Isonaga Kazuki

礒永 和貴 特任教授

所属
国際日本学部
歴史民俗学科
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専門分野

人文地理学、地理学、地域研究、日本史、地図史

キーワード

Profile

歴史地理学の基本となる江戸時代や明治期の地図研究と、それに基づく城下町や災害などの多様な景観の復原研究を行っています。それらの成果をまちづくりや観光への活用も目指します。近年は、日記から近代の一般の人々が体験した空間を読み解くことにもチャレンジしています。

出身地/福岡県大牟田市
子供の頃の夢/登山家
尊敬する人/大学院時の指導教員
愛読書/島崎藤村『夜明け前』、フョードル・ドストエフスキー『罪と罰』
趣味/登山
休日の過ごし方/散歩と将棋
好きな音楽/リヒャルト・ワーグナー
好きなTV番組/『孤独のグルメ』
好きな食べ物/刺身

絵で描かれた古地図や文学作品をもとに“過去の景観を復原する”謎解きのような研究

地図は“文章で書けない情報”が詰まっているから面白い

江戸時代後期に伊能忠敬がつくった日本地図がありますね。皆さんも歴史の授業で見たことがあると思いますが、あの「伊能図」は、海と陸地の境界である海岸線についてはほぼ的確に記載されているものの、陸の中にある富士山などは見た目を重視した「絵」として描かれています。当時の測量技術では富士山の形状を正確に測って記載することはできないので、そういう方法がとられたわけです。

江戸時代以前の地図は「絵図」とも呼ばれますが、こうした「絵」が重要な役割を担っていたことは注目すべき点です。なぜなら絵図は、それをつくった当時の人たちの「土地に対するイメージ」や「土地をどう記憶しているか」といった、心の中の風景を映し出しており、当時の人々がどのように土地を見ていたのかを知れる、興味深い資料だと思います。

私の研究では、こうした絵図などを参考にしながら、その当時の「景観を復原する」ということに取り組んでいます。景観を復原するというのは、当時の地域や環境、空間などを現在の区画と照らし合わせ、正確に地図で表すということです。絵図に描かれたこの建物や道路は、現在の区画のどこに位置していたのか。これを謎解きのように当てはめていく作業です。

地図や絵図の面白いところは、「文章で書けない情報」が詰まっていることです。例えば、ある川を想像してもらうとわかるでしょう。それが山のどこから流れ、どんな太さや深さを経て、どの海に流れていくのか。その情報を一つひとつ丁寧に文章にしていくことはほぼ不可能であり、地図に表す方が明らかに早く、正確です。測量技術がなかった時代の絵図の場合は「正確さ」はあまりないですが、その代わりにその当時の人々の心のような、文章化できないさまざまな情報が見えます。

景観を復原する際の資料は絵図だけでなく、当時に書かれた旅日記や文学作品、明治以降であれば写真なども参考にします。そして、実際にその土地に足を運ぶフィールドワークが最も重要です。当時の建物や道路などがどれくらい残っているのか、なぜなくなってしまったのか、それは災害のせいなのか──と街を歩きながら考察し、新たに地図を作成する作業が、歴史地理学の研究の醍醐味です。過去に起きた災害によって土地がどう変わったのかを調べ、ハザードマップなどにその情報を落とし込み、災害による被害を最小限に抑える。歴史地理学にはこうした可能性もあります。

フィールドワークと発表を重ね、記憶に残る学びを

中・高の地歴教師授業でもある、「地誌学」や「人文地理学概論」といった授業を担当しています。中学や高校の地理は暗記科目のイメージが強いかもしれませんが、私の授業は「課題解決型」である点がポイントです。教室の中で一方的に私が講義を行うよりは、フィールドワークや発表を中心とし、学生が主体となって地域の課題などを発見し、解決方法を探究します。

この分野に足を踏み入れるからには、とにかくフィールドワークを重ねてほしいと思います。その地域ごとの環境や空間の特徴というのは、実際に行って初めてわかることがたくさんあります。日本ではなく韓国で「サムギョプサルを食べるから美味しい」といったように、五感で感じ取れる情報は膨大なのです。

また、現地に行くとそこに住む人に聞き取り調査をすることもありますが、往々にして断られますが、それがいいのです。挑戦して失敗するという経験は、教室内の講義ではできないことですし、想像通りにいかないことの積み重ねが社会に出てから役に立ち、打たれ強さを形成するはずです。皆さんにもぜひ、地図を片手に街を歩いて、体験を通して「記憶に残る学び」を得てほしいと思います。

Photos

  • 書見台:大学院の友人からもらったものです。その友人が博士課程を修了するときに、「自分は研究の道はあきらめたが、君は続けてくれ」と言われました。その励ましのおかげで、研究を続けることができました。友人のくれた書見台で本を読むとき、必ずその言葉が蘇ってきます

  • 地図皿:東寺の骨董市で買ったものです。調査で地方に行くと、ついつい古いものがほしくなります。古いものは、何でも想像力が働きます。どんな人がつくったのか、誰が使っていたのか、どんな風に使うのか、という具合です

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