Nakai Kunio

中井 邦夫 教授

所属
建築学部
建築学科(建築学系/都市生活学系)
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専門分野

建築意匠、建築設計、建築計画

キーワード

Profile

血液型/A型
出身地/兵庫県神戸市
家族構成/妻と長男
趣味/旅行、街歩き
尊敬する人/親、恩師、諸先輩
愛読書/60~70年代の建築書
休日の過ごし方/読書、散歩
好きな映画/イタリアのネオレアリズモ映画、姫田忠義の記録映画、小津、キューブリック
好きな音楽/ストラビンスキー、タヴナー、林光

建築を学ぶ学生には、空間を読む力や体系づける思考方法など、 “建築を語る言葉”を学び、話せるようになって欲しい。

建築はいろいろな分野がある懐の深い学問

神大の建築学科では1年次の後期から、建築設計および製図の基礎的技術の習得を目標とした「設計製図Ⅰ」の授業があります。1年次はほとんど一般教養系の科目で、こうした専門的な授業が始まるのは2年次になってからという大学も多いのですが、本学では実践的な授業を早めにスタートしています。
建築学には、計画や設計、歴史といった分野や、耐震構造、防災などを扱う分野、温熱や音響などの目に見えない環境を取り扱う分野なども含まれており、実はとても幅広い学問です。最近はエコ住宅や耐震構造などに興味を持つエンジニア志望の学生も増えてきていますが、現実の建築行為は、これらの多様な分野の知識を総動員し、ひとつの建物にまとめる作業です。そして大学の授業で、これに最も近い過程を体験するのが、いわゆる「設計製図」なのです。したがってこの授業では、実際に建築図面を描いたり模型をつくったりします。細かいうえに時間がかかる作業ですが、いずれの分野にとっても基礎となる重要な必須科目です。本学では、こうした総合的な建築の知識を早く身に付けたうえで、2年次からは「デザイン」「構造」「環境」の3コースに分かれ、じっくりと専門分野にフォーカスして学べるようにしているのです。

建築を用途から捉えるか、それとも空間から捉えるか

製図の他に私が担当している「建築計画A」の授業では、「建築計画学」の基礎的知識について学びます。「建築計画学」は、第二次大戦後に日本で広く浸透した学問分野で、根本にあるのは“建築を生活から考える”という合理主義的な理念です。戦後、国土が焼け野原になってしまった日本では、住宅や小学校、病院など、とにかく早くたくさんの建築物を造らなければなりませんでした。そこで設計を効率化するために、まずは建物の用途を決めてリサーチや実験などを繰り返し、たとえば小学校の教室の面積はこれくらいがベストである、といったような結果をまとめてマニュアル化したのです。
戦後の復興期から高度成長期にかけて、この建築計画学は非常に役立ちましたし、現代でも重要な基礎知識のひとつとなっています。しかし都市問題や公害などが問題になりはじめた60年代頃から、建築計画学はそんなに万能なのか? むしろ建築の可能性をつぶしているのではないか? といった問い直しが起こりました。そこで見直されるようになったのが、建築の空間そのものへの関心です。私たちがある建物を体験したとき、その用途を知らなくても、「気持ち良い」とか「楽しい」と感じることがあります。それは、その空間自体が持っている何らかの“質”を感じているのです。とすれば、天井の高さや部屋のつながり、窓の向きなどといった「空間構成」にこそ、人々の気持ちや生活を豊かにする力が潜んでいるといえます。こうした視点に立つと、建築の設計は、用途ごとのマニュアルどおりに行うものではなく、多くの人が心地良いと感じる「空間構成」とその使い方の提案という、より創造的な行為になるのです。

「空間構成」は「建築を語る言葉」のようなもの

今後の日本社会では、新たに建築物を造るよりも、むしろ現在ある建物のリノベーションやリサイクルが増えていくでしょう。そこで必要になるのは、その建物がどのような空間構成なのかを読み解く力です。たとえばこれまで小学校として使っていた建物を別の用途で使うことになったとき、この建物はこういう造りなのでこんなことに使えますよ、という提案ができるかどうか。目の前の空間が何に向いているか、そこで何をしたら気持ちがいいかということを考えるためには、既成の用途にあわせて建物を造る建築計画学だけではなく、新しい使い方を喚起するような「空間構成」の理解力が求められるでしょう。
また、建築の世界というのは経済の影響を大きく受けるものです。たとえばワンルームマンションなどは経済性だけを優先させた建築物で、空間構成的にはもちろん、建築計画学の考え方からさえ離れています。このような建物が増え、都市環境が悪化する原因のひとつは、空間そのものを純粋に論じる言葉が欠如しているからではないでしょうか。建築物を用途論や経済論から語ることはよくありますが、その空間自体の在り方や役割については意外と語られていません。それは語るための言葉がないからなのです。私は建築の「空間構成」について考え、その視点から私たちが日々暮らしている環境を理解することが大切だと考えます。学生の皆さんにも、空間を思考する方法、いわば「建築を語る言葉」を身に付け、将来のあるべき世界を考える手立てにして欲しいと思っています。

[デザインコース]建築計画研究室

建築や都市空間を計画する上で新たな視点を発見する

人は、生まれてから一生を終えるまで、建築物とともに生活します。あらゆる人間の活動は、建築や都市がつくり出す空間なしには成立しないのです。では、それらの多様な活動を支える空間は、どのような豊かさを持つべきでしょうか。また、人々の生活が多様化し、持続的な都市環境が求められるなかで、私たちはどのような観点から空間を計画すべきなのでしょうか。 当研究室では、こうした問題について、実践的活動や事例分析に基づく体系的な理解を通じて考察し、論文や計画案としてまとめると同時に、建築や都市の空間を計画する上での新たな視点を発見する楽しさを学びます。学生の皆さんには、「建築を語る言葉」を身につけて、将来に役立てて欲しいと思っています。

Photos

  • 浅草・雷門の斜向いに計画した「浅草文化観光センター」設計競技入賞案の模型。ランタンを意識し、「街を照らす灯り」をイメージした24時間オープンのホールという提案。応募作全301点中、7点のなかに選ばれた

  • 「逗子市第一運動公園」設計競技次点案の図面。土のゾーン、学びのゾーン、水のゾーン、空のゾーン、緑のゾーン、という5つのゾーンとふたつの道からなる設計

  • 「浅草文化観光センター」設計コンペに入選した設計案

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