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2023.08.02

朝ドラに負けない 植物に魅せられた神大の研究者インタビュー

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現在放送中のNHK朝の連続テレビ小説『らんまん』は、植物学者の牧野富太郎博士をモデルにした作品です。生涯を通して植物を愛した牧野博士に負けない、植物を愛し、研究に日夜励む神大の先生を取材しました。

――中川先生の研究テーマを教えてください。

中川先生:植物の根の形がつくられる仕組みについて研究しています。根がつくられる時に、遺伝子やタンパク質がどのように働いているのかということももちろん重要なんですが、私はどちらかというと、農業への応用に軸足を置いています。植物は天候や土の状態によって育ち方が変わることがあって、それが原因で収穫量が減ってしまうことがあります。そうなる前に、根の成長を助けたり、根の形を変えられるような薬があったら良いんじゃないかと、生物学に化学の手法を取り入れた研究に取り組んでいます。私は化学の知識がそれ程無いので、同じ化学生命学部 生命機能学科の岡本専太郎教授と共同で研究していています。

――日本の農業は高齢化問題や後継者問題、耕作放棄地問題など課題がたくさんありますね。

根について研究を行う中川理絵先生
根について研究を行う中川理絵先生

中川先生:そうなんです。日本は輸入大国なので、輸入が一時的に制限されたり、価格が高騰するようなことがあります。この先、お金があっても海外からの野菜や穀物が買えない状況に陥るかもしれません。研究者としてそこに危機感を持っていて、何とかしたいと常々考えています。

今年5月と6月に、教養科目の体験型研修【食育わくわく体験】で、学生と一緒に小田原市に農業に行ってきました。農業の現場を知ることで、学生たちに何か気づきを与えられたらと取り組んでいます。

――最初から植物をテーマにしていたんですか?

中川先生:最初は動物を対象にした免疫の研究をやりたかったのですが、修士課程で植物に出会ってしまい、そこからは植物一筋です!これまで様々な植物を材料に研究をしてきました。麦類を研究したことがきっかけで、農業や応用を意識して研究を進めるようになりました。

――浅岡先生の研究テーマを教えてください。

浅岡先生:博士研究員時代から取り組んだことを発展させて、植物の形づくりに興味を持って研究しています。私たち動物と違って、植物は強度のある細胞壁を持っていて、その細胞壁が形づくりにおいて重要な役割を果たしています。その過程に異常があることで茎が割れたりと面白い系統が見つかってきていて、これらを掘り下げてみたら面白いんじゃないかと思って研究に取り組んでいます。

――茎の研究は珍しいのでは?

茎について研究を行う浅岡先生
茎について研究を行う浅岡先生

浅岡先生:主役は花や葉、根だと思います。文献を調べてみても茎を調べている人は少ないです。茎は他の器官に比べると地味なのかなと思いますが、私はすごく面白いと思って研究しています。

(※)茎は建築でいうところの基礎の部分です。茎を研究することで、丈夫で機能的な構造物を作るための手掛かりとなると考えています。

フィールドワークの授業では、同じ理学部の岩元明敏教授、学生たちと一緒に山に行って植物を採集・分類して、葉や花の特徴を見て図鑑で調べたりしています。

 

(※)今年3月、共同研究者と一緒に「維管束が茎器官の丈夫さに貢献することを証明」)~建築分野における次世代の設計への活用の期待~という論文を発表

――植物採集の話がありましたが、朝ドラ『らんまん』はご覧になっていますか?

中川先生浅岡先生:『らんまん』観てます!

高知県立牧野植物園の入園券
高知県立牧野植物園の入園券

浅岡先生:植物学が取り上げられることが、この業界で研究している身として僭越ですが大変嬉しいです。標本作りのシーンがあったと思いますが、フィールドワークの授業では実際にやっているため、教材として使いたいくらいです。去年は研究の過程で縁があって、高知県立牧野植物園にも行ってきました。

中川先生 電車の中吊り広告に、牧野富太郎と書いてあって、これは観るしかないと思いました。研究に没頭できる環境は羨ましいです。

――神奈川大学は植物の分野ではどうなんですか?

浅岡先生:世界的にも有名な先生がいらっしゃいますし、素晴らしい先生方が揃っています。『らんまん』の牧野博士はどちらかというと、いろんな植物が好きで、広く植物全体を研究されていました。牧野博士の時代では植物を見た目に基づいて分類していますが、今は遺伝情報をベースに植物を分類することが基本で、私たちの研究も、植物の分子の機能や、細胞内のイベントや、植物がどのように環境に応答するかといった、植物の中で何が起きているのかを研究することが中心となっています。中川先生は植物の中の遺伝子、タンパク質を研究することで応用に向けた手掛かりを探索されていますが、理学部ではより基礎的な研究であったり、牧野博士寄りの分類・研究、フィールドワークもあるし、神奈川大学は多岐に渡って研究していると思います。研究設備も素晴らしいです。他大の研究者から研究したくても設備が揃っていないということを聞いたことがあります。

――研究テーマは違いますが、お二人が将来的に共同研究する可能性はありますか?

浅岡先生:根に効果的な薬剤は茎にとってはどうなのか?単純に興味があります。

中川先生:研究している内容が違うので、面白いことがたくさん見つかるかもしれません。共同研究してみたいですね。浅岡先生の研究内容や茎ってどうなっているのか?めちゃくちゃ質問したいです。でも長くなっちゃうから今は止めておきます(笑)

取材が終わった後もお互いの実験の話や情報交換など話が尽きず、農業の話をしていたと思ったら、遺伝子の話やトマトやりんごの実が割れる話など、互いの研究テーマや化学分野に関する話題に話がどんどん発展していきました。

全ての学部が横浜エリアに集結した神奈川大学。今回は化学生命学部、理学部の先生への取材でしたが、学部を超えた新しい交流やユニークな取組みが生まれそうな予感がします。

中川先生、浅岡先生の詳しい研究は「神大の先生」サイトをご覧ください。

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