Koizumi Ryo
小泉 諒 准教授
Profile
生年/1983年
出身地/宮城県仙台市
子供の頃の夢/パイロット
尊敬する人/大学の恩師
愛読書/向田邦子、鷲田清一、宮脇俊三
趣味/街歩き
休日の過ごし方/食べ歩き
好きな音楽/エレクトロニカ、ジャズ、クラシックなど
好きなTV番組/岩合光昭の世界ネコ歩き、ドキュメント72時間
好きな食べ物/蕎麦
好きな国/ドイツ
さまざまな問題を「空間」という切り口で見る。 それが「地理学」という学問です。
地名や産業を覚えるだけが「地理」ではない
高校生の皆さんは「地理」というとどのようなイメージを持つでしょう。地図帳を見て国や地域の名前を覚えたり、どの地域ではどのような農作物が穫れるとか、どのような産業が活発であるというような情報を暗記する、といったところでしょうか。
けれど大学における「地理学」はもう少し複雑で、大きく「地誌学」と「系統地理学」という二つの分野に分けられます。「地誌学」とは、地域をさまざまな角度からとらえる総合的な学問で、いわゆる中学や高校で学んだ地理のイメージは「地誌学」といえるかもしれません。
一方、「系統地理学」はさまざまな科学の成果を応用して地理的に分析する学問で、さらに人文社会現象を扱う「人文地理学」と自然現象を扱う「自然地理学」に分かれます。私が担当している「人文地理学概論」の授業では、前学期では地理学が必要とされてきた背景や、重要なツールである地図やさまざまな理論などの人文地理学に関する全般的な内容を、後学期では都市に注目した内容を扱います。
また、私自身の研究テーマもこの人文地理学で、東京大都市圏の社会空間構造の分析を行っています。統計データやGIS(地理情報システム)を用いてデータを地図化しながら、時代による変化をとらえています。特に注目しているのは、住宅や居住者の職業の空間的なパターンです。
地図で社会問題を“可視化”する
私が行った研究のひとつに、保育園不足の問題を「地図化」するというものがあります。仮に自分が住んでいる市内に保育園の空きがあったとしても、そこが通勤のルートから大きく外れていたり、家から遠すぎたりすると実際には子どもを預けられません。これは距離という空間的な制約によって生じる問題で、いわば地理的な問題といえるわけです。そこで地域ごとの保育園数を地図上に色分けして表示していくと、どの地域に保育園が少なくて不便かということが一目で分かり、その結果、主にどの地域で対策を立てれば効果的なのかということが明確になります。
私たちは誰もが「時間」と「空間」のなかで生きていて、それによってさまざまな制約を受けています。そのため一般的には地理と結びつかないように思われている問題であっても地図で“可視化”すると、意外な発見があったり、あたり前と思っていた見方が変化したりすることがあります。このように多様な問題を「空間」という切り口から見ていく学問、それが「地理学」であり、地図はそれを読み解くためのフォーマットです。ある意味では「地理学」を学ぶための言語ともいえるのです。
地図の面白さ、そして可能性を知ってほしい
このように「地図化」というのは、地理を学ぶうえでの第一歩です。私はもともと地図が好きで、仕事でもたくさんの地図を見るのですが、どうやら学生さんたちはあまり地図を見ないし、見るといってもスマートフォンの地図くらいで、想像できる地図の種類も多くないようです。
そこで「地域と文化」の授業では、地図をキーワードに進めています。さまざまな地図を見てその種類や表現を学び、簡単なデザイン・作成の演習なども行います。それによって地図に対するイメージを変え、理解を深めることが目的です。国際地図学協会のMap Carte(マップカルテ)というさまざまな種類の地図が紹介されているブログのなかから、面白いと感じたものをひとつ選び、自分がどういうところに興味を持ったかということも含めて紹介するというレポート課題も出しました。路線図に興味を持つ学生もいたりして、とても面白かったです。
日本において、地図は絶対的に正しいものと思われがちですが、実際のところ地図は時代によっても違いますし、作った人の意図によっても違ってくるものです。たとえば戦争中のプロパガンダに地図が利用されることもありますし、世界情勢を反映させた風刺地図なども多く描かれています。一方で大航海時代後のヨーロッパの地図のなかには、芸術作品的な位置づけのものもあります。このように地図というのは奥深くて面白くて、美しいものでもあるのです。皆さんには授業を通してそのことを学び、地図の可能性を知ってもらいたいと思っています。
Photos
地域課題
SDGs・地域課題について