Morokuma Takayuki

諸隈 崇幸 特別助教

所属
工学部
機械工学科
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専門分野

熱工学

キーワード

Profile

生年/1987年
出身地/神奈川県横浜市
子供の頃の夢/機械エンジニア
尊敬する人/両親、お世話になった先生方
愛読書/「表面張力の物理学」
趣味/ロードバイク、卓球、音楽鑑賞
休日の過ごし方/サイクリング
好きな音楽/The Ventures

90年以上も世界中で研究され、いまだに解明されていない 湯沸かしの研究に取り組んでいます。

沸騰時に出る気泡はなぜ合体するのか

「お湯が沸く、沸騰する」。この身近な現象が実は90年以上、世界中で研究されてきたにも関わらず、いまだに解明されていない部分があると聞いたら、驚くのではないでしょうか。私はその沸騰に関する研究のなかでも特に、「水が沸騰したときに出てくる気泡がどんなときに合体するのか」「発生した気泡に熱がどのように伝わっているのか」について研究しています。とはいえ色々と調べてもわからないことが多いので、今はいったん熱の要因を外して、常温の水を使って気泡の合体の研究をしています。具体的には、常温で水中に空気泡を発生させ、気泡同士がぶつかったときの気泡間の液膜の厚さをレーザーで測定するといったことに取り組んでいて、そこから沸騰で起こる気泡の研究に進めていきたいと思っています。
この研究が何の役に立つのかと思う方もいるかも知れませんが、沸騰現象は工業的には「冷却技術」として利用されている重要な現象です。私たちは普段、加熱することでお湯を沸かしますが、工業分野では様々な熱源が持つ大量の熱を奪い、そのエネルギーを利用することが求められています。そして、その熱を奪う能力の最も高い方法が沸騰になります。例えば、火力発電等の大型発電施設は、簡単に言えば熱源が持つエネルギーを使ってお湯を沸かし、発生した蒸気でタービンをまわして発電します。つまり熱源からすると沸騰によって熱を奪われて冷却されたことになります。
私たちの生活に欠かせないところで沸騰が利用されていることから、より安全に使うためにも、なぜ沸騰が起こるのか、熱がどう伝わっているのかという基礎的なことを少しでも解明して役立てたいと考えています。

イメージしにくい「流体」の考え方を、わかりやすく伝えたい

材料力学と流体力学を扱う2年生前期の「MデザインB」という授業で、「流体力学」を担当しています。この実習では、学生が実際に手を動かしながら考察していきます。例えば、筒に貯めた水がノズルから出ていく様子を観察したり、水平方向に水が放出されるときの速度や落下速度、到達点を、写真を撮影して調べたりします。また、水を最も遠くまで飛ばすにはノズルをどの角度にすればいいかを運動解析で割り出し、その結果を基に学生グループ同士で放水競技を行います。
ただし、この授業を受ける2年生前期の学生は、まだ流体力学を学んでいないので、知識のない状態でこの実習に取り組むことになります。そこでまずは「流体とはどういうものか」を体験してから、それを裏付けるように流体力学を学ぶことで、学生が流体を身近に感じ、その知識が定着しやすくなるのではないかと思います。私自身も本学の機械工学科出身で、在学時にこの授業を受けたのですが、数ある授業の中でもかなり印象に残っています。
流体は水や空気のような形がないものを対象とするため、固体として形が存在する材料などに比べて、どう扱えばいいかイメージしにくいという問題があります。そこで空間を小さく区切り、そこに入ってくる水と出ていく水の収支の差から考えるというような実験を通して、流体力学の基本になる流体の扱い方や考え方を、少しでも分かりやすく伝えるようにしています。
また複数の教員が各担当テーマを教える3年後期の「機械実験」では、「円柱に働く抗力」と「ディーゼルエンジンの指圧線図」を担当しています。「円柱に働く抗力」では流体力学の実験で、物体が移動するときに働く抵抗(抗力)を2つの測定方法で調べます。2つの異なる測定方法によって、どれほど結果が変わるのかを知ってもらい、測定の不確かさや精度を学んでもらうことが目的です。円柱の実験は流体を扱いますので、それがどのように実際の力となっているのかを理解してもらおうと努めています。一方、「ディーゼルエンジンの指圧線図」は熱力学の実験で、ディーゼルエンジンを燃焼させたときのエンジン内の圧力を測定し、指圧線図を作成します。また、エンジンの出力を変えるとどのように圧力が変化するかを測定して指圧線図にし、比較することも行います。この授業では、座学で学んだ熱機関がどういうものかを学生自身に体感してもらうことを大切にしています。

自分の興味あるものを通して学問を学ぼう

機械工学は、皆さんの想像以上に幅広い分野です。例えば、自動車やバイクをもっと速く、または快適に走らせたいと思えば、「原動機の仕組み(熱力学)」「車体にかかる空気抵抗(流体力学)」「振動騒音(機械力学)」「車体に使う材料(材料力学)」などをそれぞれ学ぶ必要があるでしょう。おいしい揚げ物を作りたいと思えば、最適な温度と時間を追求するために、食材の伝熱を考える熱力学が必要になるかもしれません。このように機械工学分野の学問は日常の色々なところで使われているので、一見、関わりがないようでも自分の趣味や興味とつながることもありますし、そこから研究に結びつくこともあるかもしれません。自分が興味を持ったことから学問を学ぶと、「もっと知りたいから調べてみよう」という気持ちが芽生え、より自分の力になると思います。
私自身は父親が機械エンジニアだったことから、大学入学当初は自分も機械エンジニアとなって企業で働くことをイメージしていました。しかし、この大学で沸騰の研究をしていた先生と出会い、研究内容と先生の人柄に惹かれて研究室に入り、沸騰の研究を続けて大学教員になるという、想像とはずいぶん違った道を進むことになりました。そういう意味では、大学とは何が起こるかわからない、誰と出会うかわからない面白い場所です。ぜひアンテナを張って、自分が興味の持てるものをたくさん見つけてください。

熱工学研究室

地球環境に優しいスターリングエンジンの実現へ

当研究室は熱に関する研究に取り組んでおり、なかでもスターリングエンジンの開発に注力しています。スターリングエンジンとは、シリンダ内の作動ガスが高温空間と低温空間の間を行き来する際に、加熱あるいは冷却されて発生する圧力の変化によって動力を生み出すエンジンです。 このエンジンには、どんな熱でも利用できるという特徴があり、ゴミや落ち葉、農業廃棄物、生物が出すメタンなども燃料にできます。まさに地球環境に優しいエンジンなのです。近年開発が進む燃料電池は耐久性が問われるのに対し、スターリングエンジンは長寿命の製品製造も可能。商品化が急がれます。大学院生や学部生の協力を得ながら、開発を推進していきたいです。

Photos

  • 愛用のコーヒーグッズ。ミルで豆を挽き、ケトルで湯を沸かして、日々、コーヒーブレイクを楽しんでいます。お気に入りの豆は、酸味が少なく苦みや甘みが強いブラジルのアマレロ種です

  • 書き味が滑らかで疲れにくいので、普段から万年筆を使っています。本学に着任する際、前任校の学生たちからもらったペリカン(左)、博士課程を終えたときに父が贈ってくれた中屋万年筆(中央)、自分で買ったパイロット(右)。インクも万年筆の色も大好きな青系統の色を主に使用しています

  • シリンダ壁から伝わる熱は、体積変化や作動ガスの流入流出によって高速に変化します。これを測定するための装置です。

SDGsの取組み

地域課題

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