Iida Junko
飯田 淳子 教授
Profile
出身地/東京都
子供の頃の夢/水泳の選手
愛読書/上橋菜穂子、小川洋子、三浦しをん、吉田修一などの小説
趣味/旅行、映画鑑賞、音楽鑑賞、読書
好きな音楽/さまざまなジャンルの音楽を聴きます
好きな映画/是枝裕和、想田和弘、西川美和などの監督作品
好きな食べ物/寿司、蕎麦、タイ料理、スープ類、乳製品、果物、甘い物
異文化を理解する調査・研究を通して、自分の「当たり前」を問い直す。
身体と医療に焦点を当てて文化人類学の研究を深める
専門は、文化人類学とその一分野である医療人類学です。文化人類学とは、人間の文化の多様性と共通性を、対象社会のなかに身を置きながら理解しようとする学問です。なかでも私が専門とする医療人類学は、健康や病い、医療を文化的・社会的側面に焦点を当てて考える分野です。
多くの人類学的研究では、海外でフィールドワークを行います。現地では、住民の人たちと同じ場所で寝起きし、同じものを食べ、同じ時間を過ごします。最初は、日本とは大きく異なる文化や習慣にショックを受けることもあります。しかし、その違和感こそが、相手の社会や文化を理解すると同時に、それまで気づかなかった自分の「当たり前」に気づく入り口になります。
私の主な研究フィールドのひとつはタイです。タイ・マッサージや呪術的治療について調査してきました。タイでは、例えば、精霊の仕業で病気になったと考えられることがあります。その場合、祖先霊の供養をしたり、悪霊祓いをしたりすることが治療の一部になります。タイは仏教国ですが、こうした精霊信仰も日常のなかに息づいています。私が調査してきたタイ北部の農村では、現代医療が普及した現在でもこうした考え方が身近なものとして存在しており、私はそれが人々によってどのように実践され、受け止められているのかを探究しています。
また、日本の医療現場をフィールドに、身体診察と医師-患者関係、看取り、医療者向けの人類学教育に関する研究もおこなってきました。新型コロナウイルス感染症に対処するプライマリケア医(家庭医・総合診療医)の経験について調査したこともあります。医療は科学的な知識や技術だけで成り立っているのではありません。そこには、患者と医療者の関係、死生観、家族・社会の価値観なども深く関わっています。異文化理解と医療を通して、人間とは何かを考えること、それが私の研究です。
正解をひとつに決めず、意見の違いを尊重してほしい
現在は人間科学部で、主に「多文化地域論」と「グローバル地域論」の授業を担当しています。いずれの授業でも多様な他者や異文化を理解するための視点と姿勢を学びます。身近な出来事からグローバルな社会的事象までさまざまなテーマを取り上げ、それを歴史的・政治経済的・社会的な文脈のなかで考えていきます。
「多文化地域論」では、国家、民族、家族、宗教、医療など、幅広いテーマを取り上げます。私が専門とする文化人類学的な視点や東南アジアの事例を取り上げることが多いですが、歴史学や社会学など、他の学問の成果や他地域の事例も取り上げます。「グローバル地域論」では、紛争、難民、貧困、国際協力、多国間ビジネスなどをテーマに、世界の動きと私たちの暮らしがどのようにつながっているのかを学びます。
授業は、講義とグループワークを組み合わせて進めます。まず一人ひとりが考え、その後グループで意見を共有します。その際に大切にしているのは、正解をひとつに決めないこと。ものごとのとらえ方、考え方はひとつではありません。授業の最初には、他の人の話をきちんと聞くこと、意見の違いを尊重すること、自分の考えも率直に話すことを伝えています。異なる意見や価値観に出会うことで、自分の視野を広げてほしいと考えています。
異質に見えるものと出会い、自分の「当たり前」を問い直してほしい
授業を通じて、学生の皆さんには、自分にとっての「当たり前」を疑える人になってほしいと思います。文化人類学が大切にしているのは、見慣れないものを理解しようとすることと、見慣れたものを問い直すことの両方です。
私自身、タイで3年、イギリスで1年暮らした経験があります。慣れない環境のなかで、言葉も思うように通じず、もどかしさを感じることもありました。タイの農村で調査をする際は、自分の「当たり前」が通じない経験をします。例えば、私が調査している北タイの村では、オタマジャクシを食べます。滞在していた家でオタマジャクシ料理が出てきた時は、正直言って「気持ち悪い」「貧しくて食べ物に困っているのか」と思いました。けれども、この村には美味しい食べ物がたくさんあり、村人たちは食べ物に困ってなどいません。また、かれらにとっては、日本の刺身のように生で魚を食べることの方が「気持ちが悪い」ことなのです。そうしたことを理解するなかで、自分の思い込みや視野の狭さに気づかされました。
できれば学生時代に、一度は海外や、自分の住み慣れた場所とは違う環境に身を置いてみてください。数日、数週間でも、行くのと行かないのとでは大きく違います。世界には本当にさまざまな人がいて、さまざまな暮らし方があります。それを知ることが、自分の「当たり前」を突破する第一歩となります。
飯田ゼミナール
「他者と/から学ぶ人類学」
人類学では「フィールドワーク」という方法を用います。人類学的なフィールドワークでは、現場に身を置いて他者と生活や活動を共にし、観察や体験、インタビュー等を行います。他者の言動は、最初は「奇妙」に感じられたり「不可解」だと思われたりすることがありますが、その人たちと生活や活動を共にし、かれらの社会や文化について深く学んでいくと納得できることがあります。また、その過程で、それまで当たり前すぎて意識もしなかった自分の行動のし方・ものの見方・価値観に気づかされます。このゼミではこのように「見慣れないものを見慣れたものに」「見慣れたものを問い直す」ということを行いながら、「人間とは何か」を考えていきます。
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