お知らせ

2026.05.18

【研究】 理学研究科 松島佑里氏、化学生命学部 細谷浩史特任教授らの研究グループの論文が国際英文誌「Frontiers in Microbiology」に掲載されました。また、ミドリゾウリムシ研究の現況を概説した和文総説が和文誌「原生生物」に掲載されました。

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代表的な原生生物の一種である繊毛虫ミドリゾウリムシには、細胞内に数百個の共生藻(クロレラ)が共生しています。そのため、共生藻が産生する光合成産物を利用する事ができ、太陽光を利用して生存が可能な動物細胞として注目され、世界中でミドリゾウリムシを用いた「真核細胞間共生」に関する多くの研究が行われています。
今回、本学大学院生松島佑里氏や細谷浩史特任教授(現 総合理学研究所 客員教授)らの研究グループはミドリゾウリムシの培養が可能な人工合成培地の開発に初めて成功し、5月1日に「Frontiers in Microbiology」(微生物関係の国際英文誌、Q1,IF=4.5)で成果を公開致しました(
DOI 10.3389/fmicb.2026.1821058 )。本研究により、今後ミドリゾウリムシを使用した真核細胞間共生の研究が飛躍的に発展する事が期待されています。

また、細谷特任教授らがミドリゾウリムシ研究の現況を時代的背景も含めて概説した和文総説が、日本原生生物学会の査読誌「原生生物」に受理され、本年2月に公開されています。

研究の概要

ミドリゾウリムシは、「生物における共生のメカニズム解明」に適した実験材料として1900年当初頃から注目を集め、全世界で研究が行われています。しかし、ミドリゾウリムシに関するデータが蓄積されつつある一方で、研究者毎に報告されるデータの再現性(研究者間における実験結果の一致度)が低く、データに大きなばらつきがみられる傾向が次第に顕著になっています。その理由として、ミドリゾウリムシの実験条件が統一されておらず、研究者によってバラバラである事が主な原因の一つだと認識されています。

具体的には、 (a) ミドリゾウリムシの培養時に投与される「餌(栄養成分)」が研究者毎に異なり多様である事、また、 (b) 使用されるミドリゾウリムシ株の遺伝的背景が研究者毎に同じものかどうか不明である事、さらには, (c)成分が明確でない稲藁やレタス、ケールなどの抽出液が培養液として使用されており、研究者毎に培養液が多様である事、等が大きな問題として指摘されています。

そこで本研究グループは、まず上記(a)および(b)の課題を解決することを目指しました。そのために、2016年に本学構内(湘南ひらつかキャンパス調整池)で採取したミドリゾウリムシを単離/クローン化(=1細胞を単離し増殖させ、全細胞が同じ遺伝的背景を持ったミドリゾウリムシ集団にする事)しました。確立した複数のクローンの中で、外部からバクテリアなどの餌を一切与えず培地の交換のみで生存し続ける事のできる株をピックアップし、その株を「無餌培養株」として確立し報告致しました(2023年、Frontiers in Microbiology誌(DOI 10.3389/fmicb.2023.1036372 )。その後さらに上記(c)の課題解決に挑戦し、様々な検討を行った結果、共生藻の培養に汎用されている成分が明確な合成培地が、ホストであるミドリゾウリムシ自体の培養にも適している事を明らかにしました。これが今回の論文の内容です。

本培地を研究者間で共有できれば上記(c)の課題解決につながり、「研究者間における培養条件の統一」に大きく近づき、研究成果の再現性が向上し、ミドリゾウリムシを使用した真核細胞間共生の研究が今後爆発的に進展するだろうと期待されています。

論文掲載についてのコメント

本研究は、筆頭著者の松島佑里さんが、本学理学部での卒業研究時、およびその後進学した本学理学研究科博士前期課程在籍時に行った研究データを中心に、論文にまとめたものです。

本研究は、京都大学の小倉康平 准教授、大妻女子大学の氷見英子 教授、本学の化学生命学部 井上和仁 教授、北島正治 教務技術職員、理学部 の小谷享 教授、日野晶也 名誉教授と共同で推進致しました。また、本研究の内容理解の一助として、細谷特任教授(現 総合理学研究所 客員教授)らが執筆し、2月に日本原生生物学会誌で公開された和文総説を併せてご覧下さい。