知的財産法分野

文化的に豊かな社会のために ― 著作権法ってどんな法律?

渕 麻依子先生

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著作権って何だろう?

みなさんは著作権という言葉をご存知ですか?聞いたことはあるけれどもその中身はよく分からないという方は、SNSなどで時々発生する「パクリ騒動」とか「トレース疑惑」を思い出してみてください。あのような騒動の背景には、音楽やイラスト、ゲーム、小説等の作品にはほとんどの場合著作権が発生していて、作者に無断でその作品を使うと著作権侵害になるという事情があります。つまり、他人の作品を無断でトレースしたりした作品を作ってインターネットにアップすると著作権侵害となる可能性があるのです。なんとなく著作権のイメージが浮かんできましたか?

著作権の目的は?

それでは、著作権法という法律は、作者に無断であれをしてはいけない、これをしてはいけないというルールを定めた法律なのかというと、たしかにそうした側面はあるのですが、実はそれだけではないのです。著作権法の条文を開いてみると、著作権法の目的は「著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もって文化の発展に寄与すること」にあると定められています。難しいですね。そこで、これを大胆に分かりやすく言い換えると「いろいろな音楽やマンガ、ゲーム、映画があったほうが私たちの生活は楽しく文化的に豊かなものになるので、作品を生み出したクリエイターの利益はきちんと守ってあげましょう。それと同時に、私たちがそれらの作品を自由に楽しんだり使ったりできる場面もある程度確保しておきましょう。そして、その2つのバランスを調整するのが著作権法ですよ」ということになります。まずはクリエイターの利益を守ること、つまり作品を勝手に使われたりすることがないようにし、クリエイターが作品から報酬を得られることが大切なのですが、それと同時に、一定の場合には私たちが自由に作品を楽しんだり使ったりできることも文化の発展のためにはとても重要であると著作権法は考えているのです。

より具体的にいうと、たとえば、音楽が使われるたびにその音楽を作詞作曲したアーティストにはきちんと対価が支払われる(私たちが無料で聞いているYouTube上の楽曲もそうした仕組みの上にアップされています)ようにすると同時に、高校の文化祭のステージで音楽を流すようなときにはアーティストにお金を支払う必要はない、そんなルールを定めるのが著作権法という法律です。
そして、著作権法を学ぶということは、著作権法の目的を実現するためにどのような制度が設けられているのかを知ることであり、さらには、変化の著しい社会においてどのような制度が望ましいのかを考えていくことでもあります。

著作権法はどんな法律の仲間なのか?

さて、著作権法は知的財産法と呼ばれる一連の法律のうちの1つです。知的財産法には、著作権法のほか、特許法(発明を保護する)、商標法(ブランドの名称等を保護する)、意匠法(デザインを保護する)などが含まれます。
知的財産法に含まれるこれらの法律に共通するのは、財産的な価値のある情報を保護する法律であるという点です。現代社会では、不動産や自動車といったかたちのあるものと同様に「情報」にも経済的に重要な価値があると考えられていて、そうした情報を適切に法律で守ることが必要なのです。神奈川大学法学部では知的財産法I・IIという科目でこれらの法律について学んでいきます。また、知的財産法についてより深く学ぶゼミナールも開講しています。

私たちの毎日の生活にも密接に関連している知的財産法について、みなさんもぜひ法学部で勉強してみませんか?

教えてくれた先生

渕 麻依子先生

担当分野:知的財産法

専門分野:知的財産法(キーワード:特許法、著作権法、商標法)

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