2024.03.27

【英語英文学科】教員と先輩が書いたゼミナール紹介レポート

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ゼミナール紹介レポート

加藤若菜さん

(英語英文学科3年、2017年現在)

英語英文学科のゼミナール、学科生の課外活動などを紹介します。

「英語英文学科のゼミナールではどんなことが学べるの?」そんな疑問に答える先生と先輩たちのレポート

英語英文学科では、3年生から自分が学びたい分野を英語学と英語教育、英語圏文化、英語圏文学の中から一つ選び、専門的に学ぶことができます。
私が紹介するのは、英語圏文学コースの村井まや子ゼミナールです。このゼミナールは主におとぎ話をテーマにしています。週に一度の授業では物語を読み、その裏に隠れた主張などを見つけ、レポートにまとめたり発表したりします。

今期は4種類のシンデレラを読みました。シンデレラといっても王道なものから、あまり知られていないものまで様々な内容のものがあります。
また、6月に大学で行われたインターナショナルウィークという異文化に親しむ活動では、赤ずきんの劇を一般の方々に披露しました。
役割や構成などを自分たち主体で決めたので、悩むことも数多くありましたが当日無事劇を終えることができました。
後期は、洋書専門店での選書ツアーや、大学図書館の本の展示、映画、演劇、展覧会いずれかの観賞という活動予定があります。

私たちは10人+先生という少人数で活動をしています。メンバー同士仲が良く、自分の意見や考えを主張しやすいのがいいところで、課題があり大変なときもありますが、励まし合いながら日々頑張っています。

正木ゼミナール(イギリスの歴史・文化研究)

雄大で美しいスコットランドのハイランド地方(the Highlands)の山々でHillwalking中の正木先生
雄大で美しいスコットランドのハイランド地方(the Highlands)の山々でHillwalking中の正木先生

正木慶介先生

イギリスの歴史と文化について学生が自由にテーマを決めて研究することができるゼミです。

イギリス人が日本に初めてやってきたのは16世紀、シェイクスピアの時代です。いらい日本人はイギリスに関心を持ってきました。明治の時代になるとそれは特別な憧れに変わります。当時のイギリスが世界の「覇権国家」だったからです。その名残は今でも感じとることができます。例えば、日本人は“British Empire”という英語表現を「大英帝国」とわざわざ大げさに訳してきました(「大」にあたる英語は見あたりませんね)。同じことは「大英博物館」(British Museum)や「大英図書館」(British Library)にも言えます。

日本人はイギリスを長いあいだ熱い眼差しで見つめてきました。最近はグローバル化の進展の中で英語の重要性が飛躍的に高まり、その母国としてのイギリスに再注目する人も増えてきています。(皇室の方々が留学先に選ぶ国もだいたいイギリスですね。)

では、日本人はイギリスの歴史や文化についてしっかりと理解してきたと言えるでしょうか。実はそうでもなさそうです。「イギリス=イングランド」だと思っている人は今でもかなり多いでしょうし、もしかしたら、「イギリス人は何世紀にもわたって紅茶を飲み続けているのだ」と考えている人もいるかもしれません。(ちなみに「イギリス」は、イングランド・ウェールズ・スコットランド・北アイルランドという4の国から成る「連合国家・連合王国」です。また、紅茶を飲む習慣がイギリスで一般化するのはせいぜい18世紀のことで、しかも茶葉は今もなおずっとアジア諸国をはじめとする他国からの輸入品です! ただ紅茶熱は確かでその証拠にお茶をめぐる戦争も起きました。)

近いようで遠い印象の国イギリス。でもなんだか気になって仕方がない国イギリス(サッカーと英語の母国なんでしょ、いまだに貴族がいるの、イギリス料理って美味しくないんでしょ、Brexitってどうなったのetc.)。

興味がわいたらそこが入り口。じっくり一緒に学んでみませんか。

久保野ゼミナール(英語教育「実践学」研究・英語教員養成特修ゼミ)

阿部愛菜さん
(英語英文科2019年度卒:2020年度 科目等履修生)

