
Kondo Hiroshi
近藤 宏 准教授
Profile
出身地/静岡県
生年/1982年
趣味/散歩
好きなTV/『ドキュメント72時間』、『球辞苑』
好きな映画/『オーシャンズ11』、『紅の豚』
好きな食べ物/中華料理
好きな国/パナマ、コロンビア
ラテンアメリカの先住民たちのそばから、現代世界を考える。
アメリカ大陸先住民と現代世界
人類学者のクロード・レヴィ=ストロースは、1930年代に南米ブラジルに赴き、先住民のもとで調査をしました。その後、50年代から60年代にかけて、さまざまな学者が記録したアメリカ大陸先住民の神話の体系化に挑んでいます。学生時代にこの学者の著作に魅了され、大学院に進学した後には自らも中南米の先住民の調査をするようになりました。私の専門は中南米地域の先住民の人類学研究で、主に、パナマとコロンビアに住む先住民エンベラの生き方を追っています。
現地調査では、レヴィ=ストロースの著作にあるような神話の収集も行いましたが、先住民の人びとの暮らしを目の当たりにするなかで、次第に現代の状況や問題に注目するようになりました。パナマでは先住民の暮らしを支える土地に対する権利の付与がつくる新たな社会状況を、コロンビアでは、内戦の影響で避難民となったエンベラの人びとの暮らしを調査しています。例えばパナマでは、彼らの暮らす森から木材を海外輸出用に伐出する経済活動なども調査しています。グローバル化や持続可能な社会の実現は、先住民の世界にも無縁ではありません。先住民の人びとの暮らしや経験を知るだけでなく、現代世界を彼らの側から考えたいと思っています。
「当たり前」にとらわれずに考えること
現在は、共通科目では「国際関係概論」を担当しています。この授業では、国際関係にかかわるテーマを、文化人類学の知見を生かし、考察しています。国民という概念や植民地時代の歴史、現代まで続く人種差別の問題などさまざまなテーマを扱いますが、重要なのは、さまざまな事実をきちんと考えること、その際に、国のように事実を見るよりも、その枠組みにとらわれることなく考えるということです。
また、人間科学部の「フィールドワーク入門Ⅱ」の授業では、フィールドワークの実践法とその意義を考えています。フィールドワークやそれに類する調査を経て書かれた文章を読むことも交え、さまざまなことの起こる現場を通して、社会で起きている事柄を深く考える考え方を学んでいます。文化人類学の考え方は、複雑な現実を受け止めることや異なる立場を理解するための想像力と結びついていますが、フィールドワークはそうした想像力を養う重要な学びの場でもあります。
まだ知らないことを知る方法を学ぶ
私が担当するこうした授業を通して、学生の皆さんに身につけてほしいのは、自分を基準にしない考え方です。私がフィールドワークで先住民たちと対話を重ねることで学んだことです。フィールドワークで出会う人は、自分とは異なる価値観、常識、考え方を持つこともあります。そこで私がそれまでの自身の考え方にこだわると、かえって、理解が妨げられてしまうことがあります。そこで、自分の考え方や理解を問い直し、自分がどこまで理解し、どこから理解が及んでいないのかを知ることができれば、調べるべきことが浮かび上がります。そして調べることを通して、それまでの自分ではうまく把握できなかった考え方を受け止めることができ、自分とは異なる立場、状況にある視点が想像できるようになります。
こうした考え方は、例えば、断片的な情報に導かれた想像力から生まれる差別的な言動とは異なるふるまいを生み出すこともできると考えています。

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