Tachibana Mio
立花 美緒 准教授
Profile
出身地/東京都
趣味/旅行、テニス
好きな音楽/協奏曲
好きな食べ物/魚、焼き林檎
リサーチとデザインで建築の可能性を追求する。
「廊下のない学校」―設計と研究の往還
私は、住宅や集合住宅、学校建築といった建物の設計や計画を行っています。学校といえば皆さんはどんな校舎をイメージするでしょうか? 細長い廊下に教室が横にずらっと並んでいる。日本ではそうした校舎が一般的ですが、私は以前勤務していた設計事務所で「廊下のない学校」を設計したことがありました。移動のための廊下をなくして、その代わりに、学生や教員、地域住民が滞在できるラウンジや中庭を設ける提案です。
その時は廊下には旧来的な学校のイメージがあり、それを取り除いた「廊下がない学校」に可能性を感じた一方で、学校から廊下をなくすということがなぜ重要なのか、位置けをすることができる知識を持ち合わせていませんでした。
その後、大学に戻って学校建築を研究し始め、資料を集めるなかで驚いたのは、海外には「廊下のない学校」がいくつもあったことです。中でも建物のなかに大きな広場がある校舎が気になったので、ヨーロッパへ調査に行きました。その内部広場は、子どもたちや教員が日常を過ごす居場所や学ぶ場であるとともに、選挙の前後には政治家をゲストに呼んだ討論会や、コンサート、パーティーといった生徒たちが自分で企画したイベントやその準備がなされていました。誰にも専有されておらず、思いついた時、ちょっとした休み時間や放課後に、学年や立場に関係なく、誰でも自由に使える場所があるということは、子どもたちの自律的な活動を支える上で、とても大事なことなのだと気づきました。
研究室では、このような学校建築や国内外の住宅、集合住宅の研究をしています。建築が実際にどのように使われているのか観察調査やヒアリングをし、得られた知見をもとに、日本で実際の建築の設計や計画に取り組んでいます。
革新的なアイデアの源は協働と過去の建築からの学び
私たちの研究室では、建築や住宅に関して専門性を高めるとともに、他者と協力しながら自ら学ぶ力を育むことを重視しています。私が一方的に何かを教えるというよりは、一緒に学び、対話を通じて考えていきたいと思っています。
建築の仕事はひとりでできるものではなく、いろいろな人と協働して進められるものです。現代は変化が加速する複雑で曖昧な時代だと言われています。学生の皆さんが社会人となり働く頃には、現在では想定もしていない新しい課題や変化が生じているかもしれません。私たちの研究室では、専門性を身につけるとともに、他の人とアイデアを出し合い協働し、新しい課題に対して提案する力を養うことを重視しています。
高校生のなかには、建築という分野に対して、デザインや芸術的感性といった才能が自分にあるかどうかわからないという不安を感じる人もいるかもしれません。もちろん好き嫌いや相性はありますし、高校までのさまざまな体験や学びが全く関係ないとも言えませんが、大学入学後に、多くの建築を見て学ぶ中で、磨くことができる部分がとても大きいことも事実だと思います。
ゼロから全て発想しなければならないと気負うと、自分に才能があるか不安になりますが、建築には長い歴史があるので、気候風土や暮らしとともに蓄積されてきた知恵から学べるところは学んで取り入れれば良い、と考えれば、少しは気が楽になりませんか。設計した「蝶番の家」では、木造在来構法の良いところは尊重した上で、現代的な暮らしの要請に対応するために、新しい構法を提案しました。授業でも伝統的住居や集落から学び、それらの現代性について考えています。建築には、知識を得れば得るほど固定観念から離れて自由に提案ができる、というところがあるように思います。
[住生活創造コース]居住環境デザイン研究室
豊かな暮らしを支える住宅を、実践的に提案する
コロナ禍で、リモートワークやワーケーションといったように、住まいと仕事の関係や暮らしの価値観は大きく変容しています。このような社会的背景と居住環境の関係を現在と過去から学び、未来の豊かな暮らしを支える住宅を実践的に提案する研究室です。近現代の住宅と集合住宅、国内外の集落、生産と消費を再縫合する暮らしなどについて、文献とフィールドワークでリサーチし、地域社会に貢献する建築とインテリアをデザインします。
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