Tanaka Takanobu

田中 孝宜 教授

所属
国際日本学部
国際文化交流学科
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専門分野

放送メディアの国際比較、ジャーナリズム、災害情報、国際協力

キーワード

Profile

出身地/大阪府
子供の頃の夢/大学教授
愛読書/旅行エッセー全般、深夜特急
趣味/映画・舞台鑑賞、旅行
休日の過ごし方/家事(掃除、洗濯、アイロン掛け)、水泳、読書
好きな音楽/YOASOBIなど世界で活躍する若い人たちは応援したくなります
好きなTV番組/ニュース報道番組
好きな映画/『007』シリーズ、『男はつらいよ』シリーズ
好きな食べ物/お好み焼き(大阪生まれなので)

放送メディアの役割を探究し、社会に還元する。

NHKアナウンサーとしての経験を研究に昇華させる

私は、世界の放送メディアの動向分析および放送分野における国際協力をテーマに研究しています。こうしたテーマに取り組む背景には、長年NHKでアナウンサーとして勤務し、国内外の放送実務に携わってきた経験があります。

NHK在籍中は、アメリカのABCニュースと共同でドキュメンタリーを制作したり、ノルウェーから世界で活躍する日本人を紹介する中継に携わったりと、国際的な視点で放送に関わる機会を多く得ました。キャリアの終盤には、NHK放送文化研究所の海外メディア調査グループでグループリーダーを務め、BBCをはじめとする世界各国の公共放送の制度や番組を分析。日本の放送が今後どうあるべきか、その方向性を探ってきました。その研究を、現在、神奈川大学でも継続しているのです。

私のもうひとつの研究の柱は、災害報道の在り方です。NHK大阪局に所属していた29歳の時に、阪神・淡路大震災を経験しました。発災直後に大阪から神戸へ入り、1週間にわたってタクシーを寝床にしながら取材を続けました。時間の経過とともに明らかになる被災者の生活課題、例えばトイレ不足など、現場で見聞きした問題をそのまま政治番組の中継で伝えたところ、出演していた政治家が即座に動き、仮設トイレの設置が実現したことがありました。この経験から、報道が社会を動かす力を持つことを強く実感しました。

さらに2004年に発生したスマトラ島沖地震によるインド洋大津波の被災地を取材しました。当時、災害報道の体制は十分に整っていませんでした。そのため、津波が到達するまでに時間があったにもかかわらず、多くの人々が避難せず、22万人以上が犠牲となったのです。この悲劇により、危機を適切に伝える放送の必要性を痛感しました。現地ではタイ政府やインドネシア政府の取り組みも取材。当初は報道体制を整備できるのかと懐疑的な見方もありましたが、例えばタイでは報道チームが迅速に組織され、地震に加えて、交通事故や洪水への注意喚起キャンペーンなども展開されていきました。取り組み次第で報道体制は構築できるのだと実感しましたね。

このような動きは、アジア太平洋放送連合(ABU)の動きにおいても顕著で、災害報道のノウハウをアジア諸国で共有しようという連携が進んでいます。こうした国際的な協力の流れのなかで、災害報道の実践と体制づくりは、少しずつではありますが確実に前進していると感じています。

こうした実務経験を通じて、「放送メディアの役割をより深く探究したい」との思いを強め、NHKに勤務しながら大学院へ進学し、修士・博士と研究も行っていました。放送メディアを研究する上では、「歴史」と「国際的多様性」という縦軸と横軸の視点が不可欠です。現在の制度や番組の在り方は突然生まれたものではなく、歴史的な背景があり、そこから未来を見通すヒントも得られます。さらに、放送の仕組みは国によって大きく異なります。公共放送、商業放送、国営放送など、多様な形態が存在するなかで、自国に合った放送の選択肢をどう築くのかを考えることが重要です。

これからも私は、放送メディアの意義と可能性を問い続け、特に災害報道や国際的な放送協力の在り方を通して、「命を守る報道」「社会を支える放送」を探究していきたいと考えています。

大学を卒業してからも、学びは一生続いていきます!

私が担当する「ジャーナリズム」の授業では、公共放送・商業放送・国営放送といった放送の類型の違いや、戦争報道における国ごとの姿勢の違いなどを題材に、報道の在り方について考察します。例えば、ロシアとウクライナの双方の報道を取り上げ、同じ出来事でも伝え方が大きく異なることを比較します。一方では「軍事施設だけを攻撃している」と報じられていても、他方では市民の犠牲や街の破壊が報道されている。そうした現実を突きつけながら、学生には「報道とは何か」「メディアが果たすべき役割とは何か」を自ら問い直してもらいたいのです。

「メディア・リテラシー」の授業でも、今起きている出来事を題材に、情報を多角的に読み解く力を養います。ある情報をひとつの視点だけで鵜呑みにするのではなく、さまざまな角度から見て初めて、物事の本質が見えてきます。現代は、放送メディアが一方的に情報を届ける時代ではありません。誰もが発信者となり、受信者自身が情報を取捨選択する力を求められる時代です。だからこそ、自分で「正しい情報」「必要な情報」を見極め、行動に移せる力を養ってほしいと思っています。

英語のリーディングの授業でも、海外メディアのニュースを教材に取り上げ、語学力だけでなく、国際社会の動きや異文化理解にも目を向けています。単なる英会話の練習ではなく、現代のリアルな課題に触れることこそが、真の意味での“実践的な学び”だと考えています。

グローバル化が進む現代社会では、広い視野と柔軟な思考力が求められます。言語やメディアについて学ぶことは、世界を多角的に捉え、自分の考えを持ち、他者と協働しながら生きていく力を育てる営みでもあると思っています。私自身、社会人として働きながら修士号、博士号、MBAを取得してきました。学びは学生時代だけのものではなく、人生を通じて続いていくものです。だからこそ、大学生活のなかで「学ぶ習慣」と「学び続ける体力」をぜひ身につけてください。自ら課題を見つけ、主体的に学ぶ力こそが、これからの時代に不可欠な資質だと感じています。

学生時代は、失敗してもいい、遠回りしてもいい、「自分探し」が許される貴重な時間です。人と出会い、本を読み、映画を観て、旅をして、音楽に触れ、親友をつくる。そうした一つひとつの体験が、やがて人生の軸をつくっていくはずです。

実は、私の子どもの頃の夢は「大学教員になること」でした。いま、ようやくその夢への挑戦が本格的に始まったところです。学生の皆さんも、それぞれの夢に向かって、一緒に一歩ずつ挑戦していきましょう。

Photos

  • ストップウオッチとアクセント辞典:私は、公共放送局で37年間アナウンサーとして働いてきました。時間を守ること、そして言葉を丁寧に扱うことは、仕事の基本中の基本でした。大学の授業では、放送のように1分1秒を気にする必要はありませんが、「時間」と「ことば」は、これからも大切にしていきたいと思っています

  • 取材パス:若い頃、アメリカのABCニュースに派遣されたことがあります。ピーター・ジェニングスやテッド・コッペルなど、一流キャスターたちの仕事ぶりをすぐそばで見る貴重な経験でした。これは、国連などで使っていた取材パスです。私にとって、ジャーナリストとしての原点とも言える大切な思い出の品です

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