Hoshino Yasushi

星野 靖 准教授

所属
理学部
理学科
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専門分野

量子ビーム科学、半導体物性、表面・界面の科学、宇宙物理実験

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Profile

子供の頃の夢/科学に関わる何かの仕事
尊敬する人/西堀栄三郎
愛読書/決まった本はないが、広く浅くたくさん読む
趣味/美術館に行く、本を読む、神社を巡る
休日の過ごし方/同上+研究をする
好きな音楽/JPOP、クラシックピアノ曲
好きなTV番組/あまり見ない

国内唯一の加速器を用いた「量子ビーム」で ダイヤモンドを半導体素材として実用化する!

量子ビームによって半導体材料の機能性を高める

スマートフォンやパソコンの処理速度が遅く、イライラした経験はないでしょうか? そんなイライラを解消する鍵が「量子ビーム」にあるかもしれません。量子ビームとは、加速器という装置を使い、粒子を光の速さに近いスピードにまで加速して飛ばした状態のことです。量子ビームをさまざまな物質に照射すると、ビームと分子との相互作用によって物質の性質が変化することがあります。この作用を利用し、電子デバイスなどに用いられている半導体材料の機能性を高めることが、私の主な研究テーマのひとつです。現在、半導体材料として用いられているのはケイ素であることがほとんどです。純粋なケイ素は本来ほとんど電気を通さない物質ですが、量子ビームを用いて電気伝導を担う原子を打ち込むことで電気が流れるようになり、半導体としての機能が生じます。

しかし、ケイ素よりも効率的に電気を流す性能を秘めた物質が存在します。それはみなさんもよく知るダイヤモンドです。ダイヤモンドは性能の高い半導体材料になりうる物質として長年期待されていましたが、実用化に向けた研究はなかなか進展していませんでした。しかし、ここ数年で、ダイヤモンドに近い性質を持った炭化ケイ素が新幹線の半導体素材として実用化されるなど、急速に研究が進められています。ダイヤモンドが半導体素材として実用化できるレベルに達すれば、処理速度が向上するとともに、エネルギー消費量を現在の半分以上も削減できるといわれています。現在は、ダイヤモンドの性質を狙い通りに変化させる量子ビーム照射の条件を模索している段階ですが、将来的には非常に夢のある研究だと考えています。

神奈川大学には、液体窒素温度(-196℃)から1000℃という幅広い温度下で量子ビームを照射できる国内唯一の加速器があり、半導体材料の実験のみならず、環境分野や宇宙分野などの研究においても利用しています。そのような意味でも加速器を用いた研究は、自然科学分野全般が対象となるようなスケールの大きい分野なのです。

難しい分野だからこそ授業に身近なテーマを取り入れる

現在は、主に「基礎物理学実験法」や「物理学実験Ⅰ・Ⅱ」といった授業を担当しています。1年生向けの授業では、「計測データには誤差が生じる」という実験の大前提からスタートし、誤差を通じてデータの信頼性の重要さを説明しています。また、放射線に関する実験にも取り組み、実際に放射線の測定器を用いて、私たちが普段生活している空間にも意外と放射線が飛び交っていることを実感してもらっています。3年生にはそれを少し発展させ、周囲の放射線のエネルギーを測定してもらい、エネルギーの量から放射線がどこから飛んできているのか、その根源を探ってもらいます。学生に教えるうえで大切にしていることは、難しい分野だからこそなるべく身近でイメージしやすい授業を行うということです。そのため、「放射線はいつ誰が発見したのか」といった歴史的な説明を取り入れることもあります。

私は小学生のときから理科に関心があり、昆虫を集めたり、家に測候所のようなものをつくって気温や風の強さを測ったりと、子どもながらに実験を繰り返していました。実験は成功すればもちろん成果になりますが、たとえ失敗したとしても「このやり方では上手くいかない」という発見を得ることができます。そのように考えれば、失敗もある意味では成功と言えるでしょう。だからこそ、学生のみなさんには、失敗を恐れず試行錯誤しながら、どんどん新たな実験に挑戦してほしいと思います。そうした経験が、将来社会に出たときにみなさんの視野を広げてくれるはずです。

実験物理学(量子ビーム応用、放射線物理)研究室

量子ビーム照射における固体中での「原子輸送現象」の物理的理解と物質材料科学への応用

自然科学の学問領域において、物理学が対象とする「時間的」「空間的」「エネルギー的」スケールは他の自然科学分野に比べて極めて広いです。例えば、「時間的スケール」では、宇宙が始まった瞬間から未来(宇宙の終末)まで扱いますし、「空間的スケール」においては、素粒子レベルのサイズから宇宙規模まで対象とします。そして、特に高エネルギー領域を対象とする種々の研究テーマは、まさに物理学の醍醐味を味わえる代表的な研究対象です。 私たちは加速器を2台所有しており、それにより作り出した「高エネルギー粒子線や電磁波」を物質に照射し、結晶内部で起きるさまざまな物理・化学的現象を調べたり、さまざまな分野へのビーム応用を目指して研究しています。

Photos

  • 研究で使用している洗浄工具。学生時代から使用しているものもあります。真空を汚染しないよう素手では使用せず、常にエタノールで磨き上げています

  • 趣味で使う雪上での登山道具。硬い雪の上でも一歩一歩踏みしめて登ることができます

  • 2022年、ダイヤモンド半導体の実用化に向けた重要な発見により、応用物理学会の論文賞を受賞した賞状とメダル。今でも世界中の研究者から問い合わせがきます

  • 物質に量子ビーム照射をすると、物質の構造や性質が変化したり、原子を物質内に埋め込んだりすることができます。 また、ビーム照射により放出される粒子や電磁波を調べることにより、物質内部の情報を得ることができます。 現在では、物質材料科学にとどまらず、宇宙物理分野や環境化学分野、生命医療分野、考古学分野などあらゆる自然科学の中で利用されています

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