Hirose Tomio

廣瀬 富男 教授

所属
国際日本学部
国際文化交流学科
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専門分野

理論言語学

キーワード

Profile

ふだん無意識に使っている母語。少し立ち止まって考えてみると、不思議なことに気づきます。「本を買うんだ?」という疑問文は通常の「何を買うんだ?」とは異なります。これにはきっと理由があるのです。ここから言語学が始まるのです。

生年/1968年
出身地/大分県
家族構成/妻、娘
子供の頃の夢/天文学者
尊敬する人/小野伸二
愛読書/「がん遺伝子の発見」、「生涯最高の失敗」
趣味/ボールジャグリング、けん玉
休日の過ごし方/家族とのんびり、独りでゴロゴロ
好きな音楽/クラシック
好きなTV番組/「さわやか自然百景」、「小さな旅」
好きな著名人/安全地帯
好きな食べ物/ベリー類(特に、ラズベリー)
好きな国/カナダ

日本語を中心とした言語について、常に何か「気になること」「ひっかかること」を考えています。

文法を、ただ記憶する「退屈な」ものから、思考を巡らせる「面白い」研究対象に

私の専門は言語学で、文の構造に関する研究を行っています。文は、単語をはじめとする部品(「構成素」といいます)から成り立っていますが、この構成素は、文頭から文末へただ「線的」に並べられているわけではありません。仮に、5つの単語から構成される文があるとして、それらの単語に①~⑤と番号をつけてみると、①と②が結びついて「句」(これも構成素です)になり、④と⑤が結びついて別の句になり、この句が③と結びついてより大きな句になったりと、構成素が「階層的」に組み合わされて文が形成されていることがわかります。このような文の成り立ちを「統語構造」といい、私はこの統語構造について考える「統語論」という研究分野の視点から、日本語を中心に言語の探求を続けています。
担当している「英語専門演習B(言語)」では、英語を中心に文法の仕組みを学びます。言語学の「生成文法」の考え方から、受動文や疑問文など、英語の基本的な構文の分析法を講義していきます。文法が、ただ記憶する「退屈なもの」から、「一体なぜそんなふうになっているんだろう?」「こういうことなのではないか?」といったように思考を巡らすことのできる、研究の対象として「面白いもの」へ変わるきっかけになることを願っています。

「うちの兄たち」には2つの意味がある?

普段何げなく使用している言語について、あれこれ考察してみるのは面白いものです。私は以前、「うちの兄たち」という表現について考えたことがありました。これは所有を表わす「うちの」と、名詞の「兄」と、複数を表わす「たち」の3つの構成素を組み合わせた名詞句で、少なくとも2つの使い方が考えられます。ひとつは、私に複数の兄がいる場合。それとは別に、例えば、1人の兄とその配偶者や家族のことを言いたいときにも、やはり「うちの兄たち」と表現できます。つまり「うちの兄たち」というひとつの形式に2つの異なる意味があるということです。このような事実に直面すると、私は「発音は同じだけれど、構造はきっと違うはず」と考えます。そして、「うちの兄たち」に2つの異なる構造を仮定し、それぞれにふさわしい意味を結びつけた上で、「この構造の違いが『見える』言語はないだろうか?」と、さまざまな言語を調べてみるわけです。その結果、アイヌ語がまさにそういう言語だということがわかりました。
最初に言語に関する疑問を持ったのは、中学で英語を学び始めた頃です。疑問詞を使う疑問文を勉強していたときに、 “When did you go there?”“Where did you go yesterday?”“Why did you go there yesterday?”などの表現はあるのに、“Who did go there yesterday?”という表現がないこと、つまり、主語が疑問詞になる場合にだけ、“did”が不要であることを不思議に思いました。以来ずっと頭の隅に引っかかっていたこの疑問が解けたのは、その20年近く後、大学院を卒業してからのことでした。

自分の周りや世界の事物に疑問を持ち、考え続ける

皆さんも、言語に限らず自分の周りや世界にあるもの、そこで起きていることに興味を持って生活してみてください。その中で「なんとなく気にかかること」や「何かひっかかること」を拾い上げ、それについて考え続けてみてください。すぐに解決しようとする必要はなく、「こう考えてみたけど、ちょっと違うな」とか「この例の説明も、あれでいいのかな?」というふうに、答えは保留にしておいて、ときどき引っ張り出して考えてみるのもいいものです。考えることが多いほど退屈することがありません。そしていつか、疑問を解明する糸口になるものを見つけたときに、思わず膝を打つような喜びを感じることができるのです。

Photos

  • 博士後期課程のときに、一度は海外で生活してみたいという思いもあって、カナダのブリティッシュ・コロンビア大学に留学しました。現地の先住民語のひとつ、平原クリー語の統語構造に関する研究を行ってまとめた博士論文が、言語学者としての出発点になりました

  • 趣味でボールジャグリングをやっています。プロの大道芸人でもあったイギリス人の恩師の影響で始めました。加えて最近はけん玉の練習も。老化防止にも役立っています

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