物理コースの特色

物理学は、理系分野における中核となる学問分野の一つです。理学科物理コースでは、講義科目において物理学に関する基礎をじっくり学び、豊富な実験実習・演習科目を通して、物理学の考え方が確実に身に付くよう配慮されたカリキュラムが作られています。物理コースにおいて物理学を学ぶことで、科学的ものの見方や考え方を修得し、身の回りのことも宇宙や素粒子の世界も、共通の物理法則を使って統一的に理解できることを実感するでしょう。

こうして身につけた物理学の基礎をもとに、理論、実験、シミュレーションを通じて、宇宙物理学、物性物理学、半導体物理学などの専門分野を興味に応じて深く学んでいくことができます。

Feature 1

幅広い領域を網羅した魅力的な学術研究を展開

ナノメートル(原子)サイズから宇宙スケールわたる物理学の領域を幅広くカバーする魅力的な研究が精力的に行われており、個々の学生の皆さんの興味に応じた研究をすることができます。

Feature 2

講義・演習・実験を交えた履修プログラム

基幹となる「力学」「電磁気学」「量子力学」「熱・統計力学」には、対応する演習科目(物理学演習)が用意されており、講義で学修した内容をすぐに演習することにより理解を深めることができます。さらに実験による体験を通して、より確実に身に着けることができ、実践的応用へと結びつけられます。

Feature 3

最先端の実験・観測機器を使った研究

世界中に数台しかないような特殊な研究装置が設置されていたり、大型プロジェクトで建設された外部の実験・観測機器を利用することもあり、さまざまな研究機関と協力しながら最先端の研究が行われています。皆さんも共同研究者の一員となり、神奈川大学ならではのオンリーワンの研究ができる環境がここにはあります。

Feature 4

実績豊富な教員養成課程

所定の単位を修めることで、中学校、高等学校の理科および数学の一種免許状を取得することができます。これまでも多くの学生が教員養成課程を履修しており、日々切磋琢磨しながら勉学に励んでいます。また、中学校や高等学校の教員として日本各地で活躍している卒業生もたくさんいます。

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物理コースでの学び方

1・2年次

1、2年次では、物理系科目として「力学Ⅰ、Ⅱ」「電磁気学Ⅰ、Ⅱ」「熱・統計力学Ⅰ、Ⅱ」「量子力学Ⅰ、Ⅱ」等の物理学の基幹となる科目を学びます。また「物理学演習Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ」が、それぞれの講義科目と並行して開講されており、講義に即した問題をすぐに演習することによって、学んだ内容の理解を深められるよう配慮されています。したがって、講義科目と併せてこれらの演習科目も履修することを強く推奨しています。さらに、「力学Ⅲ」「電磁気学Ⅲ」「熱・統計力学Ⅲ」「量子力学Ⅲ」が引き続くセメスターで開講されており、それぞれの基幹科目の発展的な内容を扱います。また、物理系科目を学ぶ上で特に必要になる数学は同時期に開講される「物理数学Ⅰ、Ⅱ」で学修し補完します。

また実験科目である「物理学実験Ⅰ、Ⅱ」はコース必修科目として位置づけ、バランスよく物理学を学べるようなカリキュラムが構成されています。1年次には、基礎物理学実験法があり、各種実験の心得やスキルを身につけてもらいます。

特に3年次からは、より高度な専門科目やゼミナールや輪講・卒業研究などより多くの時間を割く必要のある科目も増えてきますので、語学や共通教養等の科目は、1・2年次にできるだけ多く単位取得しておくことが望ましいです。

3年次

3年次からは「相対性理論・宇宙論」「原子核・素粒子物理学」「物性物理学」「数理物理学」「ナノサイエンス」というような、より専門的な科目を学びます。また「計算物理学Ⅰ、Ⅱ」においては、特に理論物理学分野で重要となる計算機を用いたシミュレーションの基礎をしっかり学びます。さらに天文系や気象系分野ついても充実した科目が用意されており、これらの科目を履修することで自身の専門分野の知識を一層深めることができます。

また後学期には、配属された研究室で「理学ゼミナール」を必修として履修し、4年次の卒業研究の準備を行います。

4年次

4年次では、配属された研究室において、1年間かけて卒業研究を行います。 必修科目の「輪講Ⅰ、Ⅱ」では、卒業研究に必要な理論や解析法を学んだり、研究に関する討論をしたりします。例年4年次の2月頃に、卒業研究発表会で一人一人が成果を発表し、卒業論文要旨を提出します。

