Takayanagi Tomohiko

高柳 友彦 准教授

所属
経済学部
経済学科
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専門分野

近現代日本の資源管理

キーワード

Profile

出身地/東京都
子供の頃の夢/実業家
休日の過ごし方/子供のサッカーの付き添い
好きな食べ物/かに、みかん

人々の生活が息づく「温泉地」をテーマに、地域の経済や歴史を研究する。

経済学の研究対象だった温泉地が、いつしか専門分野に

修学旅行や家族旅行で温泉地を訪れたことはありますか? 浴衣を着て温泉街を巡ったり、現地の名産品を味わったりした経験がある人は多いかもしれません。私の研究では、こうした日本の温泉地を事例として、近現代日本における資源利用・資源管理と地域発展との関わりを明らかにしています。人々の心身を癒す温泉は、非常に優れた観光資源になります。温泉が湧き出る土地であれば、地面をたくさん掘るほど地域が活性化するはずだという考えが浮かぶでしょう。しかし実際には、温泉は限られた資源であり、過剰に掘ると既存の温泉の湧出量が減少してしまいます。ここで重要になるのが、経済学な理論に基づく適切な管理です。私は資源管理の視点から、温泉地の歴史を紐解いてきました。

また、人々が温泉を楽しむというスタイル、つまり温泉地を旅行するというレジャーがいつごろから登場し、余暇の過ごし方のひとつとして定着したのか。温泉地が旅行先として、観光遊興の場として選ばれるようになった歴史的背景や過程についても研究テーマとしています。温泉地の観光客数は、交通インフラの発達とともに増加してきた歴史があります。特に熱海の場合、交通網の整った1970年代に観光客数がピークを迎え、その後は減少。バブル期に少し回復し、再び減少傾向となりました。観光客数が減少した背景には、レジャーの多様化が考えられます。遠く離れた温泉地まで行かなくても遊べる場所が増え、同時に、都会でもサウナやスーパー銭湯といった施設が気軽に楽しめるようになりました。ところが、2010年ごろからはインバウンドなどの影響を受け、温泉地の観光客数はV字回復を見せています。

こうした研究を続けているうちに、近年では熱海をよく知る研究者としてメディアに出演する機会が増えました。もともとは経済研究のテーマとして選んだ温泉地でしたが、やがてその歴史的な研究にも着手し、現在では温泉自体の専門家になったのです。これは私も予想していなかったことでしたが、研究者として大切にしてきた考えが反映されているようにも感じています。それは、大きな経済の動きだけでなく、人々の生業や生活に焦点を当てるということ。経済は実在する人々や企業によって形成されるものです。理論的に分析することも重要ですが、それ以上に人々がつくってきた歴史的な事実を重視する姿勢が求められます。経済学的な理論と事実が異なっていたとしても、事実のほうが誤りだということはありません。私自身、現在でも実際の現場を知るために、年に何度も日本中の温泉地を訪ねています。

温泉地が抱える多様な課題へのアプローチをめざす

授業でも歴史的事実を重視しており、経済学の基本的な概念や考え方を通じて、歴史上の経済事象を理解してもらっています。具体的には、これまでの経済成長の歴史、市場経済の歴史、経済と宗教との関連、経済発展と制度との関わりといった内容ですね。ゼミでは、観光をテーマに研究を進めたいと考えています。単に観光客を増やす方法だけでなく、温泉地が抱える人口減少や生活保護率の高さといった地域の課題にも焦点を当てていくことが目標です。

私は幼少期から鉄道や地理、歴史に興味を持っていました。大学では経済学部に進学し、一時は司法試験の勉強もしましたが、最終的に大学院に進学して現在の研究テーマを深めることに。法律の本よりも、歴史の本を読む方が楽しく感じたのです(笑)。こうした経緯が、経済の枠を飛び越えて研究に取り組む現在のスタイルを培ってくれました。

そこで学生の皆さんにも、本をたくさん読み、自分で考える経験を積むことを大事にしてほしいと考えています。複雑化する現代社会の問題を解決するためには、読書などで歴史を知り、日本や世界の現状を相対化する眼を養うことが不可欠です。同時に、大量に溢れかえる情報や知識に流されない力も育んでもらいたい。これらの力を身につければ、自ら物事を深く考える社会人として活躍できると思います。

高柳ゼミナール

観光から見る地域の経済と歴史

学生には、複雑化する現代社会の諸問題を解決するためにも、歴史研究を通して、日本や世界の現状を相対化する眼を養ってもらいたいと考えています。そのためにも、現状の日本経済や経済史について幅広い関心を持ってもらう一方、大量にあふれる情報や知識に流されない力(能力)を大学時代に身につけ卒業してほしいと思います。周りの情報に流されない洞察力を身につけてもらうために、日本経済史の知識や情報を伝えるだけでなく、自分の生活や住む地域との関わりを考えながら、地域経済のあり方や歴史に関心を持てるように、資料取集やフィールド調査の方法など自分で資料収集ができる力を養います。そして、自分が関心を持ったテーマについての実証論文(卒業論文)の執筆がゼミ活動の中心になります。

Photos

  • 『温泉の経済史―近代日本の地域経済と資源管理』と『近現代日本の温泉旅行』。これまでの自分の研究成果をまとめた著書です

  • 上記の研究を行う際にも利用した、ホテルや温泉地、観光地のパンフレットです。いまではインターネットで旅行の情報を手に入れられますが、昭和の時代には印刷したパンフレットが広く普及していました。昔の旅行や観光地の雰囲気がよくわかる資料です

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