Hirotsu Masakazu

廣津 昌和 教授

所属
理学部
理学科
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専門分野

無機化学、錯体化学、有機金属化学

キーワード

Profile

出身地/山口県
血液型/O型
家族構成/妻と息子2人
子供の頃の夢/作家
尊敬する人/父と母
愛読書/科学史を描いた本
趣味/読書
休日の過ごし方/決めないことにしている
好きな食べ物/おはぎ

無機化学は周期表という地図を片手に持った宝探しのようなものです。

探検好きな人にはもってこいの学問が無機化学

私の専門は無機化学ですが、その定義について問われると少し戸惑います。「すべての元素を扱う化学」といってもいいのでしょうが、それではあまりにも漠然としています。扱う元素が多いために道に迷いがちな無機化学ですが、周期表を眺めることが多い学問といえば少しは分かりやすいのかもしれません。周期表という地図を片手に、新しい化合物をみつけるための宝探しをするイメージです。
宝のありかを突き止めるには周期表を使いこなすためのコツ(法則)を学ぶ必要があります。また、宝物を掘り出すにはその場所(元素)をよく調べて、適した道具を使わないといけません。たとえば2つの原子の結びつきについて学ぶために物理化学が必要だったり、個々の元素の働きについて学ぶために有機化学に出くわしたり。探検が好きな人にはもってこいの学問だと思います。
私が担当する「無機化学I」では、まずはじめに物質を構成する基本粒子である原子について学び、次に原子同士を結びつける化学結合について学びます。物理化学の入り口となる基礎的な内容ですが、高校では学んでこなかったことがたくさん出てくるため、このあたりで「無理かも」と思う人がいるかもしれません。けれども、宝の地図(周期表)を使いこなすためには避けては通れない道です。そのような難所は演習を交えながら丁寧に進めていきます。どんな分野の学問もそうですが、知識の少ないうちは全体が見えないので、基本的なことを理解するのがとても大変です。基礎知識が積み上がっていくことで、ようやく最初に苦労したところがきちんと見えるようになってくるのです。
全体的に広く知るということと、一点を深く知るということの両方を勉強していき、講義を受け終えるころには周期表の眺めが良くなり、宝物の発見に一歩近づいたと感じてもらいたいと思っています。

研究対象は地球上に比較的豊富にある元素

私が学生時代に無機化学の研究室に進んだのは、父が鉄鋼関係の会社に勤めていたので、知らず知らずのうちに影響されていたのかもしれません。子供のころ、父に会社で配布された周期表をもらったことを記憶しています。
無機化学の研究者としては、すべての元素に等しく愛情を注ぎたいところですが、私の研究では遷移金属元素が主役になります。さらに数が多い遷移金属元素の中でも第一遷移金属と呼ばれる地球上に比較的に豊富にある元素を少しだけひいきにしています。よく扱うのは鉄やマンガンですが、これまでにない反応性や光応答性を発現させることで、それらを上手に利用する方法を開拓しています。第一遷移金属が主役とはいうものの、その機能を引き出すには炭素、窒素、酸素、リン、硫黄などの典型元素の力を借りなければなりません。まさに周期表を片手に宝探しの旅に出ることになるのです。
最近では、近赤外光を当てるとそれに反応して一酸化炭素を放出する鉄化合物を見いだしました。現在、医用分野への応用に向けた共同研究が進められています。この鉄化合物の基本骨格は狙って作ったものではありませんでしたが、そのルーツといえる研究はスタートして10年以上が過ぎています。まさに長旅ですね。時間はかかっても、みんなに欲しいと言ってもらえるような宝物を見つけたいものです。

理学部の学生には科学的文化を育める人になってほしい

学生生活では、授業以外にもいろいろなことにチャレンジしてもらいたいと思います。自ら考えて取り組んだ経験は、社会人になってから遭遇する問題を解決するためのスキルになりますし、何よりもそこでの出会いは、その後の人生を豊かにしてくれます。化学は実践的な学問ですから、卒業研究もそのようなチャレンジの一つかもしれません。さまざまな困難にぶつかったとしても、それを乗り越えるための方法を一緒に探り、ゴールに向かって進みましょう。
また、理学部の学生には、科学の視点から物事を考えられるようになってほしいと思っています。私たち人間は科学技術の恩恵を受けて生活しており、もはやそこから離れることはできません。その一方、資源、エネルギー、環境などの面で、科学技術を利用することによって起こってくる多くの問題に直面しています。例えば現在、超電導を使ったリニアモーターカーの研究が進んでいますが、超電導を作り出すためには冷却材として液体ヘリウムが必要です。しかしヘリウムは地球上にそれほどたくさん存在しておらず供給不足が懸念されています。過去には、ヘリウムの供給量が減ってしまったため遊園地などでバルーンが飛ばせなくなったこともありました。その後、再びヘリウムが採れ始めたので、そんな出来事も忘れられてしまいましたが、この先も同じようなことが起きないとは限りません。こうした問題に関して、新たな技術開発が進められると同時に、科学の視点で物を見られる人がきちんと意見を述べていくことが大切です。
そして社会が科学技術とともに発展していくためには、市民の科学に対する理解も欠かせません。したがって科学の面白さをきちんと伝えることも、ますます大切になっていくでしょう。理学部の卒業生一人ひとりがそのような科学的文化を育む核となっていくことを願っています。

無機化学(結晶構造、レドックス機能、金属錯体)研究室

遷移金属を利用して外部刺激に応答する機能性分子を開発

地球上の生命は、長い年月をかけて金属元素をうまく利用する仕組みを発達させてきました。私たちも合成化学を駆使して金属元素を利用しますが、地球上で圧倒的な存在感を示す「鉄」ですら、その能力を十分に引き出せていません。そこで、地殻に豊かに存在する第一遷移金属元素を最大限に利用するという指針のもと、触媒・スイッチング・電子伝達といった機能を担う金属錯体を探索しています。現在研究している可視・近赤外光に応答して一酸化炭素を放出する鉄錯体は、将来的に医用分子やセンサーとしての利用が期待できます。研究室では、機能性金属錯体の設計、合成、評価を通じて幅広く化学を学びます。様々な新現象に出会い、その仕組みを解き明かす喜びを分かち合いましょう。

Photos

  • 学生時代に恩師に勧められて購入した無機化学の教科書。訳者の一人とは不思議とさまざまな場所で遭遇することとなりました。原著は後から購入したものです

  • メリーランド大学に留学した時に購入したマグカップ。大きいので、ついコーヒーを飲みすぎてしまいます

  • 鉄錯体に可視光を照射すると一酸化炭素を放出

SDGsの取組み

地域課題

SDGs・地域課題について

化学教育を通じて酵素機能モデルの構築地殻に豊富な金属元素を積極的に利用した機能性物質の開発を行っています。

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