Wang Tiancheng

王 天澄 特別助教

所属
情報学部
システム数理学科
関連リンク
専門分野

通信工学、光工学、光量子科学

キーワード

Profile

出身地/中国・山東省
子供の頃の夢/科学者
尊敬する人/両親と恩師
愛読書/『三体』
趣味/サックス
休日の過ごし方/ドライブ、買い物
好きな音楽/「Jasmine Flower」「Going Home」(サックスの曲)
好きな食べ物/辛い料理、日本酒

「量子もつれ」を利用した通信技術で、大切な情報の流出を未然に防ぐ。

情報の信頼性と安全性を向上し、省エネにもつながる画期的な研究

高校時代からSF小説が好きでよく読んでいました。そういった作品にしばしば登場したのが、「量子コンピュータ」という見慣れない言葉……。これは一体どんなものなのだろうと疑問に思い、科学雑誌などを読んで知識を集めていた経験が、現在の研究につながっています。

私が専門としているのは「量子情報科学」です。名前を聞いただけでは難しそうだと思われるかもしれませんが、実はみなさんのすぐ近くでも役に立つ可能性を秘めた分野です。

例えば、みなさんの生活に欠かすことのできない存在となったWi-Fi。このWi-Fiに私の研究している「非対称型量子通信方式」という技術を用いれば、大切な情報が外部に漏れる危険性を減らすことができるかもしれません。情報を盗む手口として一番多いのは、スマホやパソコンといった電子デバイスとルーターとの間に盗聴者が潜み、通信中の情報を解析するケースです。しかし、非対称型量子通信方式では「量子もつれ」という現象を利用することで、このケースを未然に防ぐことができます。

「量子もつれ」とは、ふたつの粒子が強い相互関係にある状態を指し、この状態下で一方の粒子に何らかの操作をすると、もう一方の粒子にも効果が発生します。これを通信に応用すると、電子デバイスとルーターそれぞれに存在する、「量子もつれ」の関係にあるふたつの粒子がそろうことで初めて正確な情報を取り出すことができるようになり、送信側と受信側の食い違いがなくなることで情報の信頼性を高めることができます。また、一方から送られた粒子に途中で操作を加えると、もう一方の粒子が壊れ、情報が何の意味も成さなくなるので、情報の安全性も向上します。さらに、ルーター側にのみ電力エネルギーがかかる仕組みなので、電子デバイスの省エネルギーにつながる技術でもあります。現在は使用するための条件が複雑で用途が限られていますが、将来的にはメールなどの日常的な通信にもこの方式を使えるようにしたいと考えています。

「大胆に仮説、慎重に確認」が研究に成果をもたらす

私は主に「プログラミング演習」、「工学基礎演習」といった下級生向けの授業と、「工学特別演習」、「総合工学輪講」といった上級生向けの授業を担当しています。授業で大切にしているのは、学生の主体性を育てること。例えば、プログラミングの授業では、正解として模範的なプログラムの書き方を用意していますが、それとは異なる書き方をしても結果としては同じ動きになることがあります。実は、研究においてこうした経験は非常に重要で、学生にとって自由な発想の種になるものだと考えています。私の故郷である中国には「大胆に仮説、慎重に確認」という研究上の理念があります。突飛なものでもいいので独自の仮説を立て、それを着実に確認していく。そうして積み上げてきた経験や失敗の先に、大きな成果が待っているはずです。

こうした独自の発想力を鍛える手段のひとつが留学です。世の中には、長年同じ環境にいるとなかなか気づけないことがたくさんあります。日本では非常識とされていることが他国では当たり前に行われていることもあり、そうしたところに新しいアイデアのヒントが眠っています。高校を卒業後、単独で来日して大学に入り、博士課程まで進んだひとりの留学経験者として、大学在学中に一度留学してみることを強くおすすめします。

Photos

  • 愛用のYAMAHAアルトサクソフォンです。来日する前、3人の師匠に約10年間教わっていました。日本に来てからは吹くことが減りましたが、これから演奏する機会があるかもしれません

  • 留学生としてお世話になったロータリークラブから頂いた、ロータリー米山記念奨学生の修了証書です。ロータリアンたちの「奉仕の精神」は私に深い感銘を与え、人生にも大きく影響しました

SDGsの取組み

地域課題

SDGs・地域課題について

Recommend

他の先生もチェック!