Arakaki Yumeno
新垣 夢乃 助教
Profile
民俗学は、近代社会において「私たち」はなにか?を考えてきた学問といえます。日本や沖縄を含む東アジアの様々なテーマに目を向けながら、「私たち」とはなにかを一緒に考えてみましょう。ちなみに私はタコ、紙芝居、テングサ等と人の関わりについて調べています。
出身地/沖縄県うるま市
子供の頃の夢/「強い」魚を釣ること
尊敬する人/母親
趣味/散歩、旅行
異文化コミュニケーションを通して、「我々」とは?「他者」とは?と問いかける。
文字情報だけでは解き明かせないことを調査する
「タコ」「紙芝居」「テングサ」などを対象に研究に取り組んでいると聞いて、皆さんは直感的にどんな研究を思い浮かべるでしょうか。これらを関連づけて考えてみても、共通点を見つけ出すのは難しいかもしれません。実際、以前の勤務先の学長から「いったいどうつながるのですか?」と質問されたこともありました。それぞれの研究のスタートには個別の理由があるのですが、しいて言えば文字情報だけでは解き明かせない人々の歴史や生活への関心という点ではつながっていると言えます。ですので、私は「タコ」「紙芝居」「テングサ」といったテーマを頼りに、地域社会の人々の歴史や生活を日本やアジアをフィールドに研究しています。
最初に取り組んだのが、タコに関する研究です。タコは海底の穴や窪みを住処とする習性があるのですが、世界中の多くの国々でその穴を活用したタコ漁が行われています。人々がその穴をどのように活用し、管理し、継承してきたのか。そして、各地域において実践されてきた資源管理(自然との付き合い方)がどのように成功、もしくは失敗したのか。大学院生であった当時の私は、こうしたことを知りたいと考えていました。最初は特定の地域を対象に調査を行う予定でしたが、調査範囲は日本各地、そして台湾、韓国へと広がっていきました。
そんななか、戦時期の紙芝居に関する共同研究の立ち上げに参加することとなり、私は日本統治期における台湾で使用された紙芝居を調査することにしました。日本が台湾を植民地統治している時代、日本語や日本文化を伝える際に用いられた紙芝居の調査を行うことで、当時の人々の暮らしや文化的な背景を明らかにすることが目的です。現代からの眼差しで見れば、それは同化政策の一部でしょう。しかし、文化の異なる他者へ向けて思いを伝えようとするその行動自体は異文化コミュニケーションの一部だとも考えられると思います。そのため、人と人が直接向きあって演じられる紙芝居を頼りにその時代を生きた台湾や日本の人々がそこでどのような異文化コミュニケーションを行ったのかを明らかにしていくことには重要な意義があるはずです。その後、同時代における台湾のテングサ漁業についても調査するようになりました。当時の台湾のテングサ漁業には、台湾の人々だけでなく、沖縄人、日本人が重層的に関与し、中国大陸、欧米諸国を巻き込んで流通していくというダイナミックな動きがあるため、研究としても非常に興味深いものになると考えたからです。文字情報だけでは取りこぼしてしまうかもしれない、歴史や当時の人々の思いや生き方を解き明かすことができる楽しさを皆さんにもぜひ知ってもらえたらと思います。
異文化コミュニケーションを通して自文化を考える
私の担当するゼミナールでは、主に「社会」と「沖縄」というふたつのテーマを設けています。社会関係、社会組織、社会問題……など「社会」は幅広い用語ですが、皆さんが考える社会というフィルターを通すことで何か見えてくるものがあるはずです。そして、「沖縄」。これは沖縄について調査するというよりも、日本本土とは異なる「異文化」を知ろうということが本質です。異文化を意識し、自らとは異なる他者とは何者か、社会とはどのようなものか、そして「私たち」とは何かを掴むきっかけをつくることができればと考えています。
もちろん、沖縄について研究したいという方も歓迎しています。そのような思いがある方には、ぜひ私が担当する講義をおすすめしたいと思います。私の担当する講義では、沖縄で学ぶ学生や、日本の文化や社会について学ぶ海外の学生と交流・議論する機会を提供しています。この時間を通して、他者に自文化を伝えることの面白さや難しさ、どのように異文化コミュニケーションを取るかなどの方法を考えてもらえるといいと思います。
学生の皆さんには、多様な価値観や世界に触れることで、自分が世間で常識とされている枠組みにとらわれていることを知ってほしい。そして、「普通」とされているものの正体を見つめながら、そこから自由になってほしい。そのためには、訪れたことのない街や国へ出かけ、知らない土地を歩き、知らないものを食べたり飲んだりしてみるのがいいと思います。きっと多くの発見があるはずです。
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