久保野ゼミナールでは、知識・経験が豊富な教授の指導のもと、高校英語教員になるための基礎力を様々な「実践」を通して学んでいきます。今の英語授業で求められている、オール・イングリッシュでの授業を進めるために効果的な口頭導入(Oral interaction, Oral introduction)について実践形式で行ったり、それらについての討議を進めたりします。4年生の教育実習前には、実習先で使用予定の教科書を用いて模擬授業の演習を複数回行います。教育実習終了後には、再現研究授業を行い、ゼミの仲間たちで工夫点や改善点の意見交換をします。
ゼミナール内では縦のつながりがとても強く、夢を叶えて実際に中学校・高校の教壇に立っている先輩方が多いので、教員採用試験に関する対策やアドバイスをしていただける機会が豊富です。
また、4年次の卒業論文では、各々が興味、関心を抱いている英語教育に関する内容のものを執筆します。卒論完成後は、その内容について2、3年生の前で卒論発表を行います。卒論発表会終了後には英語教育界で著名な講師による講演が毎年行われ、さらに知識・理解を深めていきます。
「教員志望」
という同じ志をもった仲間たちと、時に厳しく的確な指導してくれる学生想いの優しい教授の下で、日々試行錯誤を繰り返しながら互いに切磋琢磨して成長していける学びの場です。

 

小松ゼミナール(音声学研究)

英語音声学の本場イギリスのネス湖(スコットランド)にてネッシーと!
英語音声学の本場イギリスのネス湖(スコットランド)にてネッシーと!

小松雅彦先生

「音声学」って何?

「音声学をやっています」と言うと,世間一般では「温泉学?全国温泉巡りですか,いいですね」(「音声」→「温泉」)とか,せいぜい「歌がお上手なんですね」(「音声学」→「声楽」)とかの反応が返ってきます(これは実話です)。大学の中では,何やら発音に関することという程度の認知はされているようですが。

/p/, /t/, /k/と順に発音していくと,息の流れを妨げる閉鎖の位置が,唇,舌と歯茎,舌と上あごと,だんだんと後ろになっていることが分かりますか?これらを閉鎖音と言います。/k/は分かりにくいかもしれませんが,手鏡やスマホを使って口の中を見ながら「カカカ…」と言ってみると,舌と上あごが接触しているのが見えます。「カキ」(柿)と言ってみると,2つの/k/の閉鎖の位置が微妙に違っているのが分かると思います。英語でも,例えば,eighth /eɪtθ/とtree /triː/では/t/の閉鎖の位置が違っています。こういう感覚を掴んでいくのが音声学の基本です。

音声学は,言語音の発音の仕方,伝わり方,聞こえ方を研究する分野で,音の並び方の規則を研究する分野とも関わっています。半分は実学で,半分は研究です。外国語教育や日本語教育,コミュニケーション障害のある人に対する言語聴覚療法では必須の知識で,音声認識・合成でも基礎的な知識です。話すこと・聞くことというあまりに身近な領域なので,普段は意識していないと思いますが,まだ分かっていないことは多くあります。

ゼミナール

私自身が音声の音響分析を専門としていることもあり,ゼミでは音響音声学という分野を中心に教えています。データの収集,分析,聴取実験など,実験的な研究をしています。

卒業論文は音響音声学の分野に限らなくても良いことにしており,学生は斬新な発想で色々な研究に取り組んできてくれました。一部を紹介すると,「デーブ・スペクターの日本語の訛り」「日本人訛りの英語と中国人訛りの英語の比較」「中川家のモノマネ中国語が中国語に聞こえる要因」「日本語無声破裂音・破擦音における発話の困難性」「地域による方言と印象評価」「日本語訛りの英語とネイティブスピーカーの英語とでは日本人にとってどちらが聞き取りやすいか」「動物の鳴き声を写す擬声語」「幽霊にまつわる音」「沖縄方言のアクセント規則」などです。

ここ数年は,8月のオープンキャンパスに,音声学を紹介する出展をしています。
(2019年8月のオープンキャンパス出展の記事はこちら→

2020年度は,サイバーオープンキャンパスとなったため,音声学を紹介するパンフレットを作りました。
詳しくはこちら→

単に授業に出席するというよりも,ゼミという研究チームに一員として加わっている人をお待ちしています。

 

栗田ゼミナール(多文化社会オーストラリアの研究)

