Ibuka Akiko
井深 章子 教授
Profile
出身地/東京都
子供の頃の夢/漫画家、デザイナー
趣味/旅行、Wordle
休日の過ごし方/食べ歩き
好きな音楽/クラシック、ジャズなど何でも
好きな映画/『When Harry Met Sally...』、『Bohemian Rhapsody』、『The King's Speech』
好きな食べ物/タイカレー
タンパク質の複雑な構造を分析し、理想的な人工酵素の設計を目指す。
構造の美しさに魅せられタンパク質を研究する道へ
私の主な研究テーマは、生物のもつタンパク質の構造を分析し、その役割や作用のメカニズムを解き明かすことです。
現在は、タンパク質の中でも特に「酵素」に着目した研究を進めています。酵素とは、食べ物の分解・消化や、体に必要な物質の合成を担うタンパク質で、体内のさまざまな化学反応を促進する触媒のはたらきをしています。
生物の体内では、小さな化学反応が無数に発生しており、それらがパズルのように複雑に組み合わさることによって、生命を維持するための機能を果たしています。私の研究では、そうしたパズルのピースをバラバラに分解し、一つひとつの反応について、それに関与している分子のはたらきを細かく調べています。
酵素の構造は、生物が進化する過程で自然にかたちづくられたものですが、これを人為的につくろうとすると非常に難しい。私の研究の目標は、複雑な酵素の構造を分析し、人の役に立つ、思い通りの機能を持った人工酵素を設計することです。その点、生物学の分野ではあるものの、工学やデザインといった分野とも親和性の高い研究だと考えています。
大学時代、講義中にタンパク質の立体構造を見せてもらう機会があり、その美しさに魅せられました。タンパク質は、さまざまな分子の組み合わせから成り立っていますが、部分的には非常に高い規則性を持った構造をしています。小さい頃から工芸品や建築のデザインに関心を持っていた私にとって、「究極の美は、人間がつくることのできない自然の中にあるのではないか」と考えるきっかけになった出来事でした。
毎日のように新しい発見がある研究ではありませんが、地道なデータの積み重ねが突然ひとつにつながり、道が開ける瞬間があります。そうした研究成果によって、医療・薬剤分野などの発展に貢献できる点が、大きなやりがいになっています。
授業では積極的なコミュニケーションを重視
私が担当している授業のひとつ「応用生物学概論」では、1年生を対象に、細胞の成り立ちや細胞内の分子の性質など、生化学の基礎となる知識を教えています。生化学とは、生物を化学的な視点からとらえる学問です。3年生向けの「タンパク質工学」では、こうした生化学の知識をある程度、習得していることを前提として、特にタンパク質について、より発展的な内容を学ぶことができます。
授業やゼミで意識しているのは、学生にあまり教えすぎず、ゆっくりでもいいので自分自身で考えるように促すことです。最近は、教えたことを丸暗記するのは得意でも、自ら課題を見つけたり、実験の条件を設定したりすることに苦手意識を持っている学生が増えています。しかし、研究の醍醐味は、自分の力で何かを見つけ出すところにあります。そのため、随所でフォローしながらも、「自分で考えた」という体験を学生に味わってもらえるような指導を心がけています。
また、コミュニケーションも大切にしています。特にゼミでは、装置や試薬を複数のメンバーが共通で使うので、コミュニケーション不足が大きな事故につながる可能性もあります。例えば誰か1人が装置の故障を黙っていたら、全員の実験結果が信用できないものになってしまうかもしれません。そのため、学生には、日頃から積極的にコミュニケーションをとり、ささいなことでも相談・報告をしてほしいと伝えています。
人は社会に出ると、自由に使える時間が減ってしまいます。学生時代は、自分のために自分の時間を好きなように使える貴重な期間なので、やりたいことがあったらどんどん挑戦してください。もちろん、ひとりで黙々と取り組んでもいいのですが、できれば他の人を巻き込んで一緒に取り組めば、可能性はさらに広がっていくと思います。
酵素工学研究室
生物において多様な役割を果たす「タンパク質」を科学する
本研究室では、生物に由来する多種多様なタンパク質の中でも、特に触媒機能を持つ「酵素」に着目し、精密な構造に裏打ちされた機能性を明らかにする研究を進めています。酵素は、生物にとって重要なだけでなく、食品・医薬品産業などにおいても幅広く利用されています。酵素の機能を分子レベルで詳細に解析することで、生物における化学反応の進行・制御についてのヒントを得ると同時に、将来的には産業利用が可能な酵素のデザインにもつなげたいと考えています。
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地域課題
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