Ueda Wataru

上田 渉 特任教授

所属
化学生命学部
応用化学科
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専門分野

触媒物質化学

キーワード

Profile

出身地/滋賀県信楽町
血液型/O型
子供の頃の夢/忘れた
尊敬する人/子供の頃はジョン・F・ケネディ、若い時はアインシュタイン、今は誰だろう?
趣味/酒とそれで悪くした頭の回復に囲碁
休日の過ごし方/研究
好きな食べ物/酒
好きな国/英国(ケンブリッジ大学に留学していたので)

触媒を用いて、限りある資源を うまく使うための方法を研究しています。

触媒を使って効率よくエネルギーをつくるための研究

“社会を変える触媒”をテーマに研究をしています。触媒というのは、化学反応を手助けしたり、その速度を速めたりするけれど、それ自体は変化しないものだと習ったかと思います。擬人化すると分かりやすいのですが、二人の幼稚園児が恥ずかしがって手を繋がないとき、先生が間に入ったらすんなり手を繋いでくれますよね。たいていの園児は先生が大好きですから。そこから先生が輪になろうと言ったら、園児たちは先生と繋いでいる手とは反対の、空いているお互いの手を繋ぐわけです。そこで先生が輪から離れても、園児たちは手を繋いだままいます。この手を繋ぐという行為を化学の世界では結合といい、それを仲介する先生役が触媒だと説明できます。
ところで、自動車を動かすにはガソリンを入れて、それをエンジンで爆発させながら運動エネルギーに変換しますよね。それがタイヤを動かす動力になるわけです。では、私たち人間はどうでしょう? 私たちは空気を吸い、食物を摂取し、それを体内で燃やして身体を動かしています。そのとき、人間もエンジンのように空気や食物を体内で爆発させて、燃やしたりしていると思いますか? 口から二酸化炭素を吐き出しますから、燃えていることは確かです。かといって炎を上げて燃やすと、身体が燃えてなくなりますよね(笑)。では、どうしているのかというと、触媒を使って“燃やす”ことでエネルギーを取り出し、いろいろな生命活動にあてているのです。私たちの体内には、さまざまな種類の触媒がたくさんあります。化学の世界ではそれを触媒と呼びますが、生物の世界では酵素と呼んでいます。
この触媒を使って燃やすことでエネルギーを得る方法は、非常に効率的で無駄がありません。エンジンでガソリンを燃やす場合、40%ほどの効率しか出せず、残りは熱や音になって逃げますが、触媒を用いると、そんな無駄は出ないのです。これまで私たち人間は、太古の昔から地球上に蓄積されてきた貴重な石油や石炭、天然ガスを使って発展を遂げてきました。これらは限りある資源ですから大切に、うまく使わなければなりません。私が研究しているのは、この“うまく使う”という部分になります。具体的には、金属酸化物を触媒に、有機物をうまく酸化させるシステムをつくろうと取り組んでいます。

まるで命があるような人間味あふれる触媒に魅せられて

触媒は、とても複雑で人間に似たところがあります。世の中に高い能力をもった人がいるように、触媒にも高い能力をもつものが存在します。しかし、触媒において最も大切なことは、能力よりも根気です。いくら能力が高くても、すぐいやになって辞めてしまうようでは困るわけで、それなら少々能力が劣っても、長く働いてくれる触媒の方がありがたいのです。かといって、ずっと働いてくれるかどうかの判断は、非常に難しいんですけどね。また、触媒は全員が全員働くわけではなく、中には休んでいるものや別の役割をしているものもいます。あるとき、主力の一人がもう働けないとなると、休んでいた触媒が代わりに働くようになるんです。そんなふうに触媒は、まるで命があるかのごとく存在する、愛しいものなんですよ。
私が触媒の研究を手がけるようになったのは、大学からです。しかし助手になった頃、実はもっと以前から関わっていたことに気づかされました。私の実家は信楽焼の窯元で、子供の頃から厳しい父のもと、その作業を手伝わされてきました。それが嫌で研究の道を選んだようなものでしたが、私が助手になったとき、父が私の研究を見て「陶器と一緒だ」と言ったんです。なるほど、専門的にいえば、陶器は金属の酸化物です。色をつけるのに、さまざまな元素をつけて高温で焼くので、元素が酸化されて金属酸化物になりますからね。陶器の世界から飛び出したつもりが、結果的に金属酸化物をテーマに研究しているなんて、不思議であり、おかしな縁だなと思っています。

大学時代には仲間と一緒に何かつくる経験を

私自身は、これまで自分の好きなことをしてきただけなので、そう大きなことは言えませんが、大学時代には、何か後から振り返って話せるようなことをしてみてはどうかと思います。後から振り返って語れるものは、そのとき継続して、一生懸命取り組んだもののはずです。また、一人ではなく、何人かと一緒に取り組んだほうが面白いし、深みが出てくると思います。せっかくの大学4年間ですから、仲間と一緒に、何か自分たちでつくるという経験をしてみてほしいですね。

触媒物質化学研究室

酸化物の構造を自在に制御して高機能触媒を開発

研究テーマは、触媒を使って効率良くエネルギーや化学工業の原料を作ることです。たとえば、エンジンでガソリンを燃やすと燃焼効率はおよそ40%ですが、触媒を用いればそんな無駄は出ません。石油や石炭、天然ガスなど限りある資源を“うまく”使う上で、触媒は不可欠なのです。 資源から化学工業の原料を作る場合や、資源を効率的にエネルギーに変換するときに、酸化という反応が広く使われています。しかしながら、役に立つものを作り出す酸化と、水と二酸化炭素にしてしまう燃焼とは紙一重です。そこで、燃焼させずに“うまく”酸化を促す触媒が必要になるわけです。当研究室では、触媒の構造を狙った通りに制御することで、高性能な触媒の開発に取り組んでいます。

Photos

  • 選択酸化を行う触媒反応装置

SDGsの取組み

地域課題

SDGs・地域課題について

化学物質の効率変換によるエネルギーと物質の同時生産プロセスの開発、新エネルギー発生と効率利用のための触媒化学の研究を行っています。

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