宮崎優花さん
(英語英文学科3年(2020年現在))

英語英文学科では、3年生から自分が興味のある分野を英語学・英語教育、英語圏文化、英語圏文学の中から一つ選び、専門的に学ぶことができます。 私が紹介するのは、英語圏文化コースの栗田梨津子ゼミナールです。このゼミナールは、オーストラリアの多文化社会が抱える課題について、マイノリティの視点など様々な角度から学習しています。授業では、事前に文献を読み、グループディスカッションを行って、興味を持ったテーマについて、それぞれ発表し、研究しています。
私は、神奈川大学の海外語学研修で、オーストラリアと似た歴史を持つニュージーランドに1ヵ月間滞在しました。滞在期間中には、研修先のオークランド工科大学でニュージーランドのパケハ(白人)とマオリ(先住民)の歴史について学ぶ機会がありましたが、ゼミナールで学んだオーストラリアの白人と先住民の歴史と比較しながら考えることができました。また、マオリの博物館に行き、その歴史と文化について、より深く知ることができました。ゼミの中では、オーストラリアの先住民の文化についても学びましたが、私はマオリの文化を継承するための教育に興味を持ち、現在はその研究を行っています。
私たちは、普段からグループディスカッションを通して、自分たちの考えを主張しているので、ゼミのメンバー同士話しやすいのが良いところです。課題が大変な時もありますが、お互いに助け合って、日々頑張っています。

 

ラブリーゼミナール(Cultural Identity 研究)

エスター・ラブリー(Esther LOVELY)先生

Introduction to my research, my classes

"Where do you come from?" Have you ever been asked this question? If you go overseas and meet new people, I'm sure this is a question you will be asked. This may seem like a very simple question, but for some people it might actually be difficult to answer. There are many people today who live, study, or work in a country other than the country where they were born. How do they decide the best way to answer this question?

My research is focused on cultural identity and communication. I'm interested in studying how these kinds of people learn to adjust and survive to a new country and a new culture, particularly how communication influences that. Language is an important part of communication, but there are many types of communication. Especially these days, people can communicate in many different ways using the internet. Ten years ago, who could have predicted how advanced smartphones would become?

The experience of living overseas has changed for many people because of these new communication technologies. In my own experience when I went abroad as an exchange student, I had to call my parents from a public pay phone every two weeks (my mother was so worried!). Now I can Whatsapp my family, voice call and video call, and easily send them photos or video of my life in Japan any time. How does that type of communication with people in the home country affect my cultural identity and my adjustment to life in Japan?

This is just an example of the kinds of questions I'm interested in discussing in my classes. So far, my students have been reading about the experiences of people such as Japanese returnee students, Korean international students, immigrant women learning English in Canada, reverse culture shock among young Thai people returning to their home country, biracial Asian-American university students, immigrant youth in Italy, and more.

All of these people have varied and interesting experiences regarding how they learn language, how they use language, how their identity changes over time, and how they feel about their changing identity. Some of my students also studied or lived overseas and apply the concepts learned in class to their own experiences, but this is not the case for all my students. Other students in my classes are Japanese and have lived in Japan their whole lives.

However, it's interesting to see how everyone can understand the experiences of going to a new place or joining a new group, and how you learn to overcome the stress and grow used to it over time. Even an experience like starting university or joining a club can have similarities ? learning new behaviours, new words and ways to speak, and meeting new people, even if you're still in Japan.

 

中村ゼミナール(Multilingual Individuals and Societies研究)

マレーシアのミャンマー難民幼稚園で毎年行う英語リテラシー活動中の中村先生
マレーシアのミャンマー難民幼稚園で毎年行う英語リテラシー活動中の中村先生

中村ジェニス先生

Multilingual people in a multilingual world

世界の過半数の人々はバイリンガルである。アメリカやカナダの英語圏でも2割の人は英語以外の言語を使用している。トロントやロスアンゼルスのような大都市でバイリンガルの人口はそれぞれ5割と6割まで及ぶ。
私の国のマレーシアも多言語国家である。私は、小さい頃から親から英語、祖父母から客家語、友達から広東語を教わった。小学校に入学してから、公用語のマレー語を勉強した。20代に北京で務めたとき、北京語を話せるようになった。その後、日本に留学し、日本語も身に付けた。複数の言語に触れ合ってきたので、「母語は何ですか」と聞かれると戸惑うしかない。私のように多言語の国の人は、必ずしも一つの母語を持ち、その母語は国の公用語とは限らない。

