Nakabayashi Hirokazu
中林 広一 准教授
Profile
ゼミナールでは食文化について研究しています。食というトピックは奥深く、そこから社会のさまざまなことが見えてきます。国内外を問わず、文化や社会に興味を持っている人はゼミナールで一緒に勉強していきましょう。
生年/1975年
出身地/神奈川県相模原市
子供の頃の夢/何も考えていませんでした
尊敬する人/尊敬は盲信につながるのでしないようにしています
愛読書/各種ノンフィクション作品
趣味/自転車に乗って散策・横浜中華街の観察
休日の過ごし方/近所の散策
好きな映画/王兵の各作品
好きなTV番組/「モヤモヤさまぁ~ず」「情熱大陸」
好きな食べ物/その日によって変わります
自分とは違う考え方や価値観があることを知り、相手を尊重することで良好な関係を築けるのだと思います。
食文化を通して見る中国の歴史
中国の社会・経済の歴史を専門としています。主に農業や食物に焦点をあてた研究を行い、そこから庶民の生活の在り方や中国社会の特徴を考えてみたいと思っています。大学院の博士課程では、中国の日常食をテーマに論文をまとめました。日常食とは文字通り日常的な食事のことで、現代の日本でいえば白いごはんとみそ汁、カレーライスやスパゲティ、といったところでしょうか。ところが、いざ和食文化を海外に発信するとなると、寿司や天ぷら、焼き鳥、懐石料理などが挙げられます。もちろんこれらも和食文化の一部ですが、私たちは毎日こういった食事をしているわけではありません。寿司や天ぷらのような和食の代表として扱われる料理よりも、日常食にこそ庶民の暮らしの実態があると考えます。
日常食を調べると、一般的に知られている歴史とは別の側面が現れ、そこから社会の動きが見えてくるのが興味深いところです。たとえば、ある時期の中国におけるソバの消費について調べるとしましょう。中国全土の地図を広げ、ソバに関する記録のある地点に印をつけます。毎日のようにソバが食べられていた地域に○印、あまり食べられていなかった地域に×印をつけると、○と×がはっきりと分かれます。その理由を調べていくと、○の地域は山岳地帯で他の農作物がとれない場所、×の地域は反対に他の農作物が多くとれる場所だということが分かります。その時期の中国のソバは日本の蕎麦と違い、苦くてあまりおいしいものではなく、基本的には貧しい人々の食べ物とされていました。そのため、他の農作物がとれる場所ではわざわざソバを食べる習慣がなかったことが分かります。この他にも最近では、昆布や牛乳など一見すると農業とは関わりのなさそうな要素に着目し、そこから農業や農村の姿を描き出せないかと考え、調査に着手し始めています。
文化を比較することで相手を知る
現在の担当講義「文化比較論」では、東アジアの食文化を扱っています。東アジアの食文化はヨーロッパなど他の地域とどのように異なるか? なぜそのような特徴を持つに至るのか? といった背景を具体的に考察しながら、異文化理解の在り方を考えます。
「国際事情」の講義では、中国と日本を比較しながら、中国社会の特徴や中国の人々の考え方や価値観について理解を深めていくことを目的としています。皆さんはさまざまなメディアの情報を見聞きするなかで、たとえば"中国の人はなぜ平気でゴミのポイ捨てをするのか?" "中国ではなぜ有名なキャラクターにそっくりな物を作るのか?"といった疑問を抱いたことはありませんか? けれど中国の人から見れば、ゴミを家に持ち帰る日本人を不思議に思っているかもしれません。つまり、日本人には理解できない異質な行動が中国ではあたり前かもしれないし、その逆もまた然りです。こういった違いが生まれる背景を考察しながら中国社会のルールを学ぶことで、"反中"でも"親中"でもない"知中"の学生を養成できればと考えています。
他者とのコミュニケーションから学ぶこと
これは中国と日本の間だけではなく、あらゆる関係にあてはまることだと思います。相手の考え方や価値観、ルールを知っていれば、行動や言動に多少の違和感があってもむやみに摩擦が起きることはないでしょう。もし何らかのすれ違いが生じたときは、自分の考えを押しつけず、相手の価値観やルールを尊重しながら対話すれば、解決方法を見出すことにつながるかもしれません。私は歴史学や文化人類学といった研究分野を通じてこうした思いを強くしました。歴史学では、時代を遡れば現代とまったく異なる価値観が存在していたことを、文化人類学では、他の地域で生きる人々が自分とは違う考えや暮らし方をしていることを知る機会を得たからです。
ただ、学問から学ぶことも大きいですが、他者とのコミュニケーションを深めることもまた大事なことと言えましょう。ゼミやサークル、アルバイトなどを通して、自分とは異なる考え方や価値観を持つ人たちと関わり、自分が考えていることや感じていることが唯一の正解ではないと理解することが重要だと思います。そのうえで相手の考え方や価値観を尊重できれば、良好な関係を築くことができるのではないでしょうか。これからの社会で生きる皆さん、特に国際文化交流学科で学ぶ学生の皆さんには、こういったことを強く意識してほしいと切に願っています。
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