Tanaka Ken

田中 賢 教授

所属
情報学部
計算機科学科
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専門分野

計算機科学、ネットワークセキュリティ、機械学習

キーワード

Profile

出身地/東京都
趣味/水泳、音楽、ピアノ
子供の頃の夢/夢らしい夢はなかった。ただ、早く大人になりたいと思っていた
尊敬する人/特定の人物というより、周囲の人のある側面に敬意を覚えて、その生き様を取り込むということが多かったように思う
愛読書/『都市計画概要』東京都
休日の過ごし方/自転車で街めぐり
好きな映画/「メトロに乗って」「JFK」
好きな音楽/ジャズ、フュージョン
好きなTV番組/山田太一のドラマ、ガイアの夜明け、ディスカバリーチャンネル
好きな著名人/西部邁、鶴田浩二(故人)
好きな食べ物/夢民のカレー、寿司
好きな国/日本。日本以外ならドイツ

「問う力」で「仕組み」を知り「夢」を追う!

ネットワークセキュリティを究める

小学校6年生のクリスマスの夜、父親に連れられて二人で映画を観に行ったんです。それが「2001年宇宙の旅」。思えば、この映画を機にコンピュータに興味を持ち、いつしか将来の仕事とする選択肢の一つとなり、現在の職に就いたのですね。高校時代には第五世代コンピュータの本を読んで人工知能に強い関心を持ちました。夢らしい夢はなかったと言いましたが、純粋さという点ではこれが一つの夢だったなと思います。
大人になるにつれ、技術は理想に向かって一直線に進むものではなくて、その時代その時代で可能なことを一つずつ積み重ねて行くものだということが、だんだんと分かってきました。大学時代を過ごした1980年代の後半、インターネットは大学や研究機関を結ぶ学術目的での利用に限られていた時代。まだweb はなく、メールやニュースといったテキストベースのサービスが主体でした。それでも、いずれこれが社会に普及すれば、世の中は変わるに違いないという直感はありました。私自身ネットワークやサーバを運用する立場にありましたから、ネットワークに対する関心は常にあったわけです。それが現在の研究テーマへとつながってきたのです。
私の扱う研究テーマはネットワークセキュリティにおける最適化問題。例えば危険なパケットを遮断するパケットフィルタリングという仕組みがありますが、フィルタリングはたくさんの規則で組み合わされているので、規則が増加すると通信が遅延します。そこで、セキュリティを確保しつつも一方では効率を上げ、遅延を最小化するにはどのように規則を構成すれば良いかという問題を設定し、それを解くアルゴリズムを考えるわけです。パケットフィルタリング以外にも、セキュリティに関する技術はたくさんの規則の集まりであることが多いので、さまざまな課題に対する、アルゴリズムを考えていくことで効率化が可能になるのです。
2001年が過ぎても、いまだに月面基地はないし、人と同等の知能を備えたコンピュータもまだ登場していないけれど、チェスで人を打ち負かす程度にはコンピュータは進歩して、インターネットはある意味ではSFが及びもつかないほど世の中を変えました。不思議なことに、地に足が着いた今の方がたくさんの夢が思い描ける感じがします。本当の夢とはそういうものなのかもしれません。

豊かさと便利さ故の貧困

今、インターネットの一端に身を置きながらも危惧するのは、技術が進歩していく一方で、世の中にさまざまなひずみが出て来ているということです。例えば、従来、人が動き、人が解決していた事柄が、ネットワーク上を情報が飛び交い、コンピュータが判断することで瞬時に解決されていくことになれば、経済効率が上がる一方、雇用が減って失業率は上がってしまうでしょう。また、理系離れと言われていますが、技術が高度化し、世の中が便利になればなるほど、人々は技術について深く知ろうとする気持ちを持たなくなります。例えば携帯電話などの電気製品を分解しても中には基盤が入っているだけで、モノとしての仕組みは目では見えません。電電公社の黒電話を開けたことがありますか?もちろんあれは開けてはいけないんですが、開ければ電話機の仕組みが少し分かります。電話線には直流電圧がかかっていて、安易に触ってはいけないのだということも身をもって知ることができます(笑)。そういう好奇心が揺さぶられる経験を現代の子供たちはできなくなっているんですね。

「問う力」で自分の価値を保つ

私の講義では、常に「手順」ではなく「仕組み」を理解してもらうように努めていますが、受講している学生の皆さんはとかく手順を知りたがりますね。この問題はどうやって解くんですか、という風に。手順とは、ある特定の問題にしか適用できないものです。応用が効かないのです。でも、仕組みは違います。ひとたび仕組みを知れば、手順は自ずから明らかになるものなのです。実は、仕組みとはものぐさな人に向いているのです。また、新しい理論や技術を考えるのも、既存の仕組みを深く知ることで初めて可能になります。結局、仕組みを深く理解することが、学習においても研究においても一番の近道と言えるでしょう。
学生の皆さんに伝えたいことは、考える力を身に付けて欲しいということ。私は、『考える力=問う力』、だと思っています。何かを学習するとき、何か新しいものを生み出す時、もっとも大切なのがこの力だと思います。なぜかと言うと、問う力とは、未知のもの、よく分からないものを一歩一歩明らかにしていく原動力そのものだから。既存の理論や枠組みにその力を適用するのが学習で、未知の問題にその力を適用するのが研究や開発です。問う力を身に付ければ、もはや誰かに教えてもらう必要がないので、社会に出ても常に新しい知識や能力を身に付けられます。つまり、いつまでも自分の価値を保てるのです。しかも自由にその対象を選び取ることができます。こんな素晴らしいことはありません。

情報ネットワーク・セキュリティ研究室

問題を解決するためのアルゴリズムを考える

当研究室のテーマは、ネットワークセキュリティ、言語獲得、計算論、ニューラルネットワークと機械学習です。インターネットから危険なデータを受け取らないようにする( パケットフィルタリング)、言葉を習得するメカニズムの解明( 言語獲得)、膨大なデータから一定のパターンを見つけ出し、将来を予測する( 機械学習)など、共通しているのは、問題を解くアルゴリズムを考える研究テーマが多い点です。 知識を得ることよりも深く考えることを重視しています。何かを学習する時、何か新しいものを生み出す時、大切なのが考える力、すなわち「問う力」だと思っています。問う力さえ備わっていれば、社会に出た後も常に新しい知識や能力を身につけることができるでしょう。

Photos

  • 高校時代までバンドを組んでいて、キーボードを担当。何でも仕組みで理解するたちなので、音楽もつくれるはずという気持ちから、手掛けたのが作曲をするようになったきっかけ。そんな風にしてつくった一曲。メロディやコードの流れは機能的に捉えることができて1つの文法を構成する。でも、いいメロディやいいコードの流れを選ぶのはやっぱり人の感性だなと思う。

  • 大学時代の親友の形見である腕時計。彼とは考え方も価値観もまったく違い、最初は衝突ばかりしていた。自分が理の人間だとしたら、彼は情の人間であった。だからこそ、さまざまな場面で物事を対称的なところから眺める彼の言葉が、自分をよく映し出す鏡になり、幾度かの困難も彼の言葉で乗り切ることができた。

  • 「スクエア1」という多面体立体パズル

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