Haramura Yoshihiko
原村 嘉彦 教授
Profile
出身地/熊本県
子供の頃の夢/発明家のような仕事に就きたいなぁと思っていた
環境にやさしいエンジンの開発を手掛けています。 いつの日か、家庭に1台このエンジンが使われるように。
廃熱を有効なエネルギーに変換するスターリングエンジン
私の研究は大きく二つ、どちらも熱に関する事柄で「沸騰限界熱流束機構の解明」と「スターリングエンジン」。後者は、主に地球温暖化問題からここ数年、再び注目されている分野です。それは、この開発が進めば石油の消費を大幅に減少させたり、さまざまなエネルギー資源を利用できるという利点があるからです。スターリングエンジンは、シリンダ内の作動ガスが高温空間と低温空間の間を行ったり来たりする際に発生する圧力の変化で出力を生み出す仕組みになっていて、作動ガスには通常、熱伝導率が良いヘリウムや水素が使われます。スターリングエンジンには二つの用途があります。一つはエンジンで電気を作りながら、排熱で湯沸かしや暖房をするシステム(コジェネレーションシステム)におけるエンジンです。このシステムは、温度の高低で異なる価値を持つという熱の特性を応用して省エネルギーを達成するもので、スターリングエンジンは、家庭など、小規模で低騒音が要求されるところに適しています。もう一つは、どんな熱でも利用できるという特長を生かし、今まで捨てられていた熱から電力を得るものです。ゴミ、落ち葉や農業廃棄物、また生物が出すメタンなどの発酵物質も、燃料として利用できます。その場合、金属の腐食を促す物質が燃焼の際に出てくるので、その影響をいかに抑えた吸熱部にするかが肝心です。
中国との共同研究で実用的なエンジン開発を目指す
スターリングエンジンは、もともとは19世紀初頭、スコットランドの機械好きなロバート・スターリングという牧師が開発したものです。当時、蒸気機関のボイラーが頻繁に爆発事故を起こし多くの死者を出していたことから、もっと安全なものをということから作られたといわれています。19世紀末にガソリンエンジンが登場するまでは家庭用電源などでそれなりのシェアを持っていたようです。
このエンジンに関する研究者は世界でも200人くらいの規模ですが、日本の場合特に、分野としてのマンパワー、資金力が欠けているように思います。なにしろこのエンジンに関する研究者は約30人ほどですから。けれど2011年頃から、中国がこのエンジンに興味を持つようになり、研究が進む可能性がでてきました。現在では北京の中国科学院(Chinese Academy of Sciences)と共同研究を行っています。メタンガスとソーラーパワーとをうまく組み合わせてエンジンを動かすというテーマで、実用的なエンジンの開発を目指しています。
せめぎあい、急がれる研究
実は今、スターリングエンジンは勝負の時期にさしかかっています。というのも現在、環境にやさしい燃料電池の開発も進められていて、十数年のうちには安定して使える製品として世の中に受け入れられると見込まれているからです。ただ、このスターリングエンジンは機械であって、何十年もの技術の積み重ねがあり、長寿命の製品を容易に作れます。一方、燃料電池は実用化されても、その後耐久性が問われていくもの。私も商品化できるエンジンの開発を、大学院生と学部生の協力のもとに進めています。
3.11以降、多様なエネルギーを使おうという意識は高まっていますので、ますます開発に力を注ぎたいですね。これからが正念場です。
熱工学研究室
地球環境に優しいスターリングエンジンの実現へ
当研究室は熱に関する研究に取り組んでおり、なかでもスターリングエンジンの開発に注力しています。スターリングエンジンとは、シリンダ内の作動ガスが高温空間と低温空間の間を行き来する際に、加熱あるいは冷却されて発生する圧力の変化によって動力を生み出すエンジンです。 このエンジンには、どんな熱でも利用できるという特徴があり、ゴミや落ち葉、農業廃棄物、生物が出すメタンなども燃料にできます。まさに地球環境に優しいエンジンなのです。近年開発が進む燃料電池は耐久性が問われるのに対し、スターリングエンジンは長寿命の製品製造も可能。商品化が急がれます。大学院生や学部生の協力を得ながら、開発を推進していきたいです。
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