さらに続けて研究を深めたい人は、大学院に進学して研究を進めます。
(※5年平均で、約1/4の学生が大学院に進学しています。)

物理コースカリキュラム・履修系統図

物理コースカリキュラム構成

  • 赤字はコース必修科目

物理学に関する科目

基幹となる科目 より専門的な科目 配属研究室で行う科目
  • 力学Ⅰ必修、Ⅱ、Ⅲ
  • 電磁気学Ⅰ必修、Ⅱ、Ⅲ
  • 熱・統計力学Ⅰ必修、Ⅱ、Ⅲ
  • 量子力学Ⅰ必修、Ⅱ、Ⅲ
  • 物理学実験Ⅰ必修、Ⅱ必修
  • 物理数学Ⅰ、Ⅱ
  • 計算物理学Ⅰ、Ⅱ
  • 物理学演習Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ
  • 相対性理論・宇宙論
  • 原子核・素粒子物理学
  • 物性物理学
  • 数理物理学
  • ナノサイエンス
  • 理学ゼミナール必修
    ∟卒業研究で必要な知識やスキルを身につける
  • 卒業研究Ⅰ、Ⅱ必修
    ∟自分のテーマに沿って研究を行う
  • 輪講Ⅰ、Ⅱ必修
    ∟卒業研究に関する経過報告や討論等を行う

関連する科目

数学科目
  • 解析Ⅰ必修、Ⅱ、Ⅲ
  • 線形代数Ⅰ(行列)必修、Ⅱ、Ⅲ
  • 微分方程式
  • 複素関数論
  • 確率論
  • 数理統計学
情報科目
情報処理入門Ⅰ、Ⅱ
概論科目
物理学概論Ⅰ、Ⅱ
共通教養科目
  • 基礎物理学
  • 物理学
  • その他の一般教養科目(語学も含む)
天文系科目
  • 天文学概論
  • 天文実習Ⅰ、Ⅱ
気象系科目
  • 地学概論Ⅱ
  • 気象学
  • 流体力学

物理コース履修系統図

Pick Up 授業

ナノサイエンス

ナノサイエンスは、ナノ(10億分の1)メートルサイズで特異的に見られる光子や電子の量子効果を明らかにするもので、将来に大きな可能性を持つ技術の源となっています。

この授業では、ナノサイエンスの基本から、ナノデバイスの作製技術、さらに走査型プローブ顕微鏡をはじめとするナノサイズの構造の計測・分析技術に至るまで、幅広く解説します。

相対性理論・宇宙論

一般相対性理論は、量子力学とならぶ20世紀の物理学の画期的な成果であり、2015年9月に理論の予言する重力波が観測され、2017年8月には中性子星合体からの重力波検出により本格的なマルチメッセンジャー天文学の時代が幕を開けました。

さらに2019年4月には、イベントホライズンテレスコープによるブラックホールの影の画像が公開され、2020年のノーベル物理学賞もブラックホールに関わるものでした。

日夜進歩する我々の宇宙理解の基盤となる、一般相対性理論から導かれる標準的な宇宙論であるビッグバン宇宙論について学び、物理理論と天文観測から得られる宇宙の歴史や組成・構造に関する様々な知見を紹介します。

計算物理学 II

力学や電磁気学などで学ぶ物理法則は解析的に解ける例は少なく、現実世界の運動を扱うには、計算機による数値計算が必要になります。基礎的なプログラミング技術を学んだ計算物理学Iの発展科目として、現代物理学で実際に使われる乱数を応用した計算およびセル・オートマトンのような複雑系科学への応用を学ぶと同時に、コンピュータ・プログラミングをさらに学んでいきます。自ら複雑系のシミュレーションをモデル化・プログラム実装することによって、自然現象をどのようにコンピュータの中で再現するかを学修します。

量子力学 I

物理学のみならず現代科学技術の重要な基礎の一つであり、原子や電子のふるまいなどミクロの世界を理解するためには欠かすことのできない量子力学について学びます。本科目では、古典力学と対比される量子力学の特徴について説明した後、このような理論を必要とする具体的現象をいくつか紹介します。続いて、単純化した量子系で実際の計算を行うことにより、量子力学の考え方のより深い理解をめざします。最終的には、物質の成り立ちを理解する第一歩として、水素原子の構造の量子力学による解釈を講義します。