Multilingual Japan

日本はモノリンガル社会だと思う人が多いが日本も変わりつつある。一例を挙げれば近年、日本の小中学校にCLD児、つまり「文化的言語的に多様な子ども(culturally and linguistically diverse children)」が増えている。彼らは、日本語以外にもポルトガル語や中国語などで生活している。また、日本の過去20年の間の出生数を見ると50児の中の1児の親の一方は外国人である。その子どもたちもバイリンガルになることもある。
私は、日本におけるバイリンガリズムを研究し、ゼミではこの専門分野を教えている。私のゼミに所属する日本人の大学生は、バイリンガルの友達がいたり、外国人が多い地域に住んだりして、国内による国際化を自ら経験しているので、バイリンガリズムに関心を持つ。ゼミでは、「どうやって同時に二言語を身に付ける?」「二言語をどうやって使い分けている?」というような疑問を心理言語学の観点から学生と一緒に考える。

Multilingual landscapes of Minato Mirai

2021年からゼミ生と一緒にみなとみらいキャンパスの周辺で多言語景観(multilingual landscapes)の研究をする。日本では意外に多言語景観は簡単に見つけられる。函館や箱根のような観光地に行けば、以下のような多言語景観が見られる。

学生は、このように多言語表示を写真で記録し、フィールドワークをする。現在のみなとみらいはすでに多くの英語の表示が見られるが、今後はさらにマルチリンガルになるであろう。学生と共に次の5年または10年のみなとみらいの言語景観の変化を観察し、調査していく予定である。この活動は、インターネットやSNSで配信したり大学のイベントで展示したりするので、是非ご覧下さい。

 

郷ゼミナール(シェイクスピア劇と異文化理解研究)

福井琴乃さん
(英語英文学科4年(2020年現在))

真実は、どこに?
主人公の気持ちの変化に、
ゼミの仲間と迫っています。

はじめて読んだときは理解できませんでした。最後の展開に、なにかモヤモヤしたものを感じて…。
ゼミの研究対象として、シェイクスピアの『じゃじゃ馬ならし』を読んだときのこと。父親に歯向かったり妹をいじめたり、粗暴でやかましく気の強い"じゃじゃ馬"の女性が、ある男性との結婚をきっかけに別人のように…。夫に尽くし、挙句の果てには、"妻は夫に従順であるべき"だと大勢が集まる前で演説をしだすのです。夫の調教が成功したといえばそうかもしれませんが、あまりの突然の変化に、読んでいてとまどいを隠せなくて…。でも、見方によっては、貞淑な妻になりきっているとか…!?真実はどうなんでしょう?イギリスの歴史や当時の社会背景などを調べながら、ゼミのみんなとどう解釈するかを話し合っています。いろんな意見が出てきて、ホント面白い。簡単に解けないところが、シェイクスピアの作品が世界中の人々をトリコにしている理由ですよね。そうそう、作品を研究するうちに、ふだんニュースなどを見ているときも、その裏にある背景まで推察するように。真実はどこにあるか、社会を見る目がちょっと鋭くなったかな。

(神奈川大学『CAMPUS GUIDEBOOK 2021』より転載)

 

髙橋ゼミナール(英語科教育研究・英語教員養成特修ゼミ)

2年生の「トライアル授業」に引き継ぐ、「教職基礎研究Ⅱ」での髙橋先生のモデル授業
2年生の「トライアル授業」に引き継ぐ、「教職基礎研究Ⅱ」での髙橋先生のモデル授業

髙橋一幸先生

髙橋ゼミでは、中学校教員養成を主たる目的として2年次から4年次までの以下に示す3年計画で、理論と実践のバランスを取りながら「プロの英語教員」を育てています。「ゼミから教諭100名!」の目標達成も見えてきました。卒業生は北海道から沖縄まで全国の小中高大の教育現場で活躍し、指導主事も生まれています。

