法学・政治学のとびら
Hello!法学部
「公平・公正」な貿易
皆さんは、「フェアトレード」という言葉を聞いたことがありますか?途上国の原料や製品に適正な価格を支払うことで、弱い立場に置かれた途上国の生産者や労働者の生活の改善を目指す「公平・公正」な貿易の仕組みのことです。日本国内でもフェアトレード商品の流通量が徐々に増えている他、最近では高校の教科書などでも取り上げられるようになったため、大学生の間でも認知度が高まってきました。
ところが、アンケートを取ってみると、フェアトレード商品を目にしたことはあるが購入したことはないという学生が大多数です。聞いたことはあるものの、実際の仕組みがよく分からないフェアトレードの商品に、一般流通商品よりも割高な値段を支払うことが躊躇われるのかもしれません。フェアトレードの提唱の背景には、先進国によって形成された既存の国際貿易体制が、途上国に極めて不利な構造を持っているという認識があります。フェアトレードの仕組みを知ることは、先進国に住む私たちの日常生活が、如何に途上国に支えられているかを知ることにも繋がります。
一方で、「フェアトレードが普及すれば途上国の貧困問題は解決するのか?」と問われれば、答えはNOです。途上国の抱える課題は、国際的な貿易体制に起因するものだけではありません。紛争、政治、環境、資源、文化、慣習など、様々な要因が絡み合っており、非常に複雑です。残念ながら、途上国の諸課題を一気に解消するような玉虫色の解決方法は、存在しません。
「貧困」の諸側面
またそもそも、「貧困」とはどういう状態のことを指すのでしょうか?世界銀行は「1日あたり1.90ドル(購買力平価)の国際貧困ライン以下で生活する人々」を絶対的貧困層と定義しており、経済協力開発機構(OECD)は「一人当たりGNI」を基準としてどの国が「途上国」に当たるのかを規定しています。つまり、国際的な援助ドナーは、「貧困」を「現金収入」を基準として定義しているということです。
しかしながら、「貧困」にも様々な側面があります。都市スラムの住民はある程度の現金収入を手にしているかもしれませんが、同じ国の農村に暮らす人々と比べると住環境は劣悪です。逆もまた然りです。農村では食べるものには困らないかもしれませんが、都市部のように医療や教育のサービスへのアクセスは良くありません。さらに国内の所得格差の拡大は、相対的貧困を生みます。これは日本国内の社会問題からも理解できるでしょう。国際的な開発協力を捉える上で、「貧困」が持つ多面性を理解することも重要です。
法学部で開講されている「国際協力論I/II*」では、途上国が抱える課題群を理解すると共に、先進国政府、国際機関、NGO、グローバル企業など、国際社会の様々な主体が、「途上国の貧困」という大きな課題にどのように向き合ってきたのかを体系的に学びます。私たち日本人の生活とも決して無縁ではない、いやむしろ密接に関わりあっている課題について、一緒に考えてみましょう。
(*同科目は、法学部が2021年度からスタートさせた「グローバル・パースペクティブ・プログラム(GPP)」の指定専門科目にもなっています。)