数理物理学

Wikipediaより転載

この授業では、理学の基礎をなしている2つの分野、数学と物理の多様で有機的な結びつきについて理解することを目標としています。数学側から見れば物理は数学の応用的な側面を持ち、物理側から見ると数学は道具としても意味合いを持つというのが一般的なとらえ方と思われます。しかし両者の間にはそれを超えてもっと概念的な結びつきがあります。たとえば物理に登場する数理的構造が数学的に豊富な構造を持ち数学の本流に刺激を与えたり、数学での新しい成果やアイデアが物理における発想や解析に革新的な進歩をもたらすことも少なくありません。この授業ではその一端を紹介するとともに、分野横断的に進められる研究の生きた姿を伝えたいと思います。

物理学実験 II

物理学実験IIでは、物理学実験Iに続く発展的な実験課題として、「放射線のエネルギースペクトル測定」や「真空技術」、「X線回折」、「可視光源の分光スペクトル計測」「超伝導実験」「パルスの伝送実験」など、最先端の研究の場でも必要となるような実践的な内容について講義と実験を交えながら進めます。実験は、2〜3名のグループで進め、得られた結果を解析したり客観的にまとめて考察するためのスキルについても時間をかけて学んでいきます。実験の成果は、レポートやプレゼンテーション等で報告します。

天文実習 II

天文実習では、天文観測施設を用いて天体観測を行います。特に本実習では、直感的にわかりやすい可視光での観測を通じ、天文学の学術研究における天体観測やデータ解析、論理的考察などの研究手法について学び、天体とその観測に関する基本的な知識と観測実験研究における応用力が身につくように、進めていきます。観測対象の天体は、トランジットと呼ばれる現象を起こす惑星を持つ恒星とする予定です。トランジットとは、恒星の周りを公転する惑星がその恒星の一部分を一時的に隠すために起こる恒星の減光現象です。対象天体のトランジット中の明るさの時間変動を調べることによって、その恒星の周りを公転している惑星の情報を調べることができます。このように恒星を公転する惑星を検出し、惑星の情報を調べる方法を「トランジット法」と呼びます。

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よくある質問

総合理学コースと物理コースで迷っているのですが、何かアドバイスは?

「物理学の特定の分野に興味がある」「物理学について深く学びたい」という明確な意志がある人には「物理コース」をお勧めします。一方、「さまざまな理系分野の基礎を学びたい」「分野境界的な領域に興味がある」「理系のどの分野に進むか迷っている」人には「総合理学コース」も選択肢の一つに入るでしょう。総合理学コースに入った学生は、4年次卒業研究では、すべての分野(数学・物理・化学・生物・地球環境科学)の研究室で卒業研究を行うことができます。

理学部と工学部は何が違うの?

明確な定義はありませんが、一般に工学部は「形あるもの」や「役に立つ技術」を生み出すことが重要な使命の一つです。例えば、過酷な環境で動作するロボットを製作したり、高速で動作するデバイス機器を開発したり、災害に強い建物を設計・製作したりするでしょう。つまり、工学部では「新しい技術を生み出す手段」を主に研究しています。

一方、理学部では、「自然界(森羅万象)の不思議を解明」すること(=科学 science)に重きを置いています。「科学」は純粋な好奇心から湧き出るもの多く、単に「役に立つもの」を生み出すことを第一の目的としているわけではないかもしれません。しかしながら、自然現象の解明に至るプロセスや得られた科学的知見などは、これまでもさまざまな技術の発展に大きく寄与してきました。さらに現代では、理学部においても得られた法則や基礎的な知見に基づき、それらの応用研究・技術開発も積極的に進めています。このように理学部の研究は、身の回りにあるすべての自然の不思議が対象になるのです。

理学科物理コースと工学部応用物理学科は何が違うの?

神奈川大学には、「物理」と付く学科(コース)が2つあります。理学部理学科物理コースでは、「他大学の物理学科と全く同格の充実したカリキュラム」を準備しています。例えば、力学、電磁気学、量子力学、熱・統計力学の基幹4科目には、段階に応じて I・II・IIIの3つの科目があり、基礎から発展的な内容まで3セメスターかけて体系的にじっくりと学修できます。また、それぞれの科目には対応する演習(物理学演習)が同じセメスターに開講されており、講義で学んだ内容を演習によりすぐに定着させることができることが物理コースの特徴です。また物理学実験IとIIをコース必修科目として位置づけ、講義だけではなく、体験を通した能動的な学修にも力を注いでいます。

より専門的な科目しては、3年次以上を中心に、「相対性理論・宇宙論」「原子核・素粒子物理学」「物性物理学」「数理物理学」「ナノサイエンス」などの魅力的な科目が用意されており、最先端の研究と結びつけながらユニークな講義が展開されます。このように、基礎をしっかり学修しつつ、豊富な演習や実験科目などでしっかりと理解を定着させながら、より専門的な内容へと展開していくのが理学科物理コースの大きな特徴です。

例年、他大学の大学院への進学者もいることからも、理学科物理コースのカリキュラムが充実しているかが分かると思います。

どんな職種に就職ができるの?

