Liu Jinyu
劉 金雨 特別助教
Profile
出身地/中国・北京
尊敬する人/両親、恩師、諸先輩、他にもたくさん
愛読書/唐詩・宋詞(蘇軾が一番好き)、『若草物語』
趣味/読書、サイクリング、温泉
好きな音楽バンド/The Beatles、Linkin Park、Beyond
好きなTV番組/『ドキュメント72時間』、『ツール・ド・フランス』、『いろはに千鳥』
建築から騒音問題にアプローチし、「音環境」の改善をめざす。
建築の遮音性能を高め、快適な音環境をつくる
研究対象としているのは、建築における「音環境」です。人々の生活を取り囲むあらゆる音の中で、聞いて好ましくない音は騒音と呼ばれます。外部の騒音が建物内部に伝わるのを抑えることで室内の音環境性能を高める。このような社会的要求はますます強まっています。一方、近年、特に風車施設や家庭用の設備機器を発生源とした低周波音に対する苦情が急増しており、これは一部の地域の問題から範囲で身近な問題へと移りつつあります。例えば、室外のヒートポンプ式給湯器の運転音が気になって集中力を削がれたり、深夜に睡眠の妨げになったりした経験がある人もいるのではないでしょうか。
一方、日本に多く存在する木造住宅は、外周壁が比較的軽量であるため、遮音性能の確保が難しいという課題を抱えています。こうした背景を踏まえ、木造建築の外周壁に使用される部材を精査し、遮音性能を高め、室内の音環境改善をめざすことが私の研究の目標です。すべての居住者にとって快適な音環境づくりに向けて、建物の遮音性能の測定・評価方法、遮音性能の改善に貢献したいと考えています。
以上の課題を研究するためには、実際に木造軸組工法の構造を再現し、外壁や窓の重量化、換気口の有無、室内吸音など、さまざまな条件を設定しながら遮音性能を調査する必要があります。例えば、音の入り口となる窓の遮音性能について測定する際は、窓そのものを何度も違うものに取り替え、条件ごとに実験を繰り返さなければなりません。また、微小な隙間や測定誤差も結果に大きな影響を与えるため、非常に慎重な作業が求められます。そのため、私ひとりでは成し遂げられない実験が多く、学生や共同研究者の方々の協力を得ながら取り組んでいます。このように、単にデータを扱うだけではなく、実物の建築に触れながら研究できるリアルな“手触り感”こそが、この研究の醍醐味の一つだと感じています。
学生時代のチャレンジに失敗はない
私は中国・北京の大学院で修士課程を修了し、その後、北京にある科学研究機関で働いていました。当時従事していたのは、電車や新幹線による振動や音について、発生源から周辺の家屋内部に至る経路とその影響を調査し、音源系・屋外伝搬系・建物系の各部分に対して低減対策を提示する仕事でした。その過程で、騒音問題が深刻であることを実感するとともに、現状の対策には限界があると考えるようになりました。そこで、家屋側からアプローチして問題を解決したいと思い、建築の音環境分野の研究が進んでいる日本に留学することを決意しました。
現在は自分の研究に取り組むと同時に、建築学部の2、3年生の授業を他の教員と分担して受け持っています。主に担当しているのは、建築の音環境・光環境に関する演習や実験です。音環境では、残響時間などの室内音響指標や建築部材の遮音性能の測定、光環境では、建物の日影時間や照明器具の照度計算などといった内容を教えています。建築分野に強い興味を持つ学生であっても、音や光といった環境面まで意識している人は少なく、皆さん新鮮な気持ちで学びを深めてくれています。ここで学んだ知識を将来に活かし、快適な音環境・光環境を考慮した建築設計や技術開発を担う人材になってほしいと考えています。
研究や勉強に真剣に取り組んでいると、時には落ち込むこともあるでしょう。私自身も、慣れない実験や新たな知識の勉強が続く中で、辛さを感じたことがありました。しかし、学生時代のチャレンジに「失敗」というものはないと考えています。自分が本当にやりたいことを見つけ、そこで失敗したとしても、落ち込まずに目の前の課題の解決をめざすことが大切です。学生の皆さんには、そうしたたくましい心を育ててほしいと願っています。
[環境コース]音・光環境研究室
建築の遮音性能を高め、居住者に快適な音環境をつくる
研究室には学部4年生10名程度と大学院生数名が所属しており、知識の習得や研究に関する議論を通じて、日々互いにサポートし合っています。また、研究室の企画や学会発表などのイベントもあります。研究室のメンバーは、勉強や研究に加え、将来のキャリアに関する相談も交えながら、充実した大学生活を送り、助け合いの精神で共に成長しています。
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