
Kudo Fumitaka
工藤 史貴 教授
Profile
出身地/埼玉県
尊敬する人/国内外でお世話になった諸先輩方
趣味/諸外国での国際学会
休日の過ごし方/ジョギング
好きな音楽/耳に残る流行りの曲
好きなTV番組/スポーツ全般
好きな食べ物/白ワイン、日本酒、それらに合う食事。クラフトビールやドイツビールも。
特殊な物質をつくり出す微生物の働きに注目し、有用物質の創出をめざす。
なぜ微生物はこんなすごいことができるのだろう?
微生物は、生命活動に必須ではないものの、特定の環境で役立つ「特殊な物質」をつくり出すことがあります。こうした現象は「二次代謝」と呼ばれ、成長やエネルギー生産に関わる「一次代謝」と区別されます。人間の体内では基本的に見られない仕組みで、微生物ならではのユニークな能力です。では、微生物はなぜ特殊な物質をつくるのでしょうか。それは生存競争のなかで自らを守ったり、仲間とのあいだで情報をやりとりしたりするためと考えられていますが、正確な理由はまだ明らかになっていません。ただひとつ確かなのは、それらの物質が人類のためにつくられたものではないということです。にもかかわらず、人類はそれらを医療や産業に活用してきました。例えば、ペニシリンという抗生物質はその代表例です。抗生物質とは、細菌による感染症などの治療に使われる物質のことです。このペニシリンも最初から目的を持って見つけられたわけではなく、たくさんの微生物を調べる「スクリーニング(条件に合うものを探す作業)」で、たまたま見つかったものでした。
私の専門は、こうした有用物質が微生物によってどのようにつくられているのかを調べる研究です。また、「酵素」という、体内で化学反応を進めるタンパク質の働きにも注目しています。最近では、微生物の遺伝情報(ゲノム)を読み取る技術が進み、たくさんの微生物を比較して、ユニークな働きを見つけやすくなってきました。そうした情報をもとに、医療や産業に役立つ有用物質をデザインすることにも挑戦しています。
私たちの研究は、まず土の中にいる微生物を育てるところから始まります。そして、遺伝子を解析して、生合成反応を観察しながら、微生物がどんな物質をつくる能力があるのかを探っていきます。
例えば、「β-アミノ酸」と呼ばれる特殊な構造のアミノ酸が、酵素の働きによって環のような形の物質に組み込まれ、それが抗生物質として機能することがあります。このとき酵素は、まるでパズルのピースを正確につなぎ合わせるように、緻密に反応をコントロールしています。こうした酵素の働きの背後には、「タンパク質間相互作用」と呼ばれる、酵素どうしが協力し合って働く精巧な仕組みがあります。これによって、複雑な化学反応がスムーズに進んでいるのだと考えています。
私がこの分野に進んだのは、「なぜ微生物はこんなすごいことができるのだろう?」という、素朴な疑問からでした。将来的には、医療や産業に役立つ有用物質を生み出すことをめざしていますが、それ以上に、微生物がどんなふうに生きているのか、その知恵や力を知りたいという純粋な興味が、私の研究を動かしているのです。
研究の魅力は、「意外性」と出合えること。学生のみなさんにも、その面白さをぜひ体験してほしいと思います。そのためには、まず基本となる知識をしっかり身につけることが大切です。その上で、未知の世界にワクワクしながら、一歩踏み出してみてください。
化学者の共通言語である「化学構造式」を理解できるように
私が担当している『有機化学演習』や『生化学演習』では、3年生を対象に、化学反応の仕組みや化合物の構造の理解を深めていきます。例えば、アミノ酸やグルコース、ATP(アデノシン三リン酸)といった生体分子について、言葉としては知っていても、それを実際に構造式として書くとなると、難しく感じる学生が少なくありません。そのため、まずは基本に立ち返り、「分子がどんな形をしているのか」をしっかりと理解することから始めていきます。学生にめざしてほしいのは、身の回りのものに含まれる物質を、原子や分子のレベルで理解しようとすること。化学構造式は、国境を越えて通じる「化学者の共通言語」です。名称や発音が違っても、構造式を描けば伝わる。それが化学の素晴らしいところだと考えています。化学者の言語をぜひ習得してほしいですね。
学生たちには、常識のある大人になってもらえれば十分だと思っていますが、そのなかで、科学の知識が少しでも役立てばうれしいですね。例えば、企業に就職して環境に配慮した製品づくりをするときに、どんな物質が環境に悪いのかを根本から理解できたり、食品に含まれる成分に問題が起きたとき、「なぜそれがいけないのか」を自分で判断できたりすること。あるいは薬局で薬をもらったときに、その薬の仕組みを少しでも把握できるといいですよね。また、人生を豊かにするのは「良い出会い」が重要です。先生でも、友達でも、先輩でも構いません。偶然のように訪れるそうした出会いを、大切にしてほしいと思っています。

生体反応化学研究室
生体内反応を原子レベルで理解する有機化学
ペニシリンという抗菌物質はご存知でしょうか?高校の化学の教科書にアオカビが合成していると述べられています。ペニシリンがどのような原料から、どのように合成されるか想像したことはありますか?その疑問に研究室でお答えしましょう。 世の中には多くの微生物が棲息しており、様々な天然有機化合物を合成しています。ペニシリンはその一つであり、まだ見ぬ有用物質を合成している微生物が棲息していると思われます。微生物による合成法を学び、それを利用することで、新たな有用物質を作り出せる可能性があります。最先端のゲノム情報やAI技術も活用して、有用物質創出の基盤を作り出しましょう!
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