
Kodera Naoyuki
小寺 直幸 特別助手
Profile
出身地/福井県
子供の頃の夢/建築士
尊敬する人/エンジニア
趣味/スノーボード、自然散策
休日の過ごし方/子供と遊ぶ、ドライブ
好きな音楽/邦楽ロック全般
好きなTV番組/『有吉くんの正直さんぽ』
好きな映画/『インセプション』
好きな食べ物/お刺身、親子丼
ディテールまでこだわった研究により、実務で利用しやすい構造技術を提案する。
座屈拘束ブレースとその接合部をディテールまで考えて研究
「座屈拘束ブレース」は、軸方向力を伝達する芯材の外周を拘束材(モルタルを充填した溝形鋼など)で補強した部材です。このブレースは引張・圧縮の両方向で安定した耐力を発揮できるのが特徴で、建物に地震エネルギー吸収部材(制振ブレース)として用いることで、柱・梁(主架構)の損傷を最小限に留める設計が可能となります。
私は、座屈拘束ブレースに関してディテールまでこだわった研究を進めています。その研究例の1つは、部材製作ディテールまで考慮した構造性能の把握です。座屈拘束ブレースの構造性能に影響する要素の1つに、芯材と拘束材の間に設けるクリアランス(隙間)があります。クリアランスが小さいと、拘束材内で芯材の座屈モードが正しく形成されずに部材全体で座屈する現象が発生してしまい、逆に大きいと局部的な座屈が生じてしまいます。いずれも急激な耐力低下を引き起こす破壊現象のため、適切なクリアランスを確保することが必要です。しかし、クリアランスを確保するための方法は各製作業者で様々で、クリアランス確保に用いた材料やその配置方法は構造性能に影響する場合があります。構造設計者は設計だけでなく現場施工(監理)に関与して、構造部材の品質確保に責任を持ちます。前述したような製作ディテールを確認できないと、安心してその部材を使うことができません。私は、簡易な製作方法・明快な管理方法を意識して、作りやすい・使いやすい座屈拘束ブレースの実験的研究を進めています。
2つ目は、柱梁との接合部ディテールです。座屈拘束ブレースは、柱梁に溶接されたガセットプレート(接合用の鋼板)と高力ボルトで接合することが一般的です。近年では要求事項の多様化・高度化により、この接合部の設計が複雑化しています。私は前職で構造設計の仕事をしていましたが、製作上・施工上など様々な理由によって、理想の接合部ディテールで設計できるケースは稀でした。実務では検討できる時間が限られています。既往知見を参考にして、『これが最適解なのか』と自問自答しながらディテールを決定していました。私が構造設計から研究の道に戻った理由の1つは、このような実務で直面した課題を自分で解決したかったからです。私は、実務者が容易に活用できる接合部ディテールについて、実験と解析を通して研究を進めています。
建物の施工方法、部材の取合い(納まり)をよく観察してほしい
研究や授業を通じて学生の皆さんに伝えたいのは、建物の施工方法、部材の取合い(納まり)を知ることの大切さです。今日の建築設計実務では、意匠設計者が顧客との窓口かつ総合的なまとめ役となることが一般的です。構造設計者は構造部材の配置や断面サイズを、設備設計者は機器選定や設備スペースを意匠設計者に提示し、随時調整しながら工程を進めていきます。このとき、現場施工や納まりに関する知識が全くない状態で調整を進めると現実離れした設計となる可能性があります。すると現場着工後に設計変更が必要となり、大きな手戻りが生じます。最悪の場合、顧客の要求事項を満たせなかったり、工期延長で莫大な費用がかかることになりかねません。建築の仕事をする上では、どの専門分野でも現場施工を知ることはとても重要です。「鉄骨梁はトラックに載せて運搬するため、継手位置は柱芯から1200mm程度が一般的。継手部分はボルトやプレートがあって設備用の貫通孔を設けられないため、配管ルートを詳細検討しよう」、「乾式の外壁や内壁は、支持するために耐風梁(中間梁)や鉄骨下地材が必須。耐風梁や鉄骨下地材を設けるためには、さらに間柱やガセットプレートも必要。これらの部材を考えて空間デザインしよう」など、現場施工を少し知っていれば設計時から配慮できるものが多いです。学生の皆さんには、工事現場などで建物が出来上がるまでの過程を、建物見学する場合はデザインをみるだけでなく、仕上げ材や部材の取合いをよく観察してほしいと思います。
色々な人と関わる経験をして、「バランス感覚」を身につけよう
授業以外の大学生活では、色々な人と関わる経験をして、社会に出る準備をしてほしいと思います。勉強・研究に励むのはもちろん、例えばアルバイトやサークルを通じて価値観の異なる人とも関わってください。私は、勉強や研究に励み、接客アルバイトで仕事の基本を学びながら、サークルで共通の趣味をもつ友人達と交流する大学生活を送っていました。色々な場で、色々な人と関わることで、視野の広さや柔軟性、状況判断能力が自ずと養われて、社会で生き抜くために必要な「バランス感覚」が身に付いたと思っています。私が建設会社で構造設計、研究開発の業務を円滑に進めることができたのは、こうした様々な経験のお陰だと思います。趣味や遊びの場でも良いので、皆さんも是非、色々な人と関わってください。

サステナブル構造研究室
鋼構造建物の安全性と長寿命化を考える。
当研究室は、建築構造を総合的に捉える構工法から、分析的に捉える実験と解析、さらにそれらを実現する設計法まで、全般にわたる研究を行っています。時代ニーズの多様化に伴い、建物は強・用・美の要求性能を満たすだけでなく、「地球環境」に配慮する必要があります。地球環境問題への鋼構造分野の対応として、座屈拘束ブレースに、部材リユース、鋼木質複合構造などの研究テーマを展開し、得られた研究成果を実際の建物に適用することも実践しています。また、学外の研究機関や大学、企業など様々な分野の方々との交流、共同研究などを積極的に取り入れています。常に社会と連携しつつ、研究活動を充実させていくことを目指しています。
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地域課題
SDGs・地域課題について