
Shimizu Yuki
清水 雄輝 教授
Profile
出身地/愛知県
子供の頃の夢/研究者や技術者
趣味/ギター、ひとりカラオケ
好きな映画/ロード・オブ・ザ・リング
謎に包まれた「暗黒物質」の発見に向けてこれまでにない観測技術を自らの手で開発する。
正体不明の物質「暗黒物質」の謎に迫る
宇宙には、大量に存在しているはずなのにまだ誰も発見できていない「暗黒物質(ダークマター)」という正体不明の物質があります。皆さんも知っている原子や分子といった現代の技術で観測できる物質は宇宙全体の約5パーセントに過ぎず、その5倍もの質量の暗黒物質が宇宙を占めているとわかっています。
見えないのに「存在している」と言いきれるのは不思議かもしれませんが、銀河を成り立たせるために必要な万有引力の条件や宇宙初期の情報を考慮すると、今、目に見えている物質の質量だけでは不足しているのです。そのため、暗黒物質の正体を掴むことができれば、宇宙の成り立ちや進化をたどる手がかりになります。私はこの暗黒物質の探索に挑戦する研究者のひとりです。
正体が明らかになっていない暗黒物質ですが、さまざまな先行研究によって、すべての物質をつくる最小構成要素である「素粒子」のうちの未発見のものであると考えられるようになりました。国際宇宙ステーションにある「きぼう」日本実験棟には、宇宙からの高エネルギー粒子を観測する装置が設置されています。私はそこから得られる情報をもとにしたデータ解析によって、暗黒物質の痕跡を探しています。また現在は、暗黒物質同士がぶつかることによって生まれる「反粒子」と呼ばれるめずらしい粒子を測定するための装置を、JAXA(宇宙航空研究開発機構)や他大学との共同で開発しています。将来的にはこの測定装置をNASA(アメリカ航空宇宙局)の南極周回気球に搭載して観測を行い、暗黒物質の発見に一歩近づけたらと思っています。
もともと子どもの頃から宇宙や人間が誕生した経緯についてとても興味があり、それらを構成する最も根本的な素粒子について深く学びたいという思いがありました。そして、大学で素粒子の中でも暗黒物質に焦点を当てた研究室に出会ってからさらに興味を惹かれていきました。現在の研究は素粒子の原理を突き詰められる点でも、宇宙の成り立ちに迫れる点でも、とてもやりがいがあります。
課題に立ち向かう際の試行錯誤を経験する
私が指導教員を務める研究室では、学生の皆さんにも暗黒物質などの宇宙に関わる研究に携わってもらっています。具体的には、人工衛星や成層圏気球といった宇宙に近いところで使う実験装置の開発を一緒に行っています。
宇宙から飛んでくる粒子を測定するためには、その粒子に関わる物理現象についての理解が必要なほか、実験や観測に用いるデータ解析や、宇宙環境という特異な条件を理解した装置設計など、ハードウェアからソフトウェアまでの幅広い知識・技術を総動員することが求められます。この研究を通して、宇宙や素粒子に関わる物理に加え、センサーや信号処理回路、コンピュータシミュレーションやデータ解析に用いるプログラミングなども指導しています。
私が研究テーマにしているような未解明の宇宙の謎に立ち向かうには、これまでにない実験装置を自分たちで開発することが必要になります。そこで直面するさまざまな課題を試行錯誤しながら解決していくことで、基礎だけでなく応用力も養うことができます。この経験は、技術者として社会に出たあとも大きな力になるでしょう。科学技術の基礎を身につけるだけでなく、日々新しいことを取り入れながら課題に取り組んでいく。研究室でのこうした研究過程を通して、あらゆる科学技術分野で活躍できる人材に成長してほしいと思います。

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