
Kato Chihiro
加藤 千博 教授
Profile
出身地/愛知県名古屋市
子供の頃の夢/野球選手、サッカー選手
趣味/スポーツ
休日の過ごし方/テレビ、コーヒー、昼寝
好きなTV番組/「飯尾和樹のずん喫茶」
好きな映画/「Atonement(つぐない)」
好きな食べ物/フルーツ・嫌いな食べ物/野菜
「ユートピア文学」を分析し、理想的な社会のあり方を探究する。
理想社会を描いた文学と現実社会の課題を結びつけて批評
皆さんは「ユートピア文学」と聞いてどのような作品を思い浮かべますか? ユートピア文学とは、人々にとって最も望ましい社会形態が登場する架空の物語のことです。その名の通り、トマス・モアが『ユートピア』という文学作品を発表したことで確立されたジャンルです。それ以降、シェイクスピアの『テンペスト』やダニエル・デフォーの『ロビンソン・クルーソー』、ジョナサン・スウィフトの『ガリヴァー旅行記』など、多くのユートピア作品が世に送り出されてきました。近年では、カズオ・イシグロの『わたしを離さないで』などもユートピア作品として扱われることがあります。
私は、こうしたユートピア文学に位置づけられる作品について研究しています。ポストコロニアル(脱植民地主義)やエコロジー、ジェンダーなどの観点から各作品を分析し、新しい社会のあり方を探究することが研究の主な目的です。
ユートピア文学を明確に定義するのは難しいですが、作品の一部として理想的な社会形態が描かれる作品や、ジョージ・オーウェルの小説『1984年』のように、独裁や管理社会といった望ましくない状態である「ディストピア」を扱った作品もこのジャンルに入ります。これらの作品は、実現不可能な理想社会、あるいはディストピア社会を示すことで現実社会の問題を浮き彫りにし、どうすれば世の中がよりよくなるのかを読者自身に考えさせる役割を果たします。解釈は読者に委ねられており、言語や階級、人種、ジェンダー、環境問題など、現代社会が抱えるあらゆる課題と結びつけて批評することができます。そのため、文学批評や文化研究の基本を学ぶ上では、非常に有益なジャンルだといえるでしょう。ユートピア文学を通じて培った批評的な目線は、幅広い他のジャンルの作品にも応用できると考えています。
百聞は一見に如かず、実践あるのみ!
私の授業では、文学作品の一節を原典である英語で読み、翻訳では伝わらない繊細な表現を感じ取っていきます。同時に、自分自身の解釈を英語で表現することにより、批評的な思考力と英語による発信力を養います。
「英語圏文学概論A」という授業では、シェイクスピアから現代に至るまでの代表的なイギリス文学作品を取り上げて、文学に親しんでもらいます。特に18世紀以降の小説というジャンルの形成過程を辿りながら、小説の多様な解釈の方法を学んでいきます。常にグループワークを行い、自分なりの解釈を紹介し合うことで、他の人の意見や批評方法を参考にすることができます。
「Comparative Literature」という授業では、オリジナルの文学作品と翻案作品(映画、ドラマ、演劇、アニメなど)を比較することにより、その作品に対する理解を深め、現代における作品の価値や意義を考察します。例えば、『フランケンシュタイン』という小説は映画の影響で多くの人が原作とは異なったイメージを抱いていますが、原作と映画を比較することで、小説中の美しい描写をより深く感じることができます。
文学や文化を研究すると、何事もさまざまな視点から解釈できることに気づくはずです。社会において自分の意見をしっかりと主張することは大事ですが、立場が異なる他の人たちの意見を尊重することも重要となります。学生には研究を通じて、多様な解釈の方法、そして他者と協調する方法を身につけてほしいと思います。更には、英語で読み、英語で発信することにより、実践的な英語力を向上させるだけでなく、グローバル・コンピテンスを備えた人材になることも期待したいと思っています。
文学や文化を研究する際に、書物やインターネットを漁るだけでは十分ではありません。英文学を学んでいるなら実際にイギリスに出かけてみるなど、回り道をしなければ学べないこともあります。特に文学に関心のある人には、好きな作品に登場する場所を巡ってみることをおすすめします。作品で描かれている空の色が、実際にはどんな色なのか。大量の文献を読むよりも、現地に行って感じることが何よりの勉強になると思います。英語同様、文学から得た知識も使ってこそ意味があります。現地の人と直にコミュニケーションを取ることが異文化理解の大きな助けとなります。

加藤千博ゼミナール
イギリス文学・文化をカルチュラル・スタディーズの観点から探究する
当ゼミでは、イギリス文学作品、特に小説を題材として、カルチュラル・スタディーズの観点から解釈・分析をします。novel(小説)という語には「新しい」という意味があるように、小説は18世紀に登場した比較的新しい文学ジャンルです。カルチュラル・スタディーズとは、20世紀後半にイギリスで誕生した、弱者やマイノリティーの人々の文化にも焦点をあてようとする研究で、言語、階級、人種、ジェンダー、植民地主義、環境問題など様々な社会課題を扱います。この視点を用いて文学作品に新たな光を当てていきます。
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地域課題
SDGs・地域課題について