
Kawano Tomoaki
河野 友亮 特別助教
Profile
出身地/山口県
趣味/サイクリング
好きな音楽/ゲーム音楽
好きな映画/『バック・トゥ・ザ・フューチャー』
好きな食べ物/かつ丼
量子コンピュータの基本となる仕組みを論理学的な視点から解き明かす。
論理を学べば世界が少し違って見える
私が専門としているのは「数理論理学」という分野です。これは、世の中にあるさまざまな論理の構造や仕組みを数学的に分析する学問のこと。皆さんも高校の数学の授業で、「AであればB」「AかつBであればC」といった論理学の基本を学んだのではないでしょうか。こうした論理は、数学的な考え方の土台になっているだけでなく、複雑な構造を単純化したり、物事の共通点を機械的に把握したりする上で大いに役立てることができます。論理を学べば世の中を少し違う視点から見つめることができるようになるといっても過言ではありません。
なかでも、私は量子コンピュータの論理学的な分析に力を入れています。量子コンピュータとは、量子力学の原理を応用した新しい計算手法のコンピュータです。複数の計算を並列して行うのが得意で、従来のコンピュータでは時間がかかった問題を高速で解決できるのではないかと期待されています。
量子力学の世界には「不確定原理」という概念があります。簡単にいえば、運動量や位置といった2つの物理量を同時に決めることができないという不思議な性質です。そして、国によって法律やマナーが違っているように、異なる性質を持つ世界では従来のコンピュータで用いている論理が通用しなくなるのです。そこで、私は量子コンピュータにおける論理の仕組みを解明しようと研究を続けています。
私が取り組んでいるのは量子力学や情報分野の基礎を成すところなので、量子コンピュータの発展につながるのか、数学の分野で活かすことができるのか、将来的な可能性は未知の部分も数多くあります。遺伝子解析をはじめとする生物学とも関わる分野ですし、さらに視野を広げれば、物事の考え方を研究するという点で哲学などにも通じています。このように、情報や数学の枠を越えて幅広い分野に触れられることが研究の大きなやりがいのひとつになっています。
多様な分野の土台になる論理的思考力を養う
私が担当している「情報処理入門」という授業では、コンピュータの仕組みやプログラミングについて基礎から学ぶことができます。また、「離散数学Ⅱ」という講義の演習も担当しており、数理論理学とも関わりが深い数学的な証明技法の基本を教えています。「論理」や「証明」と聞くと難しそうなイメージを抱くかもしれませんが、これらは数学的な考え方の根底をわかりやすく示したルールに過ぎません。そのため、パズルのように順を追って進めていけば、着実に理解を深められるのではないかと個人的には思っています。
こうした学びを通じて、学生の皆さんにはさまざまな分野の土台となる論理的な思考力を養ってもらいたいです。学生時代に培った多角的なものの見方は、将来どのような道に進むとしてもきっと役に立つはずです。大きな壁に直面した場合でも、慌てずに原点に立ち返って一つひとつ問題を解決できるような人になってほしいと考えています。
私にとって人生の原点は、幼少期に観た映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』です。タイムマシンで過去や未来を駆け巡る様子に魅せられ、理系分野に関心を持つようになりました。そのまま大学では量子物理学を専攻していたのですが、大学院に進むタイミングで現在の研究分野に移りました。
私自身もそうでしたが、学生時代には自分の進む道について迷ってしまう人もたくさんいると思います。しかし、焦ってひとつに絞ろうとするのではなく、広く浅くでもいいので、とにかく幅広く触れて世の中にどのような分野や世界があるのかを知ってほしいと思います。そして、そのなかから自分にぴったりの道を見つけてもらえたらうれしいですね。

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