Scherer Quintana

シェラー クインタナ 助教

所属
国際日本学部
国際文化交流学科
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美術史学

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Profile

日本の江戸時代の浮世絵版画を研究しています。美術史を研究することで、その国の歴史や文化を学ぶことができます。国内外の名所を描いた版画を見ることで、江戸時代の人々が日本と世界をどのように理解していたか、一緒に考えていきましょう。

出身地/アメリカ・カリフォルニア州
子供の頃の夢/獣医師
愛読書/Ruth Reichl “Tender at the Bone: Growing Up at the Table”
趣味/散歩、料理、喫茶店に行くこと
好きな映画/是枝裕和『ワンダフルライフ』
好きな食べ物/甘いもの、蕎麦

江戸時代の浮世絵版画に注目すると鎖国中の国際交流の姿が見えてくる!

浮世絵版画に重要な影響を与えた「ベロ藍」

私の専門は日本美術史で、特に江戸時代の浮世絵版画を研究しています。浮世絵版画といえば、葛飾北斎の『富嶽三十六景 神奈川沖浪裏』などを想像する方も多いでしょう。こうしたものに私が惹かれるのは、ただ美しいからという理由だけではありません。当時の日本は鎖国政策をとっていたにも関わらず、浮世絵版画には、国際的な交流や海外からの影響が垣間見えます。そうした、美術のなかに国際交流の様子を発見できる点に面白さを感じるのです。

例えば、大きな波と富士山の絵が特徴的な『富嶽三十六景 神奈川沖浪裏』であれば、その風景を彩る印象的な青色は「ベロ藍(ベルリン・ブルー)」という顔料で描かれていることがわかります。ベロ藍は、18世紀初頭にドイツの染料職人が偶然発見したとされる合成顔料。鮮やかな色を保ちながら濃淡を表現できる特別な顔料で、日本にも18世紀中頃に輸入されたと伝えられています。葛飾北斎や伊藤若冲が海や空、富士山といった風景を表現するために好んで使ったこのベロ藍が、日本を象徴する美しい青をつくり上げているのです。また、浮世絵には西洋で発展した「遠近法」が取り入れられているのも特徴のひとつ。鎖国中の江戸時代にも国際的な交流があったとわかる貴重な資料です。

スマホはおろかカメラもなく、気軽に旅行することもできなかった江戸時代において、浮世絵は人々が各地の名所についてのイメージを膨らませる重要なメディアでもありました。一般的な絵画とは違い、何枚も刷られた版画は多くの人の目に触れ、見たことがない場所を想像したり、かつて行った場所を思い出すきっかけとしての役割を果たしていたのです。絵によってはその当時の服装や髪型のトレンドがうかがえるものもあり、現代のファッション雑誌を見ているような親近感を覚えます。浮世絵版画を通して、美術的な側面だけでなく異文化や歴史を学べる点に魅力を感じています。

海外の展示を見ると、日本にはない視点を得られることも

日本美術に初めて出会って心を掴まれたのは、大学生のときでした。さまざまな野菜をモチーフに涅槃図を描いた伊藤若冲による『果蔬(かそ)涅槃図』という墨画を見て、そのアイデアやユーモアの感覚に衝撃を受けたのです。それから大学教員になる前は、ボストン美術館やハーバード美術館、フィラデルフィア美術館といったアメリカの美術館で働いていました。これらの美術館には日本美術のコレクションがあり、そうした展示を制作するなかで、海外の人が日本の文化や歴史を知るためにいかに美術が重要な働きをしているかを知りました。日本のイメージとして富士山の絵を思い浮かべる人が多いように、美術は異文化を理解するための強力なアイテムなのです。

現在は、海外の美術館で日本の美術品がどのように展示されているのかにも注目して研究しています。例えば、トロントにあるロイヤル・オンタリオ博物館では、2016年に「第三のジェンダー:浮世絵に描かれた若衆」という美術展が開催されました。これは、「成人男性」と「女性」の間で人気が高かった「若衆」という江戸時代特有の人々の姿に焦点を当て、若衆が浮世絵でどのように描かれたのかをジェンダーやセクシュアリティの観点から考察した展示です。国や美術館によってさまざまな見方があるのが面白いと思います。今後も、日本美術が国外でどのように収集され、展示され、理解されてきたかを研究したいと思っています。

私が担当している授業では、学生の皆さんに日本の芸術や文化について理解を深めてもらい、他の国の人たちに話ができるようになってほしいと思っています。大人数の授業でも、みんなで絵巻物をつくるアクティビティやディスカッションなどを多く取り入れることで、自分の考えを表現する時間をたくさんつくっています。ぜひ皆さんには、美術館に展示されているものだけでなく、身近にあるアートから「to read an image」=そこに描かれているイメージを独自に解釈して他の人と意見交換をする機会をもってほしいですね。

英語に触れる機会を作り、学ぶ楽しさを感じてほしい

繰り返しになりますが、英語(外国語)の学習は、とても時間がかかります。簡単に成果が出るものではなく、忍耐強く頑張り続ける精神力も必要です。けれど一度でも成果を実感できれば、学ぶことが楽しくなってくるはずです。そのため大学では、サークルや部活動、ボランティアやアルバイトなど、授業以外でも英語に関わる機会を率先して作ることをおすすめします。可能であれば留学も経験してください。夏休みを利用した短期留学であっても、異文化に触れる経験や、世界中から学びに来る人たちとの交流で刺激を受け、語学学習へのモチベーションもいっそう上がるでしょう。

Photos

  • 研究室はとても新しくきれいです。ドアはシンプルで簡素でしたが、学生たちが葛飾北斎の展覧会に行き、お土産に絵葉書を持ってきてくれたので、それをドアに飾りました。私はその優しさに感動し、アーティスティックなドアにとても満足しています

  • 私は風呂敷と手ぬぐいが大好きです。実用的なだけでなく、見た目も美しいのです。私の好きな店舗は、東京にある美術館の隣にあり、そこでたくさんの風呂敷や手ぬぐいを購入しました。なかでもお気に入りは大判の風呂敷で、本や食料品を運ぶのによく使っています。縁起を担ぐおみくじ柄が特にお気に入りです

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