Sawaguchi Tetsuya
澤口 哲弥 教授
Profile
テクストは一個人の主張や経験が書かれたものと思われがちですが、実はさまざまな社会的・文化的影響を受けています。その影響を言語表現から分析する方略としてクリティカル・リーディングに注目し、研究を進めています。
出身地/三重県
愛読書/北杜夫『どくとるマンボウ青春記」
趣味/スキー、山登り、テニス、バイク、銀塩写真、クラシックギター
休日の過ごし方/コーヒーと音楽、ジョギング
好きな音楽/ブルース、クラシック
好きな食べ物/鱼香肉丝、涮羊肉、古老肉
好きな国/イタリア
「本当にそれでいいの?」「別の見方はできない?」世の中に“問い”を持ち続けられる人になろう。
知らぬ間に潮に流されないために、一度立ち止まってみる
私が長年研究してきたのは「クリティカル・リーディング」という分野です。「クリティカル」は「批判」と訳されることがありますが、文章を批判するわけではありません。文章に対して「本当にそうなのか?」「他の見方はないのか?」「なぜそう書かれたのか?」と問いかけ、世の中に対する多角的なものの見方を養っていきます。
テレビ、インターネット、雑誌などを通じて、私たちは日々たくさんの情報に触れています。その一つひとつには、「この商品を売りたい」「こう思わせたい」など、何かしらの目的があります。それに気づかず、表面的な情報に踊らされていては、知らぬ間にその潮に流されてしまうでしょう。
最近よく「炎上」という言葉を聞きます。これは、背景を知ろうとせず、考えようとせず、反射的に声を上げることから起きる現象のように思います。「この人はなぜこんなふうに言うのか」と背景を考えていくと、闇雲な批判はしにくくなるものです。自分に合わないこと、いらだたしいことに出会っても、少し立ち止まって考えることができれば、もっと一人ひとりが生きやすく、やさしい社会になると思います。
「桃太郎」は本当にヒーローだったのか?
クリティカル・リーディングを学んだ学生からは、「こんなに自由な読み方があるんですね」という声をよく聞きます。
以前、授業で「桃太郎」を取り上げたことがありました。一般的に桃太郎は正義のヒーローです。しかし、あえてそこに「違う見方はできないだろうか?」と問いかけてみました。すると、「鬼が悪いことをした『らしい』という噂だけで判断するのは良くない」「鬼も生活があって仕方なく宝を盗んだのでは」など、いろいろな意見が出てきました。よく知っている「桃太郎」が、まったく違う物語に見え始めたのです。
読むことは、社会の形成と深くつながっています。既存の認識や言説を「素直」に受け入れるだけの読みしかできないと、当たり前とされることがらを修正し、新しい社会をつくることはできません。また、自分の考えに合わない論理に対し反射的に拒絶する読みしかできないと、相手を尊重し、争いのない社会をつくることはできません。
文章を読んで考え、発信することは、社会の基盤をつくる大切な行為なのです。
「とことんやりきる」ことが糧になる
私は大学時代、学問のほかに、テニス、オフロードバイクでの一人旅、ブルースのレコード収集、クラシックギター、スキーでの検定チャレンジなど、思えば本当にいろいろなことに挑戦(散財!?)しました。アルバイト代をつぎ込み、本当に「やりきった」という思いです。それらは、何十年も続く趣味として今も続いており、あの時のさまざまな経験が今の自分をつくっていると思います。
大学は、学ぶ内容も生活スタイルもすべて自分で選ぶことができる、とても自由な場所です。自分を解放するチャンスです。興味を持ったことには徹底的にのめり込んでください。中途半端に手を出したのでは、本当の魅力まではたどり着けないと思いますし、安直に見つけた楽しみはポロリとはがれ落ちます。「やりきる」ことで必ず何かしらの発見があります。自分が飽きるまでとことん続けましょう。自分の内から湧き出てくるものに耳を傾け、深掘りしていってください。
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