Sekiguchi Hiroo

関口 博巨 教授

所属
国際日本学部
歴史民俗学科
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専門分野

日本近世史、古文書修復

キーワード

Profile

日本の各地に伝わる古文書を、皆で調査し、知恵を寄せ合って読んでいます。古文書を丹念に読み解いていくと、教科書では知ることのできない、江戸時代の村や町の歴史が見えてきます。

生年/1960年
出身地/埼玉県
家族構成/妻
子供の頃の夢/すし職人(いっぱい食べたかった)
尊敬する人/父と母。網野善彦先生。柔和で筋の通った人…そんな人になりたい
愛読書/特に愛読書はありませんが、藤沢周平さんの作品は好きです
趣味/ブラジリアン柔術
休日の過ごし方/たまった雑事の片付け。時間があれば柔術の練習
好きな映画/「レ・ミゼラブル」(2012年公開)
好きな音楽/バロック音楽やミュージカルの楽曲をよく聴きます
好きな食べ物/何でも食べますが、最近は健康に気をつけています

古文書には人々の生きていた痕跡が確かに残っています。その小さな足跡が、歴史に奥行きや躍動感を与えるのです。

古文書から知る、江戸時代の庶民の暮らし

学部生向けの講義としては、現在、「日本史Ⅰ・Ⅱ」や「博物館実習Ⅰ・Ⅱ」などを担当しています。「日本史Ⅰ」では、「近世の社会と文化」という副題を掲げ、江戸時代の村や町に暮らす人々の恋愛や結婚、離婚、村人たちの結びつきや自然との関わりなど、古文書に基づいた話を一話完結形式で取り上げています。この講義は教養科目ですから、まずは興味を持ってもらえる内容を選ぶこと、そしてわかりやすく話すことを心がけています。
例えば、村で窃盗事件が起きたとします。犯人は村の中にいるとわかっていても、それが誰なのかまではわからない場合、どのように犯人を見つけていたと思いますか? 実は「入札(いれふだ)」という方法がありました。投票で犯人を決めていたのです。もしかしたら冤罪を生んでいたかもしれませんが、村に合わない人を入札によって排除することで、村の秩序を保っていたのです。
人々のこうした暮らしぶりは、古文書によって知ることができます。日本には膨大な数の古文書が伝わっていて、古文書大国と呼ばれるほどです。特に村や町の古文書、庶民のことがわかる史料は、世界でも例がないほどたくさん残されています。それらを読み解くと、誰も知らない歴史のひとこまがありありと浮かび上がってきます。そういう歴史の本当の面白さや魅力を少しでも講義を通して伝えられたらと思っています。

無名の人々の小さな足跡が大きな歴史を書き換える原動力に

私の専門は日本近世史で、特に江戸時代の村や町で暮らした人々に注目しています。例えば、村社会にはどんな身分の人がいて、彼らはどんな人間関係をつくり、どんな暮らしぶりだったのか。それを知るために、地域に伝わる古文書を見つけ、整理し、くずし字の史料を解読しているのです。誰も見たことのない古文書に出会い、現代の私たちを驚かすような発見をする研究はとても楽しいものです。
私が発見した人物の中には、無名であっても非常に個性的な人々がいます。例えば、竹内長門という身分の低い陰陽師がいました。江戸幕府は1791年に「陰陽道職業の者は土御門家(つちみかどけ 安倍晴明の末裔)の支配下とする」というお触れを出していますが、長門はこのお触れを盾に、伊豆一国の祈祷系の宗教者を支配しようと画策したのです。彼は江戸の陰陽師でしたが、湯治先の伊東温泉で幕府のお触れを利用しました。私こそ土御門家の役人であると偽って、若者たちに陰陽師の仮免許を発行し、お金を巻き上げていたのです。当時の伊東の若者の中には、「このまま伊東で暮らすのは嫌だ」「どこかに飛び出したい」と思っていた人たちがいたようで、古文書を書き残した名主は、そんな若者心理を“飛び上がりの心”と表現しています。“飛び上がりの心”を持った若者が、長門の詐欺被害に遭ってしまったというわけです。今も昔も、若者には新しいことをしてみたいという気持ちがあったのですね。お触れを出した幕府も伊東を支配していた浜田藩も、その後、公家の家名をかたる長門への対応に苦慮しています。
お触れが発布されたというだけではなく、出されたお触れの社会への影響や、庶民レベルでの対応にまで目配りしていくと、歴史の見え方はガラリと変わります。歴史をつくるのは支配者や英雄だけではありません。無名の人々のこうした小さな足跡が、歴史に奥行きや躍動感を与え、ひいては大きい歴史、全体史を書き換える原動力になると、私は考えています。
教科書を読むだけでは、歴史が人間の営みの積み重ねであるという感じがなかなかしませんが、古文書の中には人々の生きていた痕跡が確かに残っています。ですから私は、古文書調査を通して埋もれている近世の人々の声を拾い出し、その声を聴くことをしているといえるのかもしれません。

学生時代は人生の基礎を据える好機

私の大学時代はというと、学業の傍ら生活費を得るために、大学の図書館で出納員として働いていました。振り返れば、もっと自由に遊び、もっと冒険すれば良かったと思うことはありますが、それでも大学でのたくさんの人や本との出会いが、今に繋がっているように思います。
大学生活はこうあらねばならないということはありません。しかし、この時期は人生の基礎を据える好機です。自分の人生の責任は誰も負ってくれませんから、そのことを自覚して、思い残しのない時間を過ごしてください。

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  • 網野善彦先生の著書『無縁・公界・楽』(平凡社、初版)。大学1年生の頃に読んで感銘を受け、その後の私の人生を決定づけた本。網野先生のサイン本は増補版。現在は平凡社ライブラリー『増補 無縁・公界・楽』として刊行

  • 本学の日本常民文化研究所が所蔵している愛媛県松山市の二神家に伝わる古文書。内容は、二神島の属島である由利島のイワシ網漁の権利をめぐる覚書

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