
Takeyama Makoto
武山 誠 特任教授
Profile
生年/1965年
出身地/東京
子供の頃の夢/研究者
尊敬する人/人の長所に集中できる人
愛読書/「The Hitchhiker's Guide to the Galaxy」
趣味/昔は映画鑑賞
休日の過ごし方/調べ物
好きな国/スウェーデン
システムは常に不完全。重要なのはその前提に立って、いかにシステムを開発し運用していくかです。
英文を読むために大切なのは、文章全体の構造を把握する力
私が担当している授業は、主にプログラミングと科学技術英語の2分野です。「科学技術英語II」は、 科学技術に関する英文の読解力の向上を目的にしています。理系の場合、最新の情報はほとんどが英語で入ってきます。特にコンピュータ関係の知識は変化が早いので、日本語に訳されるのを待っていられないことも多いのです。そこでこの授業の目標は、英文を読んで内容を理解できるようになること。そのために大切なのは、まずは文章全体の構造をうまく把握することです。英文の表記法を学び、文法的にも正しく、内容を構造に基づいて理解することによって、日本語でもそれを正しく表現できるようになることを目指します。また、読解と訳に必要な情報の調べ方や自然と英語に接するようになる環境づくりの練習なども行います。
「プログラミングII」ではプログラミングに必要となる考え方と、そのプログラムの書き方の基本を学びます。約束事を覚えるというより、その背景にある原理を理解して、自由に組み合わせて自分の考えを表現できるようになることを目指しています。さらに「論理プログラム」では、論理と計算の間にある深い関係に基づくプログラミングのスタイルを学びます。得たい結果についても、いきなり計算手順から考えるのではなく、結果が持つべき性質を論理的に記述して、そこから手順を導き出す考え方の素養を身につけてもらうのが目標です。
「システム障害は起きるもの」という前提で、いかに信頼性を保っていけるか
初めてコンピュータに触れたのは中学生時代です。私はまずプログラミングに興味を持ちましたが、高校、大学と進むうちに、数理論理学や数学基礎論との関わりが強い情報科学(Theoretical Computer Scienceと呼ばれる分野)に興味が移りました。ところが、1996年から留学していたスウェーデンでAgdaという証明支援システムの開発に関わっているうちに、再びプログラミングにも興味がわいてきたのです。
帰国後は産業技術研究所で、「DEOSプロジェクト」に参加しました。このプロジェクトが始まったのは2008年頃で、きっかけとなったのは、都市銀行での大規模システム障害でした。本来でしたら銀行のシステムなどは運用前にきちんと完成していて、さらに起こりうる全ての非常事態を想定して対処法を考えておかなければいけない。これが従来の考え方でしたが、現実には複雑化する一方のシステムは常に不完全で、あらゆる事態を想定して備えることは不可能に近いのです。こうした「障害は防ぎきれない」という現実的な前提に立って、いかにシステムを運用し開発していくべきかについて考えたのが「DEOSプロジェクト」です。ここで重要なのは、最初から完璧を目指すのではなく常に改善を続けていくこと。そして、何か障害が起きたときにはこういう形で責任をとりますという説明責任を最初からはっきりさせておくことです。
その当時から現在も続けている研究テーマは「開放系総合信頼性」で、大規模システム障害等の社会的問題の解決を目指す信頼性の新概念です。そこで私は不完全なシステムを予測できない環境変化の中でどう開発・運用すべきかについて、数理科学としての理論、その知見を実現する技術、そしてその成果を社会的便益につなげる実践という3つの側面を連携させつつ研究を進めています。
自分にとって「うれしい」ことは何か、探してみよう
私は1991年から2003年にかけて、留学生や大学研究員などとしてスコットランド、カナダ、スウェーデンに滞在しました。この経験を、英語科目の授業だけでなく、学生の視野を広げるような指導に活かせたらと考えています。
10年以上の外国生活で実感したのは、「結局どの国に行っても、いろんな人がいるということは変わらないな」ということです。お国柄というのは国民全員の平均をとったときに、ほんのわずかな違いとして現れるくらいで、どの国にもいろんな人がいて、それぞれに違いがある。スコットランド人だから、スウェーデン人だから、というような区分けはあまり意味がないと感じます。
それと同じように、好きなものや、やっていて楽しいことは人それぞれに違います。ですから皆さんには、ぜひ自分の「好き」や「楽しい」を見つけてほしいと思います。そのヒントは「うれしい」と感じること。たとえばプログラミングを書いて、予想通りに動いたときに「うれしい」と思えるか。うれしい気持ちが生まれれば熱心に続けられますし、反対にうれしくないことは続けられません。何かをやってみて、結果が出たときに「うれしい」と感じるかどうかは、自分の好きなものを見つける大きなヒントなのです。
さらにその先は、どうしてうれしいのか、どうやったらうれしいのか。自分の「うれしい」という感覚を研ぎ澄ましていってください。たとえばプログラミングならば上達するに従って、ただ動くだけでなく「きれいに書けた」ということもうれしさの原因になっていくでしょう。そうやって自分が満足できるポイントを見極める、いわば審美眼を持つことを目指してほしい。そのためには、大量に作業することが必要です。勉強でも研究でも、あるいは仕事でも、眼で眺めて頭で考えて理解できること以上に、大量に手を動かしてはじめて得られる感覚があるということを、実際に体験していってください。

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