中国語

大学で中国語を学ぶ動機は?

ある人はよく食べる中華料理がキッカケかもしれません。チャーハン、ラーメン、ギョーザ、シューマイなど中華料理は日本の食卓に欠かせない身近な食品です。
またある人は近年めざましい発展をとげた中国経済を理由に挙げるでしょう。中国が日本経済にとって不可欠の存在となったので、卒業後何かの役に立つかもと考えるのも不思議ではありません。そして、中国人が豊かになったことにより、日本を訪れる中国人旅行客が増加したことも中国を身近に感じる出来事のひとつでしょう。
日本でも『三国演義』、『西遊記』、『史記』などの文学作品や歴史書を題材としたマンガ、アニメ、ゲーム、映画が数多く制作されているので、そうした娯楽が好きな人は、中国の歴史的物語や歴史的人物への興味から選択するでしょう。

中国は数多くの世界遺産を有していることでも有名です。北京にある「万里の長城」や「故宮」、シルクロードにある「莫高窟」に代表される世界文化遺産の建造物や四川省の「九寨溝(きゅうさいこう)」や「黄龍」に代表される世界自然遺産は、大学4年間で世界遺産を巡る旅を計画する人にとって憧れの地でしょう。
こうした動機でなく、なんとなく日本語で慣れ親しんだ漢字を使う言語だから、という理由で選択する人もいるでしょう。同じ漢字を使っていても、そこは日本語とは別の言語ですから、当然違いが出てきます。試みに「娘」という字を比較してみましょう。便宜上、「娘」は日本漢字、《娘》は中国語漢字と表記して区別します。
「娘」は「①(親から見て)自分の、女の子。②(若い)未婚の女性。」(『岩波国語辞典(第七版)』岩波書店)、《娘》は「①母親。②目上あるいは年長の既婚女性。③若い女性。」(『中日辞典(第三版)』小学館)とあります。驚きは辞書に記載される意味の差だけではありません。実は中国語漢字《娘》の用法も重要です。《娘》の②と③はそれ単独で表される意味ではなく複音節語(多くは二音節語)の中に用いられて理解されるものだからです。例えば、《娘》が表す②と③の意味はそれぞれ“老大娘(おばあさん)”と“姑娘(娘さん)”という複音節語に用いられるものです。

漢字にまつわる違いは、意味の上に現れるだけでなく、字体にも現れます。「学習」という熟語で例示します。日本漢字「学習」は中国語漢字で《学习》と《學習》と表記されます。中国語漢字表記が2種類あるのは「簡体字」と「繁体字」の違いがあるからです。前者は中国大陸で用いられる字体で、後者は台湾・香港などの地域で用いられる字体です。

(外国語学部 加藤 宏紀 准教授)