物流における最適な経路を導き出すための「最適化アルゴリズム」の研究に取り組んでいます。最適化アルゴリズムとは、いくつかの制約条件を設けて、その範囲内で最適な解を導き出すための計算手法。コンピュータサイエンスの領域で、機械学習のひとつに含まれる研究分野です。

皆さんの身近な例としては、現在地から目的地への行き方を教えてくれるナビゲーションシステムも最適解（目的地）を導き出す最適化アルゴリズムの一種といえます。しかし既存のシステムでは、物流における現実の課題に対処した経路最適化は未だ不十分であるのが実情です。移動にかかるコスト面や配送の時間指定、トラックの積載容量など、多くの制約条件のなかで最適解を探索することが必要になるためです。数理モデルを構築しシミュレーションを重ねながら、より最適な解を導き出すアルゴリズムを開発するのが私の目標です。

現代の物流業界のホットな課題に、ユーザーに商品を届ける最後の区間、「ラストワンマイル」の効率化があります。これに対し、トラックとドローンを組み合わせた物流の仕組みを模索中です。研究に用いるモデルは、生物が優秀な個体を残したり、劣等個体を淘汰したり、突然変異したりといった遺伝過程を模倣した「遺伝的アルゴリズム」をはじめ、「ハーモニーサーチ」などさまざま。事例に合わせてどのモデルが適しているか比較しながら、アルゴリズムの改良、研究を行っています。

大学時代は、経営学部に所属していました。その後就職した金融業界では情報分野の応用が進んでいて、日々の業務のなかで自分の力不足を実感することが多くありました。そうした経緯から、大学院に進学して情報分野を勉強しようと決意。現在は神奈川大学大学院に特別助手として情報分野の授業を担当しています。いずれは最適化アルゴリズムの研究成果を金融分野の事例にも応用していければいいですね。

学生の皆さんには、論理的思考力と異文化理解を大切にしてほしいと思います。

まず、情報分野で必須となるプログラミングにおいて、論理的思考力は非常に重要です。私が担当する「情報処理入門」は基礎的な講義のため、既存のプログラミングコードを書き写して理解することに重点を置いています。現在はインターネットで調べればたくさんのプログラミングコードが出てきますし、それらを活用すればおおよその課題は解決できてしまいます。しかし、今後社会に出て活躍していく皆さんには、今はまだない課題に取り組む機会が多くあるでしょう。その際、プログラミングコードを模写するだけでは役に立ちません。取り組むべき課題を正しく把握し、どのような方法で解決に導いていくのかを論理的に思考していく力が必要になります。

さらに、異文化理解を通して、多様なバックグラウンドを受け入れながら、一緒にひとつの課題に取り組むことも重要です。学部生時代のうちに、海外の学生や学外の社会人と接する取り組みに積極的に参加してみてください。皆さんが社会に出てからもチームワークは大切だと思いますし、将来の糧になるはずです。