
Tsuhara Shun
津原 駿 特任助教
Profile
出身地/福井県
子供の頃の夢/科学者
尊敬する人/両親、恩師
愛読書/『鋼の錬金術師』『名探偵コナン』
趣味/ジャグリングをする
休日の過ごし方/ジャグリングをする
好きな音楽/ハロー!プロジェクトの楽曲全般
好きな映画/『名探偵コナン』の映画
好きな著名人/モーニング娘。
好きな食べ物/ショートケーキ
偏微分方程式の研究を通じて量子世界の物理法則に迫る。
数学は新たな視点をもたらしてくれる豊かな学問
高校時代に数学の授業で学ぶ微分・積分には、どのような意味があるのでしょうか。例えば、氷が時間の経過に伴って解ける様子を数学的に表現したい場合、各時間で氷の温度がどう変化するか考える必要があります。ある時刻での様子を切り取るために、前後の時間から氷の温度変化の「極限を取る」と、温度変化の微分をつかった方程式、つまり微分方程式が現れます。これはあらゆる物理現象や自然現象の分析で現れ、将来の変化をシミュレーションする上でも大いに役立てられています。
私は偏微分方程式について、解の存在や性質に関する研究を行っています。少し複雑な研究なので、先ほどの氷の話を例にイメージを説明しましょう。氷が解ける様子を調べる場合、重要な要素のひとつが氷自体の形状です。丸いのか、四角いのか、あるいはもっと複雑な形なのか……。その形状によって温度変化のスピードは異なり、解けやすさにも違いが生じます。氷の初期状態に応じて、例えば100万個の氷に対して個別のシミュレーションをすることも可能です。しかし、私の研究では、どのような形状の氷であれば変化の様子をうまく解析できるかに注目し、解ける速さが同じであったり、解けた結果似た形になったりするものを数学的に類別します。100万個の氷を実際に用いることなく、この形であればこう変化する、と述べられるようになるのです。
これまでは氷の例を用いて説明しましたが、実際に私が研究対象としているのは主に量子の世界です。量子の世界を構成する電子についても、氷と同じようにさまざまな状態が存在します。そして、その動きは偏微分方程式によって表現されます。量子の世界は私たちの暮らす世界と物理法則が大きく異なりますが、抽象度の高い偏微分方程式を通して世界の予測が可能になると考えています。
偏微分方程式の面白さは、微分と積分という逆の計算を用いることによって、2つの視点から物理現象を考えられるところです。A地点からB地点まで車が移動することを想定した際、微分を用いれば一瞬の動きを切り取って、積分を用いれば全体の動きを俯瞰して観測することができる。「数学」と聞くと無機質で机上の計算ばかりだという印象を抱く人も多いと思いますが、実際は私たちの世界に存在する物理現象を幅広い視点で考えるための非常に豊かな学問分野だと感じています。
研究者としての原体験は「虚数」に対する疑問だった
現在は、工学部の1・2年生を対象とした解析学や線形代数学についての授業を担当しています。数学の知識を幅広い研究分野で役立てるには、とにかく引き出しを増やして、必要な時に正しく活用することが大切です。そのため、授業では計算演習を多く取り入れ、知識をしっかり定着できるような講義を心がけています。その上で、個別の計算や理論に対する疑問を持ったなら、専門的に深掘りしてもらいたいと思います。
私自身、「虚数」に対する疑問が数学に興味を持ったきっかけでした。虚数は、自然には存在しない数字であるにもかかわらず、物理現象を解き明かす上で重要な役割を担っています。そのことを不思議に思い、積極的に勉強するようになりました。微分や積分もそうですが、虚数のように高校で学ぶ知識が、最先端の研究につながっているところも数学を学ぶ魅力だと感じています。
学生の皆さんには、勉強はもちろんのこと、趣味や課外活動にも熱意を持って取り組んでほしいと思います。その両方を通じて多方面から知識やスキルを身につけることで、世界の広さを実感していただけるのではないかと思います。

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