私が担当する「経済学」は教養科目で、経済学の基礎的な内容を講義しています。経済学を専攻しない学生や初学者にも、興味を持ってもらえるような講義を心がけています。ニュースや身近な話題を取り上げ、経済学の考え方と現実のつながりを感じてもらえるよう意識しています。講義では消費者と企業の行動や、両者が市場でどのように取引するのかを理解することを通し、市場の機能やその限界などの経済学における重要な論点を理解することを目指します。
私がこうして経済学に携わっているのも、初めて受けた教養科目の経済学の講義がきっかけでした。自分が教える立場になった今、学生たちに「経済学って面白い」と思ってもらえる授業を行うことが目標です。

研究テーマは「産業組織論」です。なかでも「ゲーム理論」という複数の主体による意思決定における戦略的な関係を分析する手法を、企業行動に応用する研究を行っています。
例えば、隣り合ったガソリンスタンド同士による価格競争において、ライバル店の価格設定を無視して高い価格をつけると、自社の顧客をライバル店に奪われてしまうことは想像に難くないでしょう。このようにお互いの行動が影響を及ぼしあう状況を「戦略的な状況」といい、こうした場面での企業行動を理解する時にゲーム理論が有用になります。
ガソリンスタンドの例では、お互いの行動を考慮して価格を決めるので、結果として激しい価格の引き下げ競争に陥ります。ガソリンが安く買えることは消費者にとっては望ましいことですが、店にとってはそうではありません。そこで、ガソリンスタンドはさまざまな形で競争を有利に進める方法を模索します。窓拭きや車両の点検などのサービスを提供し、ライバル店との差別化を図ったり、お客さんに自分で給油してもらうセルフサービスの給油機を導入して、コストカットを目指したりします。ポイントカードを発行して常連客になってもらうという方法もありますし、より長期的な視点に立って、激しい価格競争を避けて少し離れたところに出店するなど、立地による差別化も考えられます。
このように、ガソリンスタンドの例を一つとっても、価格設定にとどまらず、製品の差別化、コスト削減など様々な意思決定があり、ライバル企業の存在やその動向が重要になります。産業組織論ではこうした企業の直面するさまざまな戦略的な意思決定の問題を、ゲーム理論を応用して明らかにしていきます。

自分の学生時代を振り返ると、なんとなく過ごしていたため、あっという間に過ぎ去ってしまったように感じています。ですので、皆さんには自分が心の底から好きだと思えるものや大切だと思えるものを、大学生活を通して見つけることを勧めたいと思います。
現実は、マンガや映画のように鮮やかで変化に富んだ毎日が続くわけではありません。それどころか、同じことの繰り返しが大半です。少しでも毎日を楽しく過ごせる自分なりの方法を身につけることは自分の支えになります。自分の好きなことや大切なことを探そうと一生懸命になったとしても、それが見つけられる保証はありませんが、自分にとって大切な何かを探す時間さえ学生時代を逃してしまうとそう多くは残されていません。ですから、大学生活は自分の好きなこと、大切だと思えることを探すことのできる最後の時間だというくらいの気概で臨んでほしいです。