Takahashi Jutaro
高橋 寿太郎 大学実務家教授
Profile
出身地/大阪府大阪市
尊敬する人/安藤忠雄
趣味/育児
休日の過ごし方/息子と過ごす
好きな映画/90年代のアジア映画
建築と不動産の“あいだ”に立ち 持続可能な建築・地域のあり方を探る
建築学科で不動産の視点「所有権」「お金」を学ぶ
私の研究は日本でも数少ない、建築と不動産の“あいだ”をフィールドとしています。そう言われてもピンとこない人が多いかもしれません。それは当然で、本来、建築と不動産は同じ分野であるはずが、業界や商習慣、学問体系の違いによって分けられているだけだからです。この違いによって、建築家には建物の「所有権(所有者)」や建築にまつわる「お金」の視点が抜け落ちてしまっています。建築産業全体を考えても所有者の存在は不可欠で、お金も家を建てるにあたって人と人のネットワークをつなげる血液のようなものであり、人の「思い」と同義の重要な要素なのです。そして、この視点を補うのが不動産の知識というわけです。他方、空間的に物事を配置しながら考える力や、デザイン的発想は建築家ならではのもの。建築と不動産のあいだを考えることは、建築家の思考力・発想力とお金や人と人のネットワークを含めた経営的な視点を併せ持つ「デザインマネジメント」の力を養うことでもあります。
この研究の目指す先にあるのは、持続可能性の実現です。例えば、日本の空き家問題。現状の建物の多くが企業や個人の短期的な利益のために建てられていることが原因のひとつにあります。課題は、いかに持続可能な建物の設計やまちづくりに取り組むか。そこで求められるのが、20年、30年先の私たちや地域社会にとって本当に必要なものは何かを考えられる、建築とお金、人と人のネットワークを含んだ俯瞰的な視点を持つ人材なのです。
私自身、大学で建築を学び、建築家として7年ほど設計事務所で働きました。その後、縁あって不動産会社に転職したのですが、そこで働く人々と建築家とのあいだに大きな意識の隔たりがあると気付いたのです。以来、創造系不動産株式会社を設立し、2つの業界がタッグを組むにはどうすればいいのかを考え続けてきました。大学では、この実践を研究活動につなげ、建築や地域の持続可能性について考えていきたいと思っています。
地域コミュニティの課題解決につながる学び
担当する「デザイン系不動産学基礎」、「建築不動産学特論」の授業では、私が執筆に参加した『建築学科のための不動産学基礎』というテキストを使用します。これまで建築学で触れられてこなかった不動産の売り買いの仕組み、ライフプランの立て方、シェアリングエコノミーなど経済学的な内容も学ぶことができます。
また、みなさんは「コミュニティマネジャー」という新しい職業を知っていますか? コミュニケーションを活性化させる専門家で、今、企業のオフィスや地域社会の中で求められています。こうした人材が地域のコミュニティを語るうえで欠かせないのが、建築や不動産の知識。「ローカル不動産学特論」では、建築やまちづくりを通した地域社会のあり方についてフィールドワークを通して学びます。所有権やお金といった不動産の観点からアプローチすることで、より高い質と量で地域の人々とコミュニケーションをとりながら空き家問題などの課題解決に取り組むことを目指しています。
各地域に出向くたびに実感するのが、建築と不動産のあいだに立つ人材がとても必要とされているということ。地域コミュニティに関心のある学生には、授業を通して、将来地域で活躍できる人材に育ってほしいと思っています。
[まち再生コース]不動産デザイン研究室
建築と不動産のあいだを追究し、社会課題をデザインで解決する。
建築学と不動産学の架け橋となるこの研究室は、これまでの建築デザインやまちづくりの領域に、不動産やマーケティング・ファイナンスの知識を導入するという、日本でも新しい取り組みを行います。 世界各国と比較すると、日本はこれまで新しい建物を大量に作ってきました。それは同時に、大量に建物を壊してきたとも言えます。そして壊しきれない空き家が余っているという、無駄の多い状態であることは否めません。そうした建てれば良い時代は終わり、いかに持続可能な建築やまちの在り方を考えるためには、自然と不動産という分野に真摯に向き合う必要があるのです。
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地域課題
SDGs・地域課題について