
Matsuda Takuma
松田 琢磨 教授
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経済学部
現代ビジネス学科
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Profile
出身地/東京都町田市
子供の頃の夢/電車の運転士
愛読書/志賀直哉、中島らも
尊敬する人/父親
趣味/教会めぐり。広い空間でぼーっとする時間が好き
休日の過ごし方/妻と散歩
好きな音楽/ヒップホップ、ジャズ、フュージョン。高校時代の仲間とライブに行くのが楽しみ
物流は「知の総合格闘技」。幅広い視点を総動員して分析する奥深さがある。
コンテナ輸送から世界経済を読み解く
私は国際物流を専門とし、海運業、なかでも「海上コンテナ輸送」が研究活動の中心です。
海上輸送にはいくつかの方法があります。原油や天然ガスを運ぶ「タンカー輸送」、鉄鉱石や小麦粉などをそのまま積む「ばら積み輸送」、そして私が専門とする「コンテナ輸送」です。コンテナ輸送は、標準化された箱の中に、日ごろ身につけるアパレル製品や電化製品、お弁当に欠かせない冷凍食品や野菜まで、ありとあらゆる商品を詰めて運ぶことができ、日々の生活にも欠かせない存在となっています。
このコンテナ輸送の「運賃」がどのように決まるのか、その要因と仕組みを明らかにすることが私の研究の柱のひとつです。海上輸送の需給関係は世界経済の動向や政治的イベント、自然災害などに大きく左右されます。たとえば、中東で紛争が起こったことを受けて特定の航路が危険になり、船が遠回りを強いられて供給が減り、運賃を上昇させる効果を持ちます。アメリカで金利が上がると、住宅市場が冷え込み、貨物輸送を減らして運賃を下落させます。また、需要と供給は通常の品物やサービスで想定されるものとは異なり、その構造が運賃の乱高下を招く原因とも考えられています。
もうひとつの研究テーマは、コンテナ輸送を担う企業の「市場構造」です。かつては多くの会社がコンテナ輸送に参入していましたが、2010年代末には世界で運航されるコンテナ船の大半が大手9社によって占められるようになりました。このように海運企業間の競争環境がどう変化しているのか、またそれがサービスやコストにどう影響するのかを分析することも私の関心にあります。
さらに、「輸送手段(モード)の選択」についても研究しています。これはある貨物を「船で運ぶか」「飛行機で運ぶか」「船だとしたらなんの船で運ぶか」といった判断が、どのようになされているのかということです。たとえば、発売直後のゲーム機のような製品は時間を優先して空輸され、発売からしばらく経過するとコスト面から船を使う方が合理的であるなど、品目の特性や状況によって最適な輸送手段が異なりますし、ほかにも様々な事情が絡み合って輸送モードは決まります。
目立つ存在とは必ずしもいえない国際物流の研究ではありますが、その対象は私たちの暮らしと密接に関わっており、世界の動きを映し出す鏡でもあるのです。
国際物流の動向を考察するためには、社会科学的な思考と工学的な分析を織り交ぜた総合的な視点での分析が求められます。なんでもありの「知の総合格闘技」とも言わんばかりに様々な知識と思考、分析を総動員することが求められる学際的な奥深さと懐の広さもこの分野の魅力だと感じています。
物流を通して社会の構造を学ぶ
私が担当する「ロジスティクス」では、モノの流れを中心に、経済や社会の仕組みを学びます。高校生や大学生の皆さんには少し専門的かつ細かく感じるかもしれませんが、実はとても身近な内容です。
たとえば、納豆をつくるための大豆はどこからどうやって運ばれてくるのでしょうか。アメリカやカナダから輸入される非遺伝子組換え大豆は、別の大豆が混入するリスクを避けるためにばら積み船ではなく、コンテナ船で運ばれます。授業ではこのような具体例をちりばめつつ、国際物流やロジスティクス活動の背景にある消費者ニーズやコスト面での事情などを多角的に説明することを目指しています。
私の授業を通じて学生に身につけてほしいのは、「経済活動はさまざまなモノや人、仕組みによって支えられている」との視点です。ロジスティクス活動について学ぶことを通じて、ほかの科目で学んだことと合わせて社会の仕組みを多面的にとらえる力を養ってもらいたいと考えています。
たとえば、企業が利益を上げようとするとき、どこで売り上げを増やすか、付加価値を付けるか、どのコストを削減するか、どうやって業務を効率化するかを考える必要があります。「営業をがんばろう」「人を減らしてコストを減らそう」といった一面的な発想ではなく、全体の仕組みを想定して企業の活動を改善していくかを考える力が求められます。
利益を出すことやコストを抑えることは、単に企業や経営者のためではなく、そこで働く人々やその家族、そして社会全体をよりよい方向へ導くための手段でもあります。学生のみなさんには、物流や大学での学習を通じて「よりよい社会をつくるために、自分には何ができるか」と問いを持ち、考えるきっかけにしてほしいと思っています。
さまざまなことに触れ、たくさんの経験を積んでほしい
大学におられる多くの先生方は、学部生や院生(もしかしたらその前)のころから現在の専門または近い分野に関心があってその道を進んできたのではないかと思います。しかし私の場合は少し経緯が異なります。大学院で一度挫折した後、最初の職場で業務として現在の研究テーマと出合い、掘り下げていく中でその面白さや奥深さに魅了され、大学院に入りなおして現在に至っています。仕事でたまたま出合った内容が、いつしか自分の専門になったのです。とはいえ、研究を進めていく過程では、以前学んでいたことが役立った場面も出たり、本当に何が必要になるか大学生や大学院生の段階ではわからない、と実感させられることも多くありました。
皆さんも、将来何が有用になるかはわかりません。ですのではじめから「これはできない」「これはつまらない」と思わずに、何が面白くなりそうか、どこに興味を持てるかを考えながら学びを進めたほうが良いでしょう。皆さんが退屈だと思っている授業でも、きちんと受ければその学びは決して無駄にはなりませんし、皆さんの将来の強みにもなるはずです。
勉強以外でも本を読んだり音楽を聴いたり街を歩いたり旅行をしたり人と話したりして、さまざまなことに触れてみてください。そうした体験の一つひとつが、年齢を重ねたときに、人生を豊かに彩ってくれるでしょう。

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