Ashida Yusuke

芦田 裕介 准教授

所属
人間科学部
人間科学科
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専門分野

社会学(地域社会学、農村社会学)

キーワード

Profile

生年/1984年
出身地/岡山県
子供の頃の夢/漫画家
愛読書/鷺沢萠の作品
趣味/読書、広島東洋カープ(プロ野球)
休日の過ごし方/映画鑑賞
好きな映画/「東京物語」、「グッドウィルハンティング」
好きな音楽/ビートルズ
好きな食べ物/スイーツ全般(とくにアップルパイ)

社会学は既存のイメージを「それって本当?」と疑っていく学問。 想像力を持って、社会の問題に向き合っていこう。

田舎の高齢者は縁側でお茶をすすっている……ばかりじゃない!

人口減少や高齢化など社会が変化するなかで、日本全国の地域社会ではさまざまな課題が生じています。例えば、各地で商店街や農業、お祭りが活気をなくし、空き家や空き地が増えているといった話は、皆さんも耳にすることがあるでしょう。一方、そうした課題に向き合いながら、日々を楽しく過ごしている人々もいます。以前、京都の山奥の村で暮らしている80歳を超えるおばあちゃんたちに話を聞きにいったことがあります。彼女たちが作るおせんべいのようなお菓子が人気で、よく売れているとのことでしたが、そのおばあちゃんたちはもっとたくさん売って、お金を稼ぎたいという夢を持っているんです。もっと売って、孫たちになにか買ってあげたりしたいんだ、と。そのために海外も視野に入れたいからと英語の勉強をしていたり、帳簿をつけるためにExcelもマスターしているんですよ。なんとなく田舎の高齢者というと、のんびり縁側でお茶をすすっているようなイメージがあると思いますが、実際には全然違う人たちもいるのです。
社会学というのは、このように私たちが漠然としたイメージでとらえている物事に対して、「本当にそうなの?」と疑問をぶつけていく学問だと私は思っています。「田舎は衰退しているってホント?」「ショッピングモールやコンビニは商店街を破壊しているってホント?」そんなふうに疑問を持ち、現地の人たちに直接話を聞いてみる。そうすることで自分の知らない世界が見えてきます。
私が担当する「地域社会学」や「地域社会貢献」など、地域社会の問題に関する講義では、このような地域の具体的な状況を知り、その課題にどのように向き合っていけばよいかを学びます。地域社会の問題は、日々の買い物や娯楽などにも深くかかわっています。みなさんにとっても決して人ごとではないということをわかってもらいたいと思います。

テクノロジーは人の暮らしを変え、人間関係も変えていく

私はこれまで、農山村や地方都市を主な調査対象として、日本の地域社会におけるコミュニティや家族、都市と農村の関係について研究してきました。このテーマに関心を持つようになったのは、私が岡山県の山奥の、それこそ電車もないような田舎で育ったからかもしれません。大学進学をきっかけに上京し、都会で暮らすようになってはじめて、自分が住んでいた場所の特性に気づいたのです。
最近のテーマはテクノロジーと社会の関係です。日本社会では、第2次大戦後に自動車や家電製品が各家庭に普及し、人々の生活は都市的になりました。公共交通機関の発達や農業機械のような産業技術の進歩は働き方を大きく変化させ、新しいテクノロジーは日々の暮らしをとても便利にしました。一方で、地域社会においては家族やコミュニティの人間関係が弱まっている、あるいは環境問題が生じるといった課題が指摘されます。テクノロジーが発展すれば世の中はよくなると思っていたのに、「実際はそれほどよくなっていないのではないか?」という疑問が生まれてきているのです。
例えば、田舎では車がないと生活が不便で困ることが多いのですが、高齢になるにつれて運転が危険になってきます。都市部では公共交通やタクシーを使うという選択肢がありますが、田舎にいくほどそれがなくなっていく。そもそも田舎では移動に車が多く使われるようになったことでバスや電車などの公共交通機関が衰退していったという経緯があります。
今はまだ、公共交通のかわりに家族やコミュニティが高齢者を支えることができている場所も、10年後、20年後はそれも難しくなるでしょう。では、どうすれば人々の生活や地域社会が良い方向にいくのか。解決法は簡単には見つかりませんが、テクノロジーと人との付き合い方を研究することで、そのヒントをみつけたいと思っています。

地域の研究に必要な「想像力」を鍛えよう

大学時代はとても自由な時間なので、ときには周囲を気にせず、未知の世界に飛び込んで、自分の世界を広げてもらいたいと思います。とにかく何でも興味をもったことに打ち込んでみましょう。時には一人で行動することをおすすめします。一人で映画館へ行って、映画を見るだけでもいいんです。劇場を見回して、こんな人たちが見にきているんだと観察するのも面白いですし、上映中には自分とは異なる反応を共有できる。そこには部屋でNetflixを見るのでは得られない、その場の空気を感じる楽しさがあります。
私が地域の研究をしていて強く思うのは、「想像力」が大切だということ。事前調査の情報からイメージを膨らませるためにも、実際に地域に足を運んで聞いた話から問題を読みとるためにも、想像力はとても重要です。それを鍛えるためには、小説や映画などで「物語」に触れることも、とても大事だと思います。私も学生時代には、全国ロードショーしていない映画を単館系の小さな映画館まで追いかけました。大学教員になるとそういう時間も取りにくいので、感性を磨くためのとても貴重な時間だったと思います。
私はよく学生たちに「素手ではなかなか魚を獲れないだろう?」と言います。魚をキャッチするためには釣り道具が必要なように、何かをキャッチするためには、そのための道具が必要になります。大学というのはそんな道具を手に入れるための場所だと思います。大学生活を通して感性を鍛え、想像力という道具を手に入れてください。

芦田裕介ゼミナール

生活する人々の視点から社会の問題を考える

ゼミナールでは、社会学的な視点から「地域と暮らし」に関する問題を考えます。ゼミ生達は、さまざまな社会的課題について文献を読み、議論することで理解を深めます。とくに、日本社会における人口減少や高齢化に伴う、地域社会や家族の問題に関心をもつ学生が多いです。研究においては、ゼミ生自身がテーマを考え、実際の地域や自治体を対象として、事例分析やフィールドワークをおこないます(写真は小田原市役所での調査の様子)。これは問題を考える際に、地域社会で生活する人々の視点を重視しているためです。

Photos

  • フィールドノートとして活用しているコクヨの測量ノート。インタビューの要点をまとめてメモします

  • 『東京物語』は大好きな映画。戦後間もない時期の地方と都市の関係をよく表していて、授業で資料として学生たちに見せることもあります

SDGsの取組み

地域課題

SDGs・地域課題について

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