メーカ・サービス業(製造・小売・情報サービス)、エンジニアをはじめとして、金融・保険業、鉄道・運送業、公務員、教員等、どの分野に対しても就職の実績があります。このことは、物理コースを修めた学生には、幅広い領域から人材のニーズがあり、活躍の場が広いことを物語っています。また大学院への進学者も2割以上おり、大学院修了者は各企業とも研究・開発を主導的に行える人材として期待されています。

物理コースではどんなことを学ぶの?

物理コースでは、物理学を修めるのに必要な「基幹4科目」を3セメスターかけて 「物理学演習」と連携しながらじっくりと学び、「物理数学」で物理に必要な数学を補います。また「計算物理学」によって物理モデルを数値的に解く(プログラミングを用いて計算機で解く)手法を学びます。3年次以降には、「相対性理論・宇宙論」「原子核・素粒子物理学」「物性物理学」「数理物理学」「ナノサイエンス」など魅力ある専門科目が用意され、最先端の研究例と絡めながら進められ、卒業研究や大学院での研究に役立てることができます。また同じ理学科内で開講される数学系科目や情報系科目についても、物理と関連が深いことから履修が推奨されています。。また、天文実習I、IIでは、夜間に神奈川大学の天体望遠鏡を用いて星の観測や測光等を行います。このように、物理の基礎から発展・応用まで一連の内容を体系立てて学修することができ、物理学の真髄を知ることができます。

実験は大変ではないですか?

物理コースでは、物理学実験I、IIがコース必修科目として位置づけられています。実験科目は、自ら実験装置を準備してデータを取得し、得られたデータを整理し、客観的な考え方に基づいて評価することが必要になります。また得られた結果は、レポートとしてまとめたり、プレゼンテーション発表したりすることになります。したがって、他の科目に比べても時間的・精神的大変さはあるしれません。ただ物理学は、歴史的にも理論と実験の両輪で発展してきたことから、理論だけでなく実験的な手法や考え方を同時に学ぶことは物理学をよく理解する重要です。また今後、卒業研究や社会に出てからも試行錯誤しながらさまざまなデータを科学的に整理して、発表していくことは避けて通れません。そのような意味でも、物理コースでは実験系科目も重視したカリキュラムになっています。

また物理学実験等で必要となる実験・解析スキル、実験機器の安全な取り扱いについては、1年次に開講される「基礎物理学実験法」で扱っていますので、物理コースの学生には強く履修を勧めています。

実は高校で物理が苦手だったのですが授業についていけるでしょうか?

高校物理の理解が不十分な学生向けに、「基礎物理学(力学・熱力学の内容)」「物理学(電磁気学・波動の内容)」という科目が用意されています。これらの科目は、主に高校の物理の内容を復習しながら、大学の物理へ橋渡しできるような授業内容となっています。担当は高校物理を教えた経験のある講師が担当しており、物理に不安がある学生に好評です。また上記の科目に限らず、大学の講義では、予習・復習に4時間程度の自主学習が求められていますので、苦手を克服すためにも特に時間をかけた予習・復習が必要になることは言うまでもありません。また物理を記述する言語は数学ですので、併せて微分積分や線形代数などの数学はしっかりと学修しておくことも重要です。

どんな資格が取れるの?

教職課程の所定科目を所得することで、教員免許の取得ができます。また学芸員課程の所定科目を取得することで、学芸員の免許が所得できます。

さらに所定科目の単位取得又は学科(コース)の卒業により、「危険物取扱者(甲種)」、「衛生工学衛生管理者」、「作業環境測定士(第一種)」、「労働衛生コンサルタント」、「労働安全コンサルタント」資格試験の受験資格が得られます。(ただし、実務経験が必要になる場合があります。)

また在学中の学修により、「電気主任技術者」「放射線取扱主任者(第一種・第二種)」、「技術士」、「基本情報技術者」、「弁理士」等の資格試験に向けた準備ができます。
※法令の改正により、変更される場合があります。