学校法人会計の基礎知識

私立学校は、「学校法人会計基準」(文部科学省令)に基づき会計処理を行い、財務諸表を作成の上、文部科学省等への会計報告を行っています。平成25年4月に「学校法人会計基準の一部を改正する省令」が交付された事により、平成27年度以降の会計年度から、提出が義務付けられている主な財務諸表が、「資金収支計算書」・「事業活動計算書」・「貸借対照表」等となり、公認会計士及び監事の監査を受け、理事会・評議員会での承認・決定を経て届出を行っています。また、新たに「活動区分資金収支計算書」の作成が義務付けられました。

資金収支計算書、活動区分資金収支計算書、事業活動収支計算書、貸借対照表の役割

資金収支計算書

資金収支計算書は、当該会計年度(4月1日から翌年3月31日まで)の支払資金の動き(お金)と諸活動の全て(収入と支出の内容)を明らかにする役割を担っています。

・収入科目
収入科目
科目 内容
学生生徒等納付金収入 入学金、授業料、施設設備資金、実験実習料などの学費です。
手数料収入 入学検定料や証明書発行手数料などです。
寄付金収入 学校法人が寄付として収受したものです。 神奈川大学では米田吉盛教育奨学基金、学生の教育活動・課外活動などへの支援、教員の研究などに対して寄付をいただいています。
補助金収入 国や地方公共団体などから交付される補助金などです。
付随事業・収益事業収入 研修所の利用収入・受託事業収入などです。神奈川大学ではその他、資格取得講座やみなとみらいエクステンションセンター各講座の受講料、学生寮の寮費などがあります。
受取利息・配当金収入 第3号基本金引当特定資産(米田吉盛教育奨学基金)の運用収入、銀行預金利息などです。
前受金収入 翌年度入学生の学生生徒等納付金を前年度に収受したものなどです。
その他の収入 施設整備など目的別に積み立てている有価証券などの償還金、貸付金の回収などです。
・支出科目
収入科目
科目 内容
人件費支出 専任教職員の給与、賞与、非常勤教員の給与、アルバイト料や退職金などです。
教育研究経費支出
管理経費支出
学生・教員の教育研究に要した諸経費が教育研究経費支出、教育研究経費支出以外の経費が管理経費支出です。消耗品費・光熱水費・旅費・奨学費・委託費・賃借料などがあります。
施設関係支出 土地、建物、構築物、建設仮勘定などです。
設備関係支出 耐用年数が1年以上の備品、図書、車両などです。
その他支出 施設整備など目的別に積み立てている有価証券などの購入などです。

活動区分資金収支計算書

活動区分資金収支計算書は、企業会計のキャッシュ・フロー計算書に類似する計算書の役割を担っていますが、区分の基準が異なるために、その内容は異なります。
資金収支計算書だけでは、学校法人本来の教育研究活動での収支がどうなっているのかはわかりません。そこで、活動区分資金収支計算書を作成し、活動ごとの資金の流れを明らかにしています。
活動区分資金収支計算書は、資金収支計算書の決算額を、①教育活動、②施設・設備の取得・売却その他これらに類する活動、③資金調達その他①・②以外の活動に区分して作成します。なお、教育活動には、研究活動も含むものと定義されています。

事業活動収支計算書

事業活動収支計算書は、当該会計年度の①教育活動、②教育活動以外の経常的な活動、及び③①と②以外の臨時的な活動に対応する事業活動収入と事業活動支出の内容を明らかにし、基本金組入前の当年度収支差額と基本金組入後の当年度収支差額を表示させることで、学校法人全体の経営状況を把握する役割を担っています。そして、収益と費用を対比し学校法人の事業活動収支のバランスを見ます。企業会計の損益計算書と類似の書類となりますが、学校法人は利益の獲得を目指すのではなく、収支の均衡を目的とします。
また、「現物寄付金」・「減価償却額」や「退職給与引当金繰入額」といった資金の動きを伴わない科目を加えて収支計算を行い、これらが、「資金収支計算書」と異なります。

貸借対照表

貸借対照表は、当該会計年度末(3月31日現在)時点の資産や負債などの状況を示し、財政の状態を表す役割を担っています。企業会計の貸借対照表と役割は同じですが、表示内容は固定資産の「図書」や、企業会計の資本金に該当するものとして「基本金」を計上するなど、学校法人会計独特の科目が表記されます。貸方の「基本金の部」と「繰越収支差額の部」を合わせて「純資産の部」となります。
また、固定資産の中科目に「特定資産」を設けたことで、金融資産の状況が把握しやすくなっています。
なお、固定資産の残高は、原則として資産を取得した時点の取得価額を基礎としており、年度末時点の客観的な評価額を表すものではありません。

「基本金」について

学校法人が将来にわたって維持・発展するためには、教育研究の基盤となる土地・建物・設備(機器・図書)などの資産を保持し、維持していかなければなりません。この資産を「基本金」と言い、その取得額が「基本金組入額」となります。
ただし、自己資金で取得したものに限られ、借入金等の負債を伴う収入で取得したものは「基本金」に入れることはできません。借入金などの負債を返済した年度に入れることになります。(以上第1号基本金)
このほか将来の施設取得のために、予め計画的に積み立てる金銭等の資産の額(第2号基本金)、奨学金等の基金として保持し運用する金銭等資産の額(第3号基本金)、恒常的に保持すべき基金(第4号基本金)があります。