の持つ多様性と共通性を考察することもできると思います。
生物学を分子レベルで究めていくと、化学や物理学の研究テーマとつながってきます。例えば、細胞の機能分子であるタンパク質は、アミノ酸が多数つながってできた高分子ですが、高分子化学や構造化学、あるいは、物性物理学の手法を使ってタンパク質の働きを理解することができます。このあたりも知的好奇心を刺激されるポイントだと思います。
また、学生の皆さんに在学中に経験してほしいのは、できるだけ海外に出て、外側から日本を見ることです。外から日本を見ることで、自分が育った文化の背景や現状を客観的に捉えることができます。学生時代に旅行をしたり、幅広い分野の本を読んだりすることで、自分の世界をできるだけ広げてほしいと思います。私自身も、1990年代から10年以上アメリカのハーバード大学で研究に従事した経験があります。そこで、実にいろいろなことを学びました。
もうひとつ、私が長い研究生活を通して学んだのは、想定外の結果が新しい発見につながるということです。研究とは、仮説を立て、実験をして、その仮説を検証するのが基本です。しかし、実験に想定外の結果が出るのはつきもので、それが新しい発見につながることがあります。自分の期待を裏切る実験結果が出ても、それを楽しめるようなメンタリティを持つことが大切なのです。
若いうちに狭い視野のまま人生を決めてはいけません。予想可能なことばかりやっていても、人生は広がっていきません。こんなはずじゃなかったという場所にこそ、面白いことはあります。ぜひ学生時代にいろいろなチャレンジをして、予想外の経験をすることで自分の可能性を広げてください。
細胞機能制御学研究室
動物細胞の運動のしくみを分子レベルで解明する
培養細胞を用いて細胞運動の研究をしています。培養細胞は、シャーレの中で形を変え活発に運動します。この細胞を顕微鏡ステージの上で撮影し、画像解析ソフトを使ってムービーを解析します。さまざまな分子が細胞運動に関わっていますが、「細胞骨格」や「シグナル分子」が細胞運動を調節している仕組みを明らかにするために、私たちは分子生物学や遺伝子工学の手法を用いて研究しています。細胞運動の研究はさまざまな応用が可能で、一例として私たちはヒトがん細胞の浸潤・転移のメカニズムを研究しています。がん細胞は悪性化すると運動が亢進して、体中に転移します。このがん細胞の悪性化のメカニズムをヒトの悪性腫瘍細胞を用いて研究しています。
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地域課題
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