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2024.12.12

スーパー水産物をいつか海外へ 大学発ベンチャー「琉球アクアファーム」誕生

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日本人にとってエビは、長寿や成長を願う縁起物として古くから親しまれてきました。日本のエビ消費量は世界トップクラスを誇り、輸入量においてはアメリカ、中国に次ぐ規模を持つと言われています。日本人の食卓に欠かせない存在となっているエビですが、2024年11月、神奈川大学発ベンチャー第4号として、株式会社アクアファームが発足しました。今回、同社の取締役CTOであり、甲殻類の分子内分泌学やペプチドホルモンの生化学、甲殻類の繁殖生理学を専門に長年研究を続けてきた、理学部理学科の大平剛教授に起業の理由や事業内容について伺いました。

 

―起業の理由を教えてください。

もともとはカニの養殖会社を作りたかったんです。中国では上海ガニ、東南アジアだとノコギリガザミの養殖が盛んで商業的に成功しているので、日本でも同様に盛り上げられるのではないかと考えていました。

上海ガニと近縁のモクズガニは北海道では食べられておらず、大量発生して廃棄されていることを知りました。このモクズガニを短期間で養殖して販売できないかと考えていたところ、企業の方から「中国の春節用として需要はあるのではないか」とアドバイスをいただき、そういうところから起業の話が進みました。

実際、駆除のために捕獲されたモクズガニを購入し、震災被害を受けた能登の新たな特産物として養殖できないかと考えています。

 

― 他社と異なる技術があれば教えてください。

エビの養殖にイノベーションを起こし、さらに地方創生に貢献することを目指しており、3つの技術的な優位性を持っています。

 

1.クルマエビの種苗の全雌種苗生産技術

2.眼柄切断を行わない親エビの成熟技術

3.地元廃棄物(バガス)のを活用した循環養殖技術

 

私たちは、全雌の稚エビを生産する新たな技術を開発しました。例えば、クルマエビの雌は雄よりも成長速度が約1.2~1.3倍速いので短時間で養殖することが可能となります。また、一般的にはエビの眼を切断して成熟を促しますが、私たちは眼を切らない技術を持っており、それによって死亡率が低減するので産卵回数が増えます。この技術はアニマルウェルフェアにも貢献しています。

さらに、サトウキビの搾りかすで、これまで捨てていた“バガス”を養殖環境に活用することで、飼育水中でバクテリアが繁殖して水を浄化してくれます。また、水を適度に濁らせ、エビ同士の接触を減らして快適な環境を提供することができます。このバガスの利活用は初めての取組みであり、沖縄での循環型養殖に展開できると考えています。

 

― SDGsに貢献できることは何かありますか?

全雌生産ができれば、養殖期間が短縮され、電力や石油、水車稼働の回数減少などエネルギーコストを削減できます。

また、モクズガニは完全淡水で育つため、休耕田や耕作放棄地での飼育が可能になれば、SDGsに大きく貢献できると考えています。

 

― 目標や将来の展望をお聞かせください。

まずは国内で事業を成功させ、世界へ展開していければと考えています。

そして、将来的にはカニ養殖にも取り組み、「日本で良いカニが作られている」という評判を築きたいです。

 

― 若い世代へメッセージをお願いします。

一次産業は若い人たちにあまり人気がないようですが、日本で作られる農作物や水産物は海外でブランド化され、高値で取引されています。これからは自分たちで農作物や水産物を生産する時代になるかもしれません。若い皆さんが新たな産業を築き、日本の魅力を世界に広めていくことを期待しています。「水産業って面白い!」と思う人が増え、スーパー水産物みたいなものを作ってもらえたらと嬉しいですね。

 


 

大学ブランドになるような“神大エビ”や“神大ガニ”の誕生について尋ねると、「あるかもしれませんね」とはにかみながら答えてくださった大平先生。大学の研究、大学発ベンチャーの取り組みを通じて、新たな可能性を切り開いていく大平先生の今後の活躍を期待しています。

 

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