Nakamura Takafumi

中村 隆文 教授

所属
国際日本学部
日本文化学科
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専門分野

英米哲学思想、リベラリズム、スコットランド文化

キーワード

Profile

西洋哲学や英米倫理学が現代に与えてきた思想的影響について、法・政治・文化の観点から研究しつつ授業を行っています。最近はとりわけ、スコットランドと日本との比較文化にも興味を持っています。

出身地/長崎県
子供の頃の夢/公務員
尊敬する人:/石田梅岩
愛読書/「地球の歩き方」
趣味:/旅行、パブ巡り、バドミントン
休日の過ごし方/読書、カフェ巡り、執筆活動
好きな食べ物/ハギス(スコットランド)、バカリャウ(ポルトガル)
好きな国/スコットランド、アイルランド、ポルトガル、ハンガリー

さまざまな「問い」を重ねることで、世界の見え方を変え、自分の可能性を広げてゆきましょう。

人間は、情念(思い)によって行動する生きもの

私の学問の入り口は、近代イギリス哲学からでした。18世紀あたりのイギリスでは「人間本性(human nature)」を解明しようとする哲学的風潮が芽生え、それは人間の理性的側面だけでなく、感覚的・感情的側面にも光をあてると同時に、理性の限界を探る批判的特徴をそなえたものです。とりわけ、スコットランドの哲学者デイビット・ヒュームは、理性の限界を指摘し、「理性は情念の奴隷である」という言葉を残した異色の哲学者です。それは簡単にいえば、人間の動機や意志、そして「〇〇すべき」という倫理的意識さえも、純粋な理性のみでなく、感情的・情動的要素を含んでいるというものです。こういった捉え方は現代においても非常に重要な示唆を与えてくれます。たとえば、ある人が「自分は理性的だから、自身の「〇〇すべきだ」という意見に異を唱える人は感情的な愚か者だ」と言っているとしましょう。しかし、その自称「理性的」な人も感情で動いていることに違いはなく、大事なことは、そのことを自覚し、自身も他者も存在としては同格であることを認めること、そして、いずれの感情・情念がまっとうであるかを独りよがりの「理性」を捨てて検討すべき、ということなのです。これは共存において大事なスタンスであると同時に、人間というものを丁寧に理解しようとするスタンスでもあります。

これを受け、最近の私の研究においては、人間の「合理的ではないようにみえる感情部分の意義」を分析したりもしています。私たちは、感情的な要素を無駄であり捨象すべきととらえがちですが、一概にはそうは言い切れません。例えば、一度立てた計画を効率的に進めようとしてもトラブルになることがあります。一方で、効率が悪くても、自身や他者の感情に配慮したほうが、結果的にみんなで協力しあって良い形で話がまとまることもあります。このように単純に「合理的・不合理」と判断できないさまざまなケースは世の中にたくさんありますので、それぞれのケースを想定しながら、感情や理性の意味を考察してゆきます。
現在の担当講義「哲学」では、さまざまな観点から人間や生き方について掘り下げ、自分を知ることの重要性を考えていきます。哲学に難解なイメージを持つ人もいますが、哲学は、自分の中に生じたさまざまな「問い」について、深く考えることで答えを導き出していく学問です。いろんなことを問いながら、一緒に「人間」というものを理解してゆきましょう。

 

自分と他人の「当たり前」を比較しながら自分を知る

学部の科目では、「比較思想論」や「文化とアイデンティティ」を担当しています。前者では、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教、仏教などの各思想を比較・分析しながら学ぶことができます。後者では、イギリス(UK)のなかにあるスコットランドやアイルランドの文化的アイデンティティについて理解を深めるのに役立ちます。
「自分自身を知る」ということは大事ですが、しかしそのためには「自分でないもの」を知り、どう違うかを比較する櫃ようもあります。たとえば、自分が行っていることの意義を理解するには、「それが当たり前だから」という観点だけでなく、「別の当たり前」と比較し、どのような違いがあるかを見比べる必要があるということです。これは授業だけではありません。別の当たり前を知るためにも、皆さんには大学時代に「異なるものや人と接する経験」をいろんなところでしてほしいと思います。キャンパスには、自分とは年齢も性別も、育った環境も趣味嗜好もまったく違う人が大勢います。そういった人たちとのコミュニケーションを通じて初めて、自分を知ることができるのではないでしょうか。最初は違和感があり、ときに痛みを感じることもあると思いますが、恐れずにさまざまな人と接してみてください。それは大学時代だからこそできる、意義のある経験だと思います。

失敗に向き合って進んできたからこそ今がある

私は大学時代、文学部の行動科学科で哲学を学んでいました。とはいえ正直なところ、勉強よりも中学から続けていたバドミントンに打ち込んでいて、4年生になっても進路を見定めることが出来ずにいました。そこで改めて学んできた哲学をもう少し知ろうと、修士課程に進みました。その時に前述のヒュームの研究を始めて面白さを知ったのです。その後、博士課程に進むつもりでしたが、思い叶わず公務員になり、三年ほど勤務しました。しかし、試合で負けたときのような苦い思いを払拭できず、再び博士課程にチャレンジしました。修了後、大学の非常勤講師や特任教員、高専の講師を務めましたが、やはり研究を続けたいという思いが募って大学教員を目指し、幾多の試験に失敗しながらも現職に就くことができました。改めて振り返ると、私の人生は決して合理的ではないかもしれません。しかし、回り道をしたことで身についた技術や考え方がたくさんあります。自分の失敗を直視し、柔軟に考えながら進んできたことで、今があるのではないかと思います。

Photos

  • アイルランドのおよそ5000年前の遺跡ドルメンです

  • アイルランドにあるクラシックなパブです

  • スコットランド南部ボーダーズのメルローズ修道院

  • イングランド北部の Berwick-upon-Tweedの街並み

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