
Hou Ning
侯 寧 特別助教
Profile
出身地/中国大連市
趣味/水切り、VRアプリの開発
休日の過ごし方/登山、ランニング、水切り練習
VR技術を活用し、建築設計教育に革新を。
建築空間を仮想的に体感することが、より良い設計につながる
近年、スマートフォンの普及や手軽なVRゴーグルの登場により、仮想現実(VR)技術が私たちの身近なものになりつつあります。こうした技術を建築や環境設計の教育に活用し、より実感の伴う学びを提供できないか。そんな課題意識のもと、私は建築空間における心理評価や学習効果に焦点を当てた研究に取り組んでいます。
建築物に対する評価では、温熱環境や省エネルギーといった性能面はもちろんのこと、人々が建築空間を実際に利用する際の「居心地」や「満足感」といった主観的・心理的な側面も無視できません。そのため、没入型のVR空間で建築物や観光地を体験したときに生まれる感情や印象は、設計の質を評価する重要な手がかりになります。
こうしたVR技術の応用は、建築設計の教育にも大きな可能性を秘めています。設計図だけでは伝わりづらい空間の広がりやスケール感も、VRを通じて体感することで理解が格段に深まります。学生が自ら設計した空間をVRで再現し、「思ったより狭い」「家具の大きさが合わない」といった気づきを得ることができれば、図面上では見落とされがちな問題にも自発的に向き合えるようになります。こうしたプロセスが、より良い設計へとつながっていくのです。
従来のヘッドマウントディスプレイは高価で導入が難しい一方、スマートフォンを活用すれば、より手軽かつ低コストにVR体験を提供できます。これにより、授業での大規模な活用も現実的になります。将来的には教育現場でより本格的に導入できるよう、専用のアプリケーション開発にも取り組んでいます。
例えば、一般的に「建築史」などの授業では、建築物の構法や特徴などの知識を、紙媒体の資料やスライドを使用して学習することが多く、学生が内容を実感しづらいという課題があると思っています。こうした授業でも、VR技術を活用して歴史的建造物を仮想空間で体感できれば、空間やスケール感への理解が深まるだけでなく、興味を持って学べるようになります。まるで旅行しながら学ぶような体験型の授業は、建築の本質に迫る実感を学生にもたらすのではないかと期待しています。
AI時代にも求められる論理的思考力を身につけてほしい
現代は、AIをはじめとする最先端テクノロジーが日進月歩で発展する時代です。建築業界でもAIの導入が急速に進められており、今後は設計・施工・評価のあらゆるプロセスで最先端技術を活用する力が求められるようになるでしょう。しかし、AIを単に使うだけでは不十分であり、それを「どう活かすか」を考える人間の思考力こそが鍵を握ります。だからこそ私は、建築教育においても論理的思考力の育成が不可欠だと考えています。
そのための訓練の場として重要なのが、卒業論文などの研究活動です。研究テーマは必ずしも将来の仕事と直接関係するわけではありませんが、課題を発見し、仮説を立て、論理的に検証していく一連のプロセスは、どんな分野に進んでも通用する思考力を養う貴重な機会です。学生には、自らの関心や疑問を掘り下げることで、物事を多角的に捉える力を培ってほしいと思っています。
また、目標を達成するためにどのようなリソースが必要か、どのような方法でアプローチすべきかといった問いに対し、筋道立てて考える力は、社会でチームとして働く場面でも役立ちます。大学の4年間を通じて、常に新しい技術・知識を積極的に学習・活用する姿勢を身につけ、ぜひ社会で通用する力を手に入れてほしいと思います。

[環境コース]建築環境・設備研究室
省エネルギーかつ快適な建築環境・設備をつくる
内部で過ごす人にとって快適で健康的な環境を実現しつつ、地球環境への負荷を抑えた建築の普及が求められています。高い環境性能を有する建築が、適切に評価されれば、その普及にもつながると考えられます。建物の性能をよくするとどのくらい快適になるのか、効率の高い設備に交換するとどの程度のエネルギーや光熱費の削減が達成されるのか、などを主に計算により定量的に評価して表現する方法を研究しています。 一方、近年、スマートフォン(スマホ)の普及とスマホ型VR(仮想現実)ゴーグルの開発により、環境評価の場面へのVR技術の活用が容易になってきています。これを背景に、環境に対する心理評価の取得や建築・環境設計教育の支援ツールとしてVR技術を位置づけ、その応用可能性を検討する研究に取り組んでいます。
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