Shinkai Hiroyuki
新海 浩之 教授
Profile
愛読書/たくさんありすぎて…
趣味/ハイキング、音楽鑑賞、読書
休日の過ごし方/愛犬と散歩
好きな音楽/何でも聴きますが、敢えてあげればバッハ以前の音楽とジャズ
刑事政策の実践的理解を通して、犯罪の原因・影響について共感的に理解してほしい。
個人を継続的に調査することで犯罪の原因・影響に迫る
「刑事政策」や「犯罪学」と聞いて、皆さんはどんなことを思い浮かべますか? 警察官が事件捜査を進め、あるいは知識・直観を駆使して、犯人を追い詰め、手錠をかける。報道やドラマで見る、そんな場面を想像するかもしれません。ドラマは犯人逮捕で終わりですが、刑事司法の手続はそこでは終わりません。同様の犯罪を行った人々はどのくらいいるのか、逮捕後の刑事手続過程や刑事施設(刑務所)でこの人が再び同じ犯罪を行わないようにどのように取り扱うべきなのか・・・。このように犯罪や犯罪者の取り扱いについて研究するのが刑事政策です。さらに、刑事政策を学ぶ時には、もうひとつの側面を考えることが大切です。それは「犯罪行為に及んでしまった人」の背景や原因、捕まったあとや出所したあとの人生について研究する「犯罪学」の分野です。多くの人は犯罪が発生した場合、犯人が逮捕されるまでは関心がありますが、そのあとは無関心なのが実情です。しかし、刑務所に入ったとしてもその多くはいずれ出てきます。ですから、なぜその人が罪を犯してしまったのか、そうしなかった人たちとの違いがどこにあるのかを考えることは、再犯の防止や犯罪の発生を減少させて安全な社会を作るために非常に重要になります。
私の主な研究は、犯罪行為に及んでしまう人や、そうでない人、犯罪をやめた人のライフコースを計量的的に調査していくことです。ライフコースとは、その人の人生のなかでどんな変化が起こったのかを長期にわたって記録した道のり(軌跡)と考えていいでしょう。その過程で犯罪行為に及んでしまう人の特性などが明らかになれば、具体的な政策としての対応が可能になります。例えば、離職してからの期間が長い人に犯罪の傾向が高まることがわかれば、職を無くさないような対策を講じることができますし、逆に薬物使用で捕まった人が同じ問題を抱える人たちが集まり相互理解や支援を行う自助グループに参加することで薬物から距離を置くことができたということがわかるかもしれません。もしかしたら、もっと前に犯罪から距離を置く生活を送るための支援も可能かも知れません。これは、法学だけではなく、社会学や心理学にも親和性のある研究分野ですね。個人を継続的に追跡調査するライフコースの研究(縦断研究)は海外では盛んに行われていますが、日本ではまだまだ実績が不足しています。そのため、私が研究を行うことで、犯罪学の縦断研究を日本に根付かせる一助になればと考えています。
異なる他者の存在を尊重できるように
私は大学の研究者になる前、法務省の刑事施設で働いていました。仕事に就き始めたころは、犯罪行為に及ぶ人たちは怖い人なんじゃないか、と偏見を持っていました。しかし、彼らと話をしていくなかで、罪を犯す人と犯さない人に大して違いはないことがわかってきました。ならばなぜ、彼らは刑務所にいて、私は社会にいるのか。そのことを深く研究したいと思い、刑事政策・犯罪学の研究者を志しました。
私のゼミでは、罪を犯す人も我々とさほど違いのない存在であることを理解すると同時に、どこに犯罪行為に及んでしまう原因があったのかを考えてもらうことを目標としています。今後は、薬物依存があった方などを招いて話を聞く機会をつくろうと考えています。日本の刑事司法においては違法薬物の使用は罰せられてしまいますが、一方でそれらに依存しているからこそ、何とか生きていける人もいるのです。学生の皆さんには、弱さを叩き直したり罰したりするだけでは解決しない問題が多くあることを知ってもらい、そのよう人たちへの眼差しを少しずつでも変化させてもらえたらと思います。初めはゼミという小規模な空間での変化であっても、積み重なることでいずれ社会ムードの変化にも寄与していく可能性があるのではないかと思います。
学生時代は、その時には気づけない特権性があります。自由に時間を使えて、多様な人と率直に意見を交わし議論ができる。私は一旦就職してから大学に戻るという経験をしたので、そのありがたさを強く実感しました。ゼミに限らず、私が担当する「刑事政策」等の授業でも学生同士でディスカッションする機会を多くつくっています。考えの異なる他者と話をしたり、自分の考えを深めたりするために有意義に時間を使ってほしいと思います。
法学部依存症ゼミナール
開放性と共感性に基づいた理解
薬物使用、痴漢・性犯罪、繰り返す窃盗等は、現行刑事法上刑罰が科せられる「犯罪」であると同時に、「依存症」という保健・医療としての性格も持ち合わせており、これらの行為に依存することが当事者の生きるための手段になっている可能性も指摘されています。現代社会において、これらの行為をどのように取り扱うのが望ましいのかということを、刑事司法の側面から、実態に即して考えることがこのゼミナールの目的です。 問題へのアプローチの方法は様々なので参加者の自主性に任せることとしていますが、問題の現状をより鮮明に捉えるために、適宜、依存症当事者から直接体験談を聞いたり、自助グループや処遇を行っている現場を訪問したり、専門家を招いたりする機会も設けています。
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地域課題
SDGs・地域課題について