<2年次・教職基礎研究>

前期:

「英語授業基本知識・技能トレーニング」 10のテーマを掲げ、50分間の授業を行う基礎となる専門知識と技能を養います。優れた授業実践のビデオ参観、教員による授業実演やゼミ生との授業比較も行います。

後期:

「教えるための語法・文法研究」 英語で書かれた語法・文法書を講読し、50ページを超えるレポートを作成し、ゼミ生によるリレー発表と教員の補足解説を通して中高で教える語法・文法を専門的に再学習します。
「中・高教材研究と授業演習」 中高の検定教科書を使って教材研究を行い、教員のモデル授業のビデオ視聴や実演も経て、グループで初めての本格的模擬授業「トライアル授業」に挑戦します。

<3年次・専門研究>

前期:

「学習指導要領の歴史」 教育基本法などの教育法規、学習指導要領の変遷を歴史的に学び、教員採用試験に備えます。
「ビデオによる授業分析」 教員が中学校で行った授業ビデオを視聴し、これまでに学習した指導法を目で確認します。
「指導案分析演習」 映像なしで指導案を熟読し、授業を思い描きながら問題点を探り、その改善策を検討することで「授業改善能力」を養い、ゼミでの1年半のinput phaseを終わります。

後期:

「連続模擬授業による指導力向上演習」 総仕上げのoutput phaseに入ります。グループによる3回の模擬授業(Micro-teaching: MT)とそのふり返り協議を通して、指導力と授業改善能力を高めていきます。

<4年次・卒業論文>

前期:

「教育実習と教員採用試験対策講座」 実習校で教える教科書を使って、ゼミ生が50分間の模擬授業を一人で行います(個人MT)。また、教員採用試験の面接や小論文、模擬授業に向けた全体・個別指導を行います。
「卒業論文のテーマ決定」 教育実習での体験もふまえて卒論のテーマを決め、教員の助言のもとに研究計画を立てて執筆を始めます。

後期:

「卒論執筆個別指導」 毎週の個別指導で12月初旬の提出をめざし執筆を進めます。
「卒論発表会」 PowerPointなどを使って後輩ゼミ生の前で卒論を発表し、プレゼン能力を高めます。

 

髙橋ゼミナール(英語科教育研究・英語教員養成特修ゼミ)

岡崎玲奈さん
(英語英文学科4年(2017年現在))

私が紹介するのは、英語教育学コースの髙橋一幸ゼミナールです。このゼミには、小学校教員、または中学校・高等学校の英語科教員を志す学生が所属しています。主に、これまでの英語教育の変遷やこれからの日本の学校英語教育に求められること、英語授業づくりの基礎から応用までを、2年次「基礎研究」・3年次「専門研究」・4年次「卒業論文」と3年間をかけて学びます。英語教育に必要な専門知識を講義形式で学ぶこともあれば、全国的に有名な英語の先生方の優れた授業実践のビデオを観て分析しながら学んだり、指導案を徹底分析して授業改善案を考案したりと、教員になる上で必要な知識・技能を段階的に習得することができます。
教育実習を控えた3年次後期には、グループで3回、中学校検定教科書を使った模擬授業を行います。それまで身に付けた知識を、実践を通して自分のものにできることが髙橋ゼミの魅力の一つです。私自身、慣れない授業づくりに初めは苦戦しましたが、仲間と協力し、一つの授業を完成させるという経験からは大きな達成感を得られました。髙橋先生は厳しくも愛情深い先生なので、学生が行った模擬授業を丁寧にフィードバックしてくださり、自分たちが行った授業の良い点・改善すべき点に気づき、それ以降の授業づくりに生かすことができます。
このゼミに所属したことで、よりよい英語授業のあり方がわかり、ゼミ生同士高め合うことができました。模擬授業づくりやブックレポートなど、課題に追われることもありますが、どれも自分のためになり、仲間と励まし合うことで乗り越えられます。
髙橋ゼミナールは、教員になるか迷っている学生にとっても学びの多いゼミナールとなっています。絶対に教員になりたい人、「自分なんかが教員になれるのか」と悩んでいる人、どんな人でも、諦めずに挑戦し続ける強い心があればこのゼミナールで必ず成長することができます。私がこのゼミで、尊敬する髙橋先生と互いに意見や考えを主張し合い共有できる大切な仲間に出会えたように、これからゼミナールに所属するみなさんが大切な仲間を得られることを願っています!

(岡崎さんは、みごとに英語教員となる夢をかなえ、現在は神奈川県下の公立中学校の英語教諭として活躍しています。岡崎さんが2020年度末に寄稿してくださった英語教員としてのメッセージは、こちらのページをご覧ください→。)

 

鈴木ゼミナール(英語圏児童文学研究)

鈴木宏枝先生

 子どもの文学は、子どもの文化と一般の文学が交差するところに形作られます。平易な言葉で書かれつつも味わい深く、大人になってから読み直すと、子どもの頃に読んだのとは違う印象を持つのではないでしょうか。赤ちゃんも楽しめる絵本から、12歳までを対象にした児童文学、ティーンエイジャーを対象にしたヤングアダルト文学まで、幅の広い文学です。

イギリスは、とりわけ子どもの本が豊かな国です。近代初期までは教訓やモラルを伝える道具に過ぎなかった児童書に「楽しませる」という要素を与え、19世紀以降、冒険小説、学校物語、ファンタジーなど多数の作品を生み出してきました。論理と言語の知的な遊びにあふれた『不思議の国のアリス』、拡大する帝国主義を背景にした『宝島』、階級や政治の視点抜きでは語れない「ハリー・ポッター」シリーズなど、皆さんも名前を聞いたことがあるかもしれません。アニメや映画だけではなく、ぜひ、原作を読んでみてくださいね。

アメリカの児童文学は、教育との関わりが強く、多様性の尊重を目指すメッセージが多く含まれます。一人ひとりを社会の中でどのように支えるか。さまざまな背景を持つ子ども読者への愛情が感じられ、私は、アフリカン・アメリカン児童文学の研究から、現在は、児童文学の中のマイノリティがどのような「声」を持つかに興味を持つようになりました。

 授業では、発表やディスカッションを通じて、英米児童文学の歴史や代表作について学びます。「プロット(あらすじ)」「キャラクター(登場人物)」など文学研究の基本を勉強したら、実際に作品を分析します。じっくりと読むことで、1つの作品がいかに複雑に構築されているかが分かり、一読しただけでは分からない主題も見えてくるでしょう。さらに深い研究に進んだら、心理分析やジェンダー論など様々な切り口での批評にも挑戦します。たぶん、世界の見え方が変わってくると思いますよ。

 

冨塚ゼミナール(アメリカの文学・文化とその背景)

冨塚亮平先生

本ゼミでは、アメリカの文学や映画、音楽などの広義の文化全般を題材として、各自が興味を持った作品を選択して、アカデミックな論文を執筆します。

私はこれまで作家・思想家のラルフ・ウォルド・エマソンを中心とする19世紀中頃、いわゆるアメリカン・ルネサンスと呼ばれる時期に活躍した作家たちの文学を専門的に研究してきましたが、同時に映画や現代の小説などについても幅広い関心を持っています。ですから、こういった作品や題材を研究対象としても良いのか、と悩むことなく、思う存分みなさんの関心を追求してもらえればと思います。

ゼミでの研究を楽しく実りあるものにするためには、なによりも時間をかけて考え、分析してみたい作品や作家に出会うことが重要です。

そのため、まず3年次には、いくつかの具体的な作品に英語で触れながら、各自の関心を探っていきます。あわせて、多角的に作品を捉えるため、さまざまな批評理論についての入門的なテクストを読み、議論します。また、資料調査や口頭発表・論文執筆の方法についても学びます。卒業後も役立つような形で、図書館やインターネットを適切に利用して、必要な情報を素早く、なるべく安価に入手する方法を身につけます。人種・ジェンダー・階級といったテーマをめぐる基礎知識を身につけ、単に作品に触れるだけではなく、作品の構造や主題を分析できる能力を身につけることを目標とします。

そして4年次には、引き続き理論的なテキストを学びつつ、中心的に扱う作家や作品を絞って、各自の研究を進めていってもらいます。授業や合宿を通じて研究内容について口頭で発表し、私や他のゼミ生からのコメントを元にその議論を加筆修正しながら、最終的になるべく多くの方が、その成果を一定の分量からなる卒業論文としてまとめられることを目標とします。

 

ヤスダゼミナール (アメリカ文化研究)

ヤスダ・レイモンド先生

Becoming American - Race and culture in the United States

What is American culture? For many people interested in the US, images of fast-food, hip-hop music, the NBA, Hollywood movies, or famous brands come to mind. However, American culture is much more than McDonalds, Justin Bieber, Lebron James, Marvel movies, or Nike. America began as a country of immigrants and is a ‘melting pot’ of cultures and races. People of different backgrounds: Europeans, Blacks, Hispanics, and Asians, all continue to influence American culture.

This seminar will introduce students to the field of cultural studies, focusing specifically on the multi-racial and multicultural nature of the United States. Students will have an opportunity to discuss questions such as: What does it mean to be American? How do people of various races experience American culture differently? How have different ethnic groups influenced American culture? How does American culture influence other cultures, such as our culture here in Japan?

Our journey will start by looking at the Asian American experience in Hawaii, my home. Students can learn about the challenges of Japanese and Chinese immigrants face in becoming accepted as American. From there, students will explore broader issues related to the Black, Hispanic, and Asian communities in the United States. Topics such as racial inequality, discrimination, and a positive move to a more inclusive America will be covered. Finally, students will study how American culture has influenced other countries, especially Japan.

Students interested in Hawaii, American culture, racial issues, or multicultural societies are encouraged to join. We will explore these topics through active discussions, case studies, and research projects in this seminar. I look forward to taking this educational journey in American Cultural Studies together with you!

 

源ゼミナール(言語と社会 多様な社会での英語の在り方を考える)

源邦彦先生

世界では多様な英語が使用されています。また、英語はそのほか数千の言語とともに使用されています。特定の英語、英語とそのほかの言語との関係によって経済格差や教育格差が生じ、人種・民族差別がなされています。本ゼミでは英語の多様性、多言語の中の英語に焦点を当て、どのように言語的相違や多様性をマネージし、どのように格差、差別を解消あるいは軽減できるのかを考えます。人種差別自体をテーマにすることも可能です。

当ゼミではことばの多様性―英語と日本語等の複数言語間の社会関係、「標準英語」と日本人英語等の複数方言間の社会関係―に関連する社会問題を扱います。ことばの多様性と関わる社会問題の適切な理解、解決を図るため、各言語あるいは各方言が置かれている社会状況―経済、政治、歴史等―から問題を分析し、より現実に即した方策を議論、考案します。
以下、ことばの多様性に関連する社会問題を紹介します。

日本語を母語とする英語使用者は、ほぼ全員が日本語の影響を受けた英語を使用しています。これは科学的にも証明されているごく自然な言語現象です。ところが、「標準英語」とは異なる英語を誹謗中傷する行為 立派な人権侵害です が後を絶ちません。例えば2021年8月17日、大リーグエンゼルス対タイガース戦で、大谷翔平選手の打席のとき白人男性解説者がアジア人に特徴的な英語のものまねをしました(解説者は懲戒処分)。ここにはアメリカ白人社会による人種差別が関与しています。

では、米国や英国のアフリカ人奴隷子孫(通称「黒人」)が直面する問題を見てみましょう。この人々の大半は英語以外の言語や「標準英語」とはかけ離れた「方言」を母語とします。経済、政治、教育、宗教などありとあらゆる場面で人種差別にさらされ、子供たちは英語または「標準英語」のみで教育を受け、子供たちの母語の影響を受けた英語は言語障害、認知障害、誤りとみなされてきました。英語(使用者)の支配は、さまざまな人種差別と絡み合うことで他言語(使用者)を危機に陥れ、「標準英語(=白人男性ミドルクラス英語)」(使用者)以外の多様な英語(使用者)の存在も否定してきたのです。

本ゼミでは以上のような英語をめぐる問題全般を研究対象とします。インドの多言語政策や米ラップミュージックにおけるアフリカ人奴隷子孫英語、各国の人種差別(暴力、雇用差別、教育差別、司法差別等)やBlack Lives Matter運動なども扱います。