Yamaguchi Takahira
山口 高平 教授
- 所属
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情報学部
システム数理学科
- 関連リンク
- 専門分野
知能情報学、ヒューマンインタフェース、インタラクション、知能ロボティクス、Intelligent Informatics
- キーワード
Profile
出身地/大阪府
子供の頃の夢/『鉄腕アトム』に登場するお茶の水博士
尊敬する人/アラン・チューリング
愛読書/司馬遼太郎『竜馬がゆく』
趣味/旅行
休日の過ごし方/散歩
好きな音楽/アリス
好きなTV番組/NHK『プロジェクトX』
好きな映画/『マトリックス』、『サマーウォーズ』の仮想都市OZ
好きな著名人/桂枝雀(落語家)
好きな食べ物/明石焼き
個人に蓄えられた知識や経験をAIによって一般化し、 産業の現場で「本当に役に立つ」AIシステムを開発する。
作業ノウハウなどの暗黙知をAIの力で「共有の知」に
私は約40年間、産業の現場で利用できるAIシステムを研究開発してきました。例えば、高速道路におけるETCの設備点検作業を支援するAIシステムを開発しました。作業員はレンズが装着されたスマートグラスをかけ、作業に取り組む中で「この作業で注意することは?」などの質問をマイクに投げかけます。するとレンズには「ドアが重いのでしっかり力を入れて開けてください」といった回答が提示されます。このスマートグラスには、作業に関する質問に答えるためのAIシステムも搭載されているのです。
このAIシステムは「オントロジー」というAI技術によって構成されています。オントロジーとは、人間が使う言葉や概念を体系化し、コンピュータに言葉の意味を理解させるAI技術です。コンピュータが言葉の意味を理解できるように、概念を体系化するのです。
例えば、「カレー」という名詞であれば、「食べ物>料理>カレー」のように、一般概念から具体概念に詳細化できます。また、「食べる」という動詞であれば、「主語には生き物、目的語には食べ物がくる」と記述できます。このように、言葉の意味を定義していくと、「私は昨日、レストランでスプーンを食べました」という発言に対して、「スプーンは人工物であり、食べ物ではないので食べることはできません」とコンピュータが発言の誤りを指摘できるようになります。
設備点検という具体的な業務(タスク)で利用される言葉の集合をオントロジーとして記述し、利用したAIシステムが先ほどの作業支援システムです。最初は現場で使用されているマニュアルをもとに、一つひとつの作業の意味をコンピュータに理解させていきます。しかし、こうした業務の現場で特徴的なのは、個人の中に蓄えられた経験則や臨機応変的な対応など、言葉で表現されていない経験や知識=「暗黙知」が非常に多くあることです。そこで、それらを収集することによって、さまざまな産業分野における暗黙知を一般化し、共有の知にすることが私の研究目標になります。
交通インフラだけでなく、製造業、飲食店、教育現場、観光支援、事務処理支援、スポーツコーチ、医療診断など、これまで16分野の現場で利用可能な実践AIシステムの研究を行ってきました。研究において最も大事なことは、「業務の現場(ユーザ)がどんな技術を欲しているのか」を中心に考えることです。当たり前のように思えますが、研究者は「こんなすごいAI技術があるから、積極的に使ってください」と押し付けがちになります。しかしユーザは、最先端のAI技術よりも「業務がどれだけ楽になるか」の方に関心が強いのです。ユーザが「本当に役に立つ」と思えるシステムを開発するために、AI技術と現場の業務プロセスを擦り合わせる方法論を確立し、そのようなAI人材(AIプロデューサー)の育成を目指しています。
「21世紀の石油」はデータマイニングによって生まれる
私は『データマイニング』という授業を担当する予定です。データマイニングは最近よく取り上げられるデータサイエンスやビッグデータ処理の基盤に技術です。企業が持つビッグデータから有用なパターン・知識を発見し、マーケティング活動などのビジネスに役立てていく技術です。この授業では「データ前処理」「機械学習」「学習結果の後処理」という3工程からなるデータマイニングの手法を学びます。
ビジネス界では、「データは21世紀の石油」と言われることがあります。しかし、厳密に言うとデータは「原油」なんです。精製されてきれいな石油になる前の、いろいろな異物が混じり合ったものです。ですから、原油を石油に精製する過程と同じように、データも本当に使えるデータにするために、様々なデータ処理が必要で、これが「データ前処理」という工程です。機械学習のアルゴリズムを学ぶだけでなく、データ前処理技術を知ることで実践的なデータマイニングのスキルを身につけてほしいと思っています。
大学生活では、何かひとつでいいので、時間を忘れて夢中になれるものを持ってほしいと思います。昨今、素直な優等生が増えた一方、ちょっとした失敗ですぐに落ち込んでしまう学生が多くなったと感じています。既存の概念から逸脱して、おもしろいことを考えていきましょう。「勇気」を持って「はみ出し」ましょう。そこから日本の元気が生まれてくると思います。
実践知能システム研究室
AIシステムのできること・できないことを理解して、人と連携できるAIシステムを構築し、社会に貢献していく。
AIは、工学的には「人の知的な振る舞いを実行させるソフトウェア」という意味で、身体性を持つAIがAIロボットです。本研究室では、半世紀を超えて研究されてきたAI技術を学習した後、産業(製造業、交通インフラ、ロボットカフェ、教師ロボット連携授業、観光地推薦アプリ、事務処理アプリ、スポーツ戦術立案、グループ討論)×AIを通して、実践レベルのAI(実践知能)について学び、特に、言葉の意味をコンピュータに理解させるAI技術である「オントロジー&知識グラフ」に基づいて、対話・議論・討論できるAIシステムの実現を目指します。 AIの進歩は極めて速く、社会の仕組みも急激に変化しつつあります。例えば、20年前の映画『マトリックス』、10年前のアニメ映画『サマーウォーズ』の仮想都市OZなどで描かれたメタバースというSF世界が現実になる日も近いと考えられており、皆さんと一緒に「産業×AI×メタバース」を考えていければと